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健康経営とプラントベースフード(2023.03.31)

 小林製薬の紅麹の成分を使用した機能性表示食品で、29日までに5名の死者が出たことがニュースになっております。この食品は「紅麹コレステヘルプ」という健康系サプリメントで、LDL(悪玉)コレステロールを下げて、LDL(悪玉)コレステロール値とHDL(善玉)コレステロール値の比率(L/H比)を下げる機能があるとのことでした。

 このニュースで思い出したのが、「健康経営」でした。「健康経営」は、従業員の健康増進を重視し、健康管理を経営課題として捉え、その実践を図ることで従業員の健康の維持・増進と会社の生産性向上を目指す経営手法のことで、その始まりは、アメリカにおいて1992年に出版された「The Healthy Company」の著者で、経営学と心理学の専門家、ロバート・H・ローゼン(Robert H. Rosen)が提唱したことによるとされています(Wikipediaより)。

 日本では、第二次安倍内閣において、2013年6月に閣議決定された日本再興戦略で「国民の健康寿命の延伸」が位置づけられました。その後「労働安全衛生法」が改正され、労働者50 人以上の事業所では、2015 年 12 月から、毎年1回「ストレスチェック」が義務化されております。
 そして経済産業省は、2016年に「健康経営優良法人認定制度」を創設し、2017年2月には、大規模企業235社と中小規模企業95社の認定がなされました。

 ちょうどその頃だったと思いますが、ある会合で東海地方の経営者に会った時、体形から顔まですっかりスリムになり、思わず別人かと見間違えそうになったことがありました。
 「病気でもされましたか?」と尋ねた筆者に対し、「健康経営をやっている」との回答。その時は、どのようにしてそれほどまでにスリムになったのか、詳しく聴く余裕もなく別れ、時は過ぎていました。

 それが冒頭のニュースにより思い起こされ、少し食生活のことを調べ始めたところ、今度は「プラントベースフード」という言葉に出会いました。
<以下、引用>
   (一般社団法人日本乳業協会https://nyukyou.jp/effort/council/20230719.htmlより)
プラントベースフードの言葉の定義としては大きく二つあります。一つ目が動物性の原料を使用せず、植物由来(プラントベース)の原料でつくった食べ物ということです。それから二つ目が、菜食が食習慣のルールではないというところです。

今まで「菜食」というのは結構厳格なルールがあって、絶対食べてはいけないとかという決まりがあったのですけれども、「プラントベースフード」は好きなときに好きなだけ食べてくださいという、そういう意味が込められています。したがって、一つの食のスタイルとか、食の選択肢といった捉え方が入っております。
これが「ヴィーガン、ベジタリアンとの違い」になってくるのですが、完全菜食とヴィーガニズムという価値観、思想、信念がセットになった方々を「ヴィーガン」と呼んでいます。 
「ベジタリアン」の方々も、菜食というところでは重なるのですが、主にジャイナ教だったりヒンズー教だったりとかの宗教がベースの理由となっています。

そういった菜食生活というものが、一般の方々にとって取り入れるにはすごく壁があったりというので、言葉の定義の二つ目の、菜食が食習慣ではないという、好きなときに好きなだけ食べてくださいという定義にそういった意味が込められています。
「プラントベースフード」は、Plant Based Foods Associationという海外の組織が、マーケティングの発想でつくった言葉と言われています。一部、ヴィーガンという言葉だとやはり動物由来のものを食べている方への若干抗議の意味合いも含まれていたりするので、一般の方々に多く普及していただくという意味で「プラントベースフード」という新しい言葉が生まれましたという背景です。
<引用おわり>

 この言葉の定義や背景は以上の通りなのですが、驚いたのは、この分野の成長性についてでした。
 日本のプラントベースフードの市場規模は、2015年に89億円だったものが2020年には246億円となっており、年平均で22.5%の伸びだったそうです。
 世界の市場規模も、2022年は約5兆9000億円だったものが、2030年だと予測で21兆円超えになるという試算が出ており、年平均成長率でいうと19%の伸びになるというのです。

 この30年ほど、世界は経済成長しているなかで日本はデフレ・低成長のままと言われてきましたが、これほど成長しており、また今後も成長が見込める分野があったという事実に気づかずにいたことを恥じるばかりです。
 ご興味がおありの方は、上記引用元などをご確認ください。

 なお、プラントベースフードを意識した食生活が、イコール健康経営であったり、スリムな身体になるということを述べたわけではありませんので(その可能性はあると思いますが)、混同されぬよう願います。

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コロナ明けで感じたこと(2024.02.29)

 この2月、久々に道外への出張が重なりました。
TVニュースでは、インフルエンザの感染者が地域によって目立つところもあるような報道がされていますが、巷の様子はどうなのか、感じたことを書いてみます。

 千歳空港は、結構な人々の賑わいがありました。ヨーロッパ系の外国人夫婦らしき二人づれが、珍しく(?)大声を出して走り回っておりました。出発便の時刻が迫っているようでした。それはともかく、コロナ前にはたくさん見かけた中国系の観光客の姿はあまり目につきませんでした。

 飛行機は、1月2日の日航機と海上保安庁機の事故の記憶もあり、少し怖い気もしましたが、往きも帰りも満席状態でした。観光客もそれなりに多いようですが、ビジネス客もかなりいて(平日だったせいもあるかも?)、経済の回復状況が感じられました。

 伊丹空港は、こちらもかなり混んでいました。やはり、中国系の人はそれほど見かけません。
京都行きのバスに乗ったのですが、わりと空いていました。外国人はほとんどおらず、ほぼ日本人といった感じです。

 JR京都駅の八条口に付き、コインロッカーに荷物を預けようとしたところ、ほとんど空きが見つからず少し困りました。それなりに観光客は来ており、荷物を預ける人が多くいたようです。
 ようやく見つけたコインロッカーは、電子マネーが使えるものではない古いタイプのものでした。それでもなんとか身軽になり、必要なものだけを持って会議に出席しました。

 北は北海道(私以外の)から南は九州・宮崎まで、全国から20名ほどの経営者が集まり、近況報告がなされました。北海道から参加された社長は、半導体工場が千歳にできる関係で、にわかに地元の工業高校生にも求人が殺到していると報告していました。
 四国のある製造業の社長は、業界仲間ではインボイス制度への対応で困っている話をされていました。

 兵庫の電子部品メーカーの経営者は、電気自動車部品を供給するために、北米に製造拠点を作っていると言っていました。大阪のアパレル販売の社長は、北海道や関東にも店があるのですが、地域によって売れるものと売れ行きにバラつきが大きいとのこと。京都の印刷会社の経営者は、観光客が戻ってきたので仕事がかなり回復したが、小さな印刷業者は廃業がすすんでいると言っていました。

 長野の観光関係の社長は、コロナ禍で客が大幅に落ち込み大変だったが、内部体制を強化するとともに値上げをしたとのこと。ここへきて、観光客が戻りつつあり、値上げの影響は心配したほどではなかったと話していました。東京のビルメンテナンスの経営者は、人手不足でたいへん。清掃人材は75歳くらいからの求人状況とのこと。

 仙台の建設機械レンタルの経営者は、コロナ前に社長を譲り、会長職に。事業はコロナ明けでそれなりに忙しくなっているとのこと。名古屋の自動車部品メーカーの社長は、D社~T社の問題で仕事が急減、今は様子を見るしかないとの話。

 それぞれ、いいところもあればまだ経営環境が厳しいところもありましたが、総じてみると、やはりコロナ禍が収まったことにより、経済活動がだいぶ回復してきたことが感じられました。業界によっては、仕事はあるが採用難でこなせないとか、共通して出ていたのは賃上げしたいが難しいという話でした。

 この点では、ますます大企業と中小・零細企業との格差が拡大してしまうことが心配ですが、社会全体の雰囲気としては、まだらながらも、かなり明るさが見えてきた感じです。
 そこへ飛び込んできたのが、ドジャースに移籍した大谷選手の結婚のニュースです。世の中、いよいよ明るくなって来ましたね!

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仕事と商売(2024.01.31)

 新年早々、元旦から、能登半島地震に日航機と海上保安庁機の事故。なんという年の初めでしょうか。犠牲になられた方のご冥福と、ご遺族や被災された皆様の一日も早い平穏な日々に戻られることをお祈り申し上げます。

 さて、4年連続世界一を達成された、グループ販売台数を誇るグループ企業で、次々と不祥事が明るみに出ました。政治の分野では、これまた残念な事態で日本の国が揺れています。
 ほかにも、理不尽と思われる犯罪や事件が多発しておりますが、これらには共通の原因があるように思います。

 それは、目に見えるものに重きをおき過ぎ、目にみえないものをおろそかにすることで、世の中のバランスが崩れてしまったからではないかと思うのです。

 ふと思ったのが、「仕事」と「商売」ということです。今のご時世、AIブームの様相もあり、Ⅿ社とG社のAIチャットボットに尋ねてみました。日本語と英語で試してみましたが、いずれもほぼ似たような回答で、「やっぱりな~」という印象を受けました。

 「仕事」は、何かを成し遂げるために行う行動で、「商売」は、利益を得ることを目的として商品やサービスを売り買いすること、とありました。英語ではいくつかの単語が該当しますが、work と business がわりとマッチするようでした。「work」は、働くという行動全体や仕事全般を指すとのことで、「business」については、商売や事業全般を指し、利益を目的とした活動に限らず、社会貢献などの目的で行う活動も含まれる可能性がある、と、微妙な言い回しになっていました。

 そこで、今度は漢字そのものの意味を調べてみました。とくに「仕」と「商」についてです。
ご存じのように、「仕」は、仕えることであり、○○のために働くという意味があります。
そして「商」は、商うことであり、その語源とされているものはいくつかありましたが、そこには「駆け引き」が含まれるという説もありました。
これが私には納得感があります。「駆け引き」というと、当然複数の存在があるなかで、それぞれが何某かの利を求める要素があると思われるからです。

 話を戻しますと、先ほど「世の中のバランスが崩れてしまったからでは・・・」と述べたのは、仕事を忘れ商売に重きをおき過ぎたからではないかということを言いたかったわけです。

 不祥事のあった会社で働いている人たち、またなんらかの事件や事故を起こしてしまった人たちは、お客様や誰かに仕える立場であることを忘れ、自社の、あるいは自分の利や欲を満たすことに走り過ぎた結果、今の世の中になってしまったと考えることができるのではないかと思うのです。

 目に見えるものとは、お金や名誉とされている立場(肩書)であり、目に見えないものとは安全・安心や人々の幸せと言えばハッキリすると思います。
 儲けてはいけないと言っているのではありません。責任を持った商売=仕事をしてほしいと言いたいのです。人々の幸せのために。

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働き方改革と人手不足と106万円の壁(2023.12.29)

 近頃、建設業や医師・トラック運転手などの時間外労働の上限規制が話題になっております。尚、「トラック運転手など」には、バスやタクシーのドライバーも含まれ、旅館の送迎用バスの運転者や、スクールバスの運転者等についても、バスの運転業務を主とする場合は該当するとのことです。

 これらの方達は、一般労働者に適用されていた時間外労働の上限規制(原則、月45時間以内、年360時間以内など)が適用猶予されていたわけですが、いよいよ来年(2024年)4月より施行されることになりました。
 ただ、医師に関しては、とくに一般に適用されている原則的上限とは少し異なった取り決めとなっております。

 こうした働き方改革への対応として、建設業界では工事の発注方法の見直し、運送業界では置き配やバス路線の合理化、ライドシェアの検討、そして医療界でもリモートワーク、DXの推進等が進められています。
 少子高齢化による生産年齢人口の減少も相まって、あらゆる業界で人手不足が問題となっています。

 しかし、これに関しては、素朴な疑問も感じております。年末調整の時期でもあり、聞こえてくるのが103万円の壁とか、106万円の壁、130万円の壁といった言葉です。
 そして一方では、来年も引き続き「賃上げを目指しましょう」という国からの誘導があります。上で触れた「〇〇の壁問題」に対しては、「年収の壁・支援強化パッケージ」なるものが厚生労働省から出され、今年(2023年)10月より実施されました。

 パートで週20時間以上働いているなどの要件を満たしている主婦などが年収106万円を超すと、夫の扶養から外れて自ら厚生年金や健康保険に入らなければ(夫と主婦の扶養関係が逆の場合も同様)なりません。
 この保険料負担により手取り収入が減るのを嫌い、人手不足にも拘わらず就業調整してしまう事態を緩和するため、手取り収入が減らない取組みをする企業に助成措置を行うというものです。

 また、週20時間未満の就業でも、夫などが厚生年金・健康保険に加入している主婦などは年収130万円を超すと、扶養から外れ自ら国民年金・国民健康保険に入ることになり、手取り収入が減ることに対しては、130万円を超すのが一時的な事由であることを事業主が証明すれば、夫などの扶養から外れなくとも済む措置を行うことになりました。
 これらの「壁」は、今は従業員101人以上の企業が対象ですが、2024年10月からは従業員51人以上の企業も対象となることから、より多くの企業で問題となります。

 他方では、コロナ禍収束に伴いインバウンド増加の取組みも推進されており、さらに人手不足に拍車がかかっている状況があります。
 実際に私共でも、あらゆるところで「人材募集しても採用できない」という声を聞きます。時給を大幅に上げられればいいのかもしれないが、それでは採算が取れなくなる。しかし人を入れなければ生産や販売を増やせない。
 このように、生産年齢人口の減少、インバウンド需要等の回復、働き方改革と賃上げの一方で「〇〇の壁」があることによる就業調整、加えて原材料や燃料の高騰などがあいまって、コロナ融資返済の特別猶予を受けたとしても「事業を続けられるのは時間の問題」といった厳しい状況があります。

 これはほんとうにあった話ですが、筆者の親戚筋にあたる家庭で、おばあさんが亡くなりました。その娘さんが東京で一人息子と母子家庭としての生活を送っていたのですが、「〇〇の壁」による就業調整と、職場の人手不足との板挟みにあい、おばあさん(娘さんの母)の葬式に北海道へ戻って来ることができなかったのです。

 「〇〇の壁」は、過去の様々な事情から紆余曲折を経て今日に至っている問題だとは思うのですが、これだけ「人手が足りない」「経済成長に賃上げが必要」と言われているのに「壁を見直すべき」と強く主張する専門家などの声がほとんど聞こえてこないのは何故なんでしょうか? 
 企業にとっても従業員にとっても、そして海外からも含めたお客にとっても、さらには地域社会にとっても、「誰もしあわせにしない」壁のように感じています。

 社会保険料だけではなく、扶養控除など税法などとも絡む複雑な問題であることから、おそらく抜本的な制度改革を考えない限り解決は難しいのでしょう。
 それにしても、こうした問題を真剣に考え、方向性を提示している学者や専門家は本当にいないのだろうかと思い、ネット検索してみましたがなかなかヒットしませんでした。

 しかし、かろうじて見つけたのは、「130万円と106万円の壁問題を改めて考える」と題した、東京財団政策研究所のネット情報(https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3957)でした。
 こうした研究をさらに進め、抜本的な対策が早急に実施されることを願っております。

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和を以て貴しと為す(2023.11.28)

 先日、知人と3人で食事をする機会がありました。近くの飲食店に入り、注文する際に、海外から進出したブランドによるある飲料が話題となりました。ここでは支障が生じるといけないので、名称は伏せることとします。
 実際にその飲料を注文して味わってみたのですが、私にはそれほど美味しいとは感じられませんでした。その飲料は決して特殊なものではなく、他のブランドもたくさん売られているものでした。

 もちろん、嗜好は人により様々であり、美味しさの度合いも主観による面が強いことは承知しております。そのうえで、私はこう言ってみました。「なんで日本では、海外からの有名ブランドと言われると、すぐ“素晴らしい!”といった評価をして皆なびくんだろうね?」 「もう少し自分の判断で意見を言うなり、行動してもいいんじゃない?」と。
 すると、一緒にいたある人が、「日本には、“和を以って貴しと為す”という言葉があり、昔からそれを大事にしてきたからじゃないの。」と言ったのです。
 「!!っッ」。その時私は、咄嗟に、妙に納得させらた気分になりました。その言葉の本来の意味とは異なるはずなのに・・・です。

 そこで、今更ながらですが、「和を以て貴しと為す」という言葉について調べてみました。
まずは、「ことわざを知る辞典」による解説です。(以下引用。)
 「一般には、『日本書紀』が伝える聖徳太子の定めた十七条憲法の第一条としてよく知られています。しかし、これに先立って『礼記―儒行』に「礼は之(これ)和を以て貴しと為す」、『論語―学而』には「礼は之和を用って貴しと為す」とあります。なお、儒学の「和」は、名分を守り秩序を重んじる「礼」を行うにあたって、やわらぎ睦み合うことの重要性を説いたものですが、十七条憲法の「和」は、そうした儒学の「和」の概念を超えて仏教の和合の精神の大切さを説いたものとされています。
https://kotobank.jp/word/%E5%92%8C%E3%82%92%E4%BB%A5%E3%81%A6%E8%B2%B4%E3%81%97%E3%81%A8%E7%82%BA%E3%81%99-2236499 」
(引用終わり。)

 『日本書記』が出てきましたので、その十七箇條憲法の第一条原文を調べると、次のようなものでした。(以下ウィキソースからの引用。)
 「一曰。以和爲貴。无忤爲宗。人皆有黨。亦少㆓達者㆒。是以或不順㆓君父㆒。乍違㆓于隣里㆒。然上和下睦。諧㆓於論㆒事。則事理自通。何事不成。

 一に曰はく、和を以て貴(たつと)しと為し、忤(さから)ふこと無きを宗と為す。人皆党(たむら)有りて、亦達者少し。是を以て或は君父に順(したが)はずして、乍(たちま)ち隣里に違(たが)ふ。然れども上和(やはら)ぎ下睦(むつ)びて、事を論(あげつら)ふに諧(ととの)へば、則ち事理自ら通ず、何事か成らざらむ。
https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%8D%81%E4%B8%83%E6%9D%A1%E6%86%B2%E6%B3%95 」
(引用終わり。尚、( )内のフリガナは、引用元では漢字の上に振られていたものを一行内に表示するために筆者が調整しました。)

 上記をさらに分かりやすく説明したものが「和楽web(小学館)」にありました。(以下引用。)
 「和を大切にし人といさかいをせぬようにせよ。人にはそれぞれつきあいというものがあるが、この世に理想的な人格者というのは少ないものだ。それゆえ、とかく君主や父に従わなかったり、身近の人々と仲たがいを起こしたりする。しかし、上司と下僚がにこやかに仲むつまじく論じ合えれば、おのずから事は筋道にかない、どんな事でも成就するであろう。
https://intojapanwaraku.com/rock/culture-rock/10397/ 」(引用終わり。)

 十七条憲法は、聖徳太子(厩戸皇子:うまやどのおうじ)が推古12(604)年に制定したもので、当時の貴族や官僚など政治に関わる人々に道徳や心がけを説いたものとされています。
 その精神が、今日の日本人の趣味・嗜好にまで影響しているのだとしたら、凄いことだと思います。知人が放った上記の一言で、その時は3人で大笑いしました。

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ゆるブラック(2023.10.30)

 先日、とあるTV番組で「ゆるブラック」という言葉を耳にしました。「ブラック企業」という言葉はさんざん見聞きする機会があったのですが、「ゆるブラック」もしくは「ゆるブラック企業」という言い方は初耳でした。
 TVで語られていたところでは、ゆるブラック企業とは、従業員にとって「働きやすく残業などもほとんどない」、「仕事に対して過度な要求はなく、離職率も低い」、「しかし、このままでは自分の成長はなく、将来が不安」な会社・・・といったような話でした。

 その時とっさに思ったのは、「何それ?ずいぶんワガママな話じゃない?」という感想でした。その話に該当した(主に若手の?)従業員たちは、おそらく大変苦労して就職活動を乗り越え、いわゆる「イイ会社」に入社されたのだろうと想像しました。ところがその結果、何年か経って自分の勤め先に対する見方が「ゆるブラック企業」とは、どういうことなんだろうと思ったのでした。
 中小企業の経営支援をしている立場としては、気づくのが遅くて恥ずかしい話なのですが、調べてみると・・・

(以下引用 ― 「そもそも“ゆるブラック企業”というキーワードは、19年頃にネットで評判になったのち、国内最大級の社員口コミサイトを運営するオープンワーク(当時はヴォーカーズ、東京・渋谷)の働きがい研究所から示された分析リポート 
https://www.vorkers.com/hatarakigai/research_4 で広まったようです。」 ― 引用終わり) ・・・ とありました(残業もなく成長もない 「ゆるブラック企業」増殖中? 2022 / 2 / 15 日経リスキングより)。
 時期としてはコロナ禍の直前から、コロナ禍の最中にかけて続いてきた話題のようです。

 思い起こせば、コロナ禍の直前には、盛んに「働き方改革」が叫ばれていました。2018年7月31日の弊トピックスでは、働き方改革の成果を謳っているものの中には「質」が伴っていないケースもあることを指摘しておりました。
 コロナ禍を通過する過程では、在宅勤務やリモートワークが進展したことが挙げられます。確かに、リモートワークで直接顔を合わせない働き方が続くと、「自分はこのままで成長できるのだろうか?」といった不安を感じる人が出てくるのもわかるような気はします。

 そこで、冒頭にあった、働きがい研究所の分析リポートを確認してみました。なお、運営会社の社名変更により、URLは上記のものから、
https://www.openwork.jp/hatarakigai/research_4 に変更されていました。そしてそのリポートのタイトルは、「残業はないが成長もない。“ゆるブラック企業”を見える化する」でした。
 そのリポートでは、「自分の成長に繋がる修羅場経験」をすることができる企業とはどういった企業なのかを分析し、最終的に「単に忙しいために“修羅場経験”ができる割合が高い業界」と、「“修羅場経験”に繋がるような良い経験ができる可能性が高い業界」を「業種別マップ」としてまとめられていました。それについては、上記URLよりご確認ください。

 また株式会社マイナビの調査によれば、転職意向をもつ人のうち、どの年代においても過半数は自身の会社や職場が「ゆるブラック」であると感じていて、特に20代では約7割まで達しているとのことです(2023/04/28 若手社員の「ゆるブラック」という感覚の裏側にあるもの https://saponet.mynavi.jp/column/detail/20230426185753.html より)。

 想像以上の割合であることに驚きましたが、この「ゆるブラック」ということについて私は、従業員本人の問題と、企業側の問題、さらには社会の働き方に関する意識の問題があるのではないかと捉えました。
 既におわかりと思いますが、冒頭で述べた「ワガママでは?」との感想は、従業員に対してのものです。
 苦労してせっかく「イイ会社」に入社したのに、その恵まれた環境に感謝もせず、「もっと厳しくないと自分が成長できない」と本気で思っているのだとしたら、成長できない原因は本人にあると言えます。その従業員が、「自分の成長は会社がしてくれるもの」と考えているのだとしたら、主体性が欠如していると言わざるを得ないからです。そのような人は、少しキツイ職場に転職したら今度は、「仕事が忙しくて勉強(成長)するヒマもない」と言うのではないでしょうか。

 しかし従業員によっては、能力が高く非常に向上心もあって、「ウチの会社はゆるくて成長できない」と考えている場合もあるかもしれません。その場合であっても、やはり本人にも問題がないとは言えません。その職場の中でチャレンジできる課題を見つけ出し、なにがしかの成果を出して欲しいと思います。そうしたチャレンジもせず、成果も出さずに「ゆるブラック」に甘んじている人については、それなりの評価しかできないと考えます。

 一方、「ゆるブラック企業」と言われる会社の側にも問題があります。そう言われる会社の多くは、おそらく中堅以上の規模の会社と想定され、中小・零細企業は少ないと思われます。「働き方改革」を進め、残業を極力減らし、社内のコミュニケーション改善にも努めて来られた中堅規模以上の会社は、働きやすい会社になったのでしょうが、従業員を「甘やかせ過ぎている」面はないでしょうか。
 「働きやすさ」は重要ですが、それだけでは会社は存続が危ぶまれます。市場競争の環境の中にあって会社が存続・発展していくためには、従業員の成長が欠かせません。仕事に緊張感があり、失敗や成功の経験を重ねることによって、従業員は働き甲斐や成長の実感が得られます。従業員に学びやチャレンジの機会を与え、そのプロセスや結果を評価する環境を整えることが必要です。

 多くの企業がそうした取り組みをされているのでしょうが、従業員の受け止め方との間にミスマッチが生じている可能性もあります。企業側で「良かれ」と考えて作り上げた職場環境であっても、そこで働く従業員にとっては「ゆるい」と感じる部分がいくつもあるのかもしれません。
 とくに今年に入り、にわかに生成AIが話題となりました。コンピューターの活用の仕方に明らかな進展がありました。従来の「決められた行為の自動化」ではなく、問いかけに応えて「新たなコンテンツの生成(創造)」ができるようになってきました。文章はもちろんのこと、画像や音楽、動画など、かなりの精度でかつスピーディにアウトプットされます。 
 しかも大量の学習能力をもとにどんどん進化していますので、将来的にほとんどの仕事が生成AIにとって代わられるのではないかと言われたりもしています。そうした時代が迫っているなかで、「今の会社で自分は大丈夫なのだろうか」と従業員が考えてしまう状況があると思われます。そうした従業員の漠然とした不安に企業は対応できているのか、といった問題も考えられます。

 さらに、働き方に関する社会の意識の問題もありそうです。日本では、長らく「終身雇用」が前提の社会でした。しかし、1970年代に入ると、社内の人材だけでは対応しきれない業務を、専門的な知識や技術を持つ外部人材で補うというスタイルが普及し、1980年代には、経済のグローバル化や技術革新が進むなか、より多様な人材活用へのニーズに応えるかたちで「労働者派遣法」が1986年に施行されました。
 また1993年には、短時間労働者と正社員との間の「公正な待遇の実現」を目的に、「パートタイム労働法」が施行されております。

 そして2017年3月に決定された「働き方改革実行計画」では、柔軟な働き方がしやすい環境整備が謳われました。そのなかで、「副業・兼業を希望する方は、近年増加している一方で、これを認める企業は少ない。労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業を普及促進する」とされました。
 日本では、公務員を除き副業を禁止する法律はなく、終業後の時間の使い方は自由とされています。しかし、就業規則で副業を禁止している会社も少なくありません。
 そこで厚生労働省は2018年1月、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、「モデル就業規則」上で、それまで記載していた「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除しました。そして新たに「第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」という、副業を認める条文を追記したのです。

 実はこうした一連の動きの前に、厚生労働省には“働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために懇談会”が設置され、その結果をまとめた「働き方の未来2035」という報告書が2016年8月に発表されています。
 そこでは、「2035年には働く人が大幅に減少していることから、人手不足が一段と深刻になるに違いない。そうした中で、AIなど科学技術の発達による自動化・ロボット化によって、介護や子育て、家事などの負担から働く人が解放され、それらが働くことの制約とならない社会になっていることが重要である。
 兼業や副業、あるいは「複業」は当たり前のこととなる。多くの人が、複数の仕事をこなし、それによって収入を形成することになるだろう。但し、技術革新のスピードが速いことから、専門的な能力は環境の変化に合わせて変化させていく必要があり、「転職」を柔軟に行える社会になっている必要がある。」と、述べられていたのです。

 こうした未来を見据え、社会全体としても働き方に関する意識をもう一段レベルアップする必要がありそうです。ひょっとしたら、今の20代の若者は、こうした時代の流れを肌で感じ取り、「ゆるブラック」な状況に対応しようとしているのかもしれません。
 なお、「働き方の未来2035」報告書については、2017年5月21日の弊トピックスでも触れておりましたので、ご参照頂ければと思います。

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食べていければいいと思っているのではないか!?(2023.09.29)

 今月、北海道内のとあるリゾートホテルを活用して、経営者の勉強会を数日間行いました。日ごろの激務で消耗されている経営者の心身へのチャージの意味も含めた合宿勉強会でした。
 幸い、期間中は比較的天候にも恵まれ、勉強会の合間に周辺の自然とふれあう機会を持つことができ、リフレッシュすることもできたのではないかと考えております。

 ところで最終日の朝、耳の痛い話を聞かされました。ホテルのレストランで数名の経営者と一緒に朝食をとっていた時のことです。
 その中の一人が放った言葉が、今回のタイトルのようなものでした。事の顛末は次のようなお話でした。

 昨夜、勉強仲間とホテル近隣の飲食店に行ったそうです。勉強会とはいえ、せっかく初めての土地に来たのだから、少しはこの土地のお店で思い出をつくれたらいい・・・くらいの気持ちで、近くの店に入ったとのこと。
 すると、「すみません、そろそろ閉店しますので・・・」と断られました。なんとまだ夜8時を少し回ったくらいの時刻だったそうです。
 もちろんお店はほかにもありましたので、少し歩いて、「ここは」と思った店に入ろうとしたところ、「生憎、満席なので・・・」とまたまた断られてしまいました。しかし、店の奥のほうの席が空いているのが見えたそうです。「空いているんじゃないの?」と言っても、埒が明きませんでした。

 せっかく訪れた土地を少しでも楽しもうと出かけたのに、立て続けにこのような状況に出くわし、「じゃあホテルに戻って、ホテルの店で楽しむ事にしよう」ということになりました。
 そして、ホテルの店に入ったところ、「10時までですが、よろしいですか?」と言われました。時刻は間もなく夜9時になるところでした。ほんとうは2時間位は楽しみたいところでしたが、やむなく1時間ほどで切り上げたといいます。
 しかし、なんとも後味の悪い夜だったようで、朝食の際に思い出し、冒頭の言葉になったようです。

 「人手不足で手が回らなかったからでは・・・?」とか、「働き方改革もあり、あまり遅くまで営業しなくなったのかも・・・?」など、可能性のありそうなことを述べてはみたものの、店で断られたご本人達はいずれも道外の経営者で、私は道民として申し訳ない気持ちになりました。
 「せっかくコロナも収まったというのに、やる気があるのかね!」、「食べていければいいと思っているんじゃないか?」。
 似たような言葉は、20年ほど前にも聞いた記憶があります。それは、北海道の比較的高収入を得ているとされた農業地帯の農家の経営について向けられた言葉でした。

 その農業地帯も、今では悪戦苦闘しているようです。業種を問わず、北海道の経営者全般に言えることだとすれば、根本から見直す必要がありそうです。そうした経営者と関わる立場の私としても、心しなければならないことと受け止めた次第です。

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ファクトチェック(2023.06.30)

 「フェイクニュース(fake news)」ということばは、アメリカのトランプ大統領が用いて広まったと感じております。が、その起源を調べたForbes japanの記事(https://forbesjapan.com/articles/detail/15288)によれば、トランプ氏の前に、2016年11月にFacebook(当時)のマーク・ザッカーバーグ氏がカンファレンスの壇上で用いており、さらにその起源は第一次世界大戦中にまでさかのぼるようです。

 それはともかく、インターネット上で様々なフェイクニュースが飛び交う今日においては、何が正しい情報かを見極めるのが難しくなっております。
 こうした誤情報や偽情報(フェイクニュース)の可能性のあるものの発生源や事実を調査・検証する「真偽検証」活動のことをファクトチェック(fact check)といいます。

 今回は、日本でファクトチェックを行っている機関やサイトにはどのようなものがあるかを私なりに調べてみました。

 まずは、日本ファクトチェックセンター(JFC)(https://factcheckcenter.jp/)を取り上げたいと思います。
 2020年に総務省で、「総務省プラットフォームサービスに関する研究会」が開催され、ネット上の誤情報・偽情報の問題は、法規制ではなく民間による取り組みの推進が必要だとする報告書が発表されました。

 それを受けてセーファーインターネット協会(SIA)が、官庁や有識者、事業者で構成される「Disinformation対策フォーラム」を立ち上げ、2021年7月に「ワクチンデマ対策シンポジウム[9]」を開催するなど、偽情報・誤情報対策に取り組んできました。
 そして2022年10月1日、2年間の議論により、テクノロジー企業が協力して検証機関を作ることになり、「日本ファクトチェックセンター(JFC)」が設立されたとのことです(以上、Wikipediaより)。

 この日本ファクトチェックセンターのサイトでは、フェイクニュースの可能性のある情報のファクトチェックのほか、「JFCファクトチェック講座」(https://factcheckcenter.jp/m/m2663551b4f4e)という記事が掲載されており、どのようにフェイクニュース等に向き合えばよいかについて学ぶことができます。

 次に、認定NPO法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)という団体があります。(https://fij.info/
2017年6月に任意団体として設立され、2018年1月に、特定非営利活動法人として東京都の認証を受けました。
 FIJは、日本におけるファクトチェックを推進・普及するためのプラットフォーム団体です。ファクトチェックを行う組織や個人をサポートし、ファクトチェックの担い手を増やし、育てています。
 FIJでは、社会的関心の高い事柄に関して人々を誤解させるおそれのある情報を検証し、正確な事実を共有することに貢献した作品を顕彰し、その社会的意義を広めるため、「ファクトチェックアワード」の作品募集・選考を進め、「大賞」や「優秀賞」の発表を行っています。

 また、ファクトチェック記事を一覧・検索でき、ファクトチェックに関連する情報を調べるのに便利なツールとして「FactCheck Navi」というWebアプリを開発し、運用しています。スマートフォン向けWebアプリですが、PCブラウザでも閲覧できます。https://navi.fij.info/about-navi/
 (以上、同団体サイトより)。

 三つ目として、一般社団法人リトマスhttps://litmus-factcheck.jp/2022/10/977/)が挙げられます。 上記FIJは、先日(6/21)、2023年の「ファクトチェックアワード」の結果を発表をしましたが、その「大賞」を受賞したのがこのリトマスがファクトチェックしたものでした。
 リトマスのサイトでは、数多くのファクトチェック情報を無料で閲覧することができます。

 四つ目は、認定NPO法人インファクトhttps://infact.press/)です。
上記「2023年ファクトチェックアワード」では、この団体がファクトチェックした記事が2本、「優秀賞」を受賞しております。
 このインファクトのサイトでも、同団体がファクトチェックした情報を無料で閲覧できます。

 五つ目として、Wasegg(ワセッグ)(https://wasegg.com/archives/category/factcheck_article)を挙げます。
 これは、早稲田大学政治経済学部のジャーナリズム・メディア演習(瀬川ゼミ)のゼミ生が発信するWebマガジンです。
 こちらのサイトでは、政治関係のファクトチェック情報を中心に見ることができます。

 インターネット上で真偽を確認したい情報に出会ったとき、上記の各サイトやWebアプリを活用して調べることができれば、正しい判断をするのに役立つことでしょう。

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少子化と高齢化はつながっている(2023.05.31)

 人口減少が大きな問題として認識されるようになってきました。生産活動も消費活動も停滞が感じられるようになり、経済の活力が低下してきました。国内販売には限界があるとみた企業は、以前から輸出や海外展開を考え、実際に取り組まれています。

 しかし、国内での営業を主とせざるを得ない企業では、インバウンド需要や外食需要、集団活動需要の増大を期待しています。ところが、コロナ禍の収束に伴い復活し始めたそれらの需要に対し、物流も含め、人手不足で応えにくい状況が生じてきました。

 失われた30年などとも言われるほどデフレ基調が続いてきたわが国でも、ここへきてにわかに物価の高騰・賃上げの動きが顕在化しております。しかし、賃上げするにも限度があるほか、そもそも生産年齢人口の減少は物理的な構造問題として立ちはだかります。

 これらに対しては、外国人技能実習制度の見直しや移民受け入れなども話題になっていますが、わが国での賃金水準が低いために、有望な海外人材の確保もままなりません。
 地球全体では人口が増加するなかで、食料に関しても例えば水産物の輸入に当たっては海外勢との間で日本企業は「買い負け」しているという話は以前から聞いておりました。

 また、国内の様々なインフラ設備が老朽化してきていますが、これらの改修についても、予算が足りないといった問題も顕著になりつつあります。
 高齢化が進む中、介護人材不足も深刻で、これらはいずれもその多くが出生率の低下・人口減少を原因として生じてきた問題といえそうです。

 これらに対応するため岸田文雄首相は本日(6/31)、2024年度からの3〜5年間に必要な予算を年3兆円台半ばとするよう関係閣僚に指示し(日経新聞ONLINEより)、「異次元の少子化対策」に取り組むようです。今後公表される「こども未来戦略方針」の素案では、医療や介護の歳出抑制、社会保険料の上乗せでどの程度の財源を確保するか具体案を示さず「年末までに結論を得る」と記す予定のようです。

 少子化対策や子ども・子育て支援は極めて重要であることは言を俟たないのですが、どこか不安を感じざるを得ません。その不安は財源をどうするかという点です。
 高齢社会対策としてはこれまでに介護保険など社会保障制度の充実で取り組んできました。しかし、介護人材不足は解消の目処がたっていないように感じます。

 これに加えて「こども・子育て支援」として、産前・産後ケアや一時預かり等を利用できる環境整備、出産一時金の大幅増額、低年齢児(0~2歳)を育てる世帯への経済的支援、不妊治療等への支援、子育て期の柔軟な働き方の促進、育児休業取得促進と時短勤務への支援、育児休業給付の対象外である自営業者やフリーランス・ギグワーカー等への支援等々が検討されているようですが、どうもますます深みにはまっていくような気がします。

 これらに反対する理由は全くないのですが、気になるのはその取り組み方です。それは、これまでの高齢化対策と同じような「社会保障制度」の拡充という方向性を感じるからです。

 1970(S45)年、わが国は高齢化率7%を超え、高齢化社会へ突入しました。その後1994(H06)年に14%超え高齢社会へ、そして2007(H19)年に高齢化率21%超えて超高齢社会となっています。
 この間に、1973(S48)年には「老人福祉法」が改正され、70歳以上老人医療費の無料化がされましたが、1982年には「老人保健法」制定により高齢者医療費の無料化は廃止されました。

 そして2000年4月、介護保険法の施行により措置制度から契約利用へと変更され、介護事業は民間事業者の参入も図られました。また同年に成年後見制度も施行されています。
 高齢者の住まいに関しては、それまでの有料老人ホームとは別にサービス付き高齢者向け住宅登録制度が2011(H23)年に創設されました。

 少子化対策がこれらと同様の道を辿るとは限りませんが、社会保障制度の一環としての性格が強くなれば、その制度の維持・運用のためにどうしてもかなりの財源確保が必要となりそうです。

 高齢化対策がうまくいっているかというと、必ずしもそうとは言えないと感じています。昔の話をひきあいに出すのは適当ではないと承知のうえで、あえて述べるのですが、今ほど核家族化していなかった昔は、高齢化問題も子育て問題もそれほど顕著ではなかったように思います。

 それは各家庭において、おじいちゃん・おばあちゃんが子供の面倒をみることによって社会や生活が成り立っていた部分が少なからずあったと思われるからです。地方の若者が都会に出て働くようになり、核家族化し、働き方も非正規労働といったカテゴリーが増大するにしたがって、社会構造がすっかり変わってしまいました。

 企業は働き手の確保にメリットがあり、経済成長にもつながったものの、家族は分断され、労働内容も分業・専門化されることによって分断され、人々の心まで分断されてしまったのが、現代ではないかと思うのです。

 これに対して、社会保障制度の充実で対応するのは対症療法であり、根本からの解決にはなりにくいように思いはじめました。
かと言って昔に戻すことはできないものの、政策的に疑似家族主義のような社会構造づくりはできないものかと思うのです。

 家族というのがマッチしないのであればコミュニティというのが良いのかもしれません。高齢化対策と少子化対策を別々の制度として取り組むのではなく、高齢化と少子化はつながっていると考え、国が音頭をとって企業を巻き込み、コミュニティとして支えあう取り組みへの展開です。

 これまでは経済優先により社会の分断化が生じてきたのだとすれば、これからは企業を巻き込んだコミュニティ優先による分断の解消へという方向性があってもよいのではないかと思うのです。

 高齢化対策では、介護制度など、高齢者にとってはありがたい政策ではありましたが、高齢者が果たせる役割を期待されなかった社会でもあったように思います。高齢者も社会から分断されてきたと言ってはいいすぎでしょうか。
 こどもとの関係性のなかで高齢者の出番をつくることにより、認知症の進行も減らせるように思います。

 制度としてルールを決めると、そこにはどうしても「やらされ感」が生じます。そうではなくて、コンセプトや方向性はきちんと国が打ち出し(ビジョンを描き)、実施は企業や民間の知恵に任せるというスタンスです。
 まだ考えを熟成できていないため、十分な説明になっていないのが心苦しいのですが、最近なんとなく考えていることを記しました。

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JアラートとBCP(2023.04.13)

  今朝7時55分過ぎ、突然スマホが聞き慣れない警報音を発しました。慌てて覗き込むと、北朝鮮が発射したミサイルが北海道周辺に8:00ころ落下する恐れがあるとのこと。数秒後、テレビでも同様の放送が流れ、一気に緊張が走りました。
 まだ出勤直前で自宅にいたのですが、どう対応すべきか色々な思いが頭のなかを駆け巡りました。「直ちに建物の中または地下に避難してください!」と言われても、実際、地下室があるわけでもなく、ほとんど何もできません。

 それでも、着弾する見通しの8:00までにはまだ4分ほどあります。当初はちょっと慌てましたが、とりあえずできることをしようと考え、まずカーテンを閉めました。実際にどこに着弾するかわかりませんが、直接いま居る建物ではなくとも、近くに着弾すれば爆風で窓ガラスは割れ、飛散することから身を守らなければなりません。
 次に、地震などで避難する時のために用意してあった、折り畳み式のヘルメットを取り出し被りました。さらに、もしも火災になった時のため、家庭用の消火器を手元に用意し、窓際から離れた場所で身を伏せました。テレビはつけっぱなしで報道を見ていました。

 8:00までの数分間は、結構長く感じました。8:00になってもしばらくは様子を見ようと考え、伏せたまま過ごし、10分が過ぎ・・・8:12ころ、起き上がり椅子に腰かけました。そして8:20ころ、「ミサイル落下の可能性はなさそうだ」とのテレビ報道があり、今回は事なきを得ました。

 さて、振り返ってみて、これでよかったのか?と考えてしまいます。企業などでは危機管理対策としてBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)というものがあります。
 地震などの大規模災害からの早期復旧を目指したものですが、近年では感染症パンデミックなどへの対応も想定しなければならず、さらにはテロや今回のミサイルなどへの対応となると、とても大変と感じざるを得ません。
 しかし、事態が大きくなればなるほど、救急車等の助けを期待しにくくなることは明らかであり、各自・各社がどれだけ自助・共助への備えができるかにかかっているのだと、改めて考えさせられた出来事でした。

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大谷翔平選手と鉄腕アトム(2023.03.31)

  おそらく日本人の誰もが大喜びでスッキリした感覚を覚えたであろうWBCでの「侍ジャパン」の優勝。コロナ禍が終わろうとしていてもなお閉塞感が漂っていた中、多くの人が元気になり、誇りに思えたイベントだったと思います。
 とくに大谷翔平選手については、メジャーでの活躍に加えての大活躍で、その人気ぶりは留まるところを知りません。投打二刀流での活躍は、まさに超人的で、「ほんとうに人間なのか?」との声も聞かれます。

 そして「侍ジャパン」の全勝優勝は、大谷選手以外にも多くの優れた選手たちが一丸となったときの強烈なパワーを世界に印象づけました。このことは単に野球に関してだけではなく、日本や日本人の底力のようなものを世界が改めて認識しなおし、場合によっては警戒されるきっかけになったのではないかとも感じております。

 どうして大谷選手のような人材が日本から生まれたのか?どのようにすれば、あのような人間が育つのか? 技術的に優れていて投打二刀流がこなせるというだけではなく、人間性も素晴らしく敵チームからも愛される人。なりたくてもなかなか成れるものではないことを、自然体でできている凄さ。「信じられない」と言われるのは無理もありません。

 すでにネット上で出回っていますが、大谷選手が花巻東高校1年生のときに描いたという「目標達成シート」を私も見ました。これは「マンダラート」とか、「マンダラチャート」と呼ばれているフレームワークです。
「マンダラート」は、株式会社ヒロアートディレクションズの代表取締役:今泉浩晃氏が1987年に考案したとされて(Wikipediaより)おり、また、「マンダラチャート」は、株式会社クローバー経営研究所創業者の松村寧雄氏が1979年に開発したとされて(同研究所Webサイトより)います。「マンダラチャート」は2006年に商標登録もされているようです。
当時、私も、前者の著書を読み、後者で販売されている手帳を購入して試した記憶があります。しかし恥ずかしながら、大谷選手のようには成れておりません。

 話を戻しますが、大谷選手の「目標達成シート(マンダラート・マンダラチャート)」の内容と、その結果(ご本人の実像)については大いに興味があります。色々な人が様々な言葉で賞賛し解説もされていますが、まだまだ説明しきれない部分が多そうです。つまりそれは、彼が今なおどんどん成長・進化し続けているからにほかなりません。
 それを承知の上で、私なりに大谷翔平というスーパースターを説明してみようと考え、次のように「トラハニチャート」で表してみました。ちなみに「トラハニチャート」とは私(野﨑)が名付けたものです。

 A.まず彼には「大志」がありました。それはドラフト1位で8球団から指名されることであり、さらにはメジャーリーグで活躍する目標でした。それはやがて日本の野球を世界で認めてもらうという使命感にもなってきたと考えられます。
 B.次に、それを実現しようと他の選手の何倍も努力し、しかもその努力を継続したということが挙げられます。その正しい努力が報われているということでしょう。
 Ç.そしてその対象に、好きなことを選んだのも大事なポイントといえます。「好きこそものの上手なれ」といわれますが、自分の気持ちに素直に生きて、今の大谷選手があるのではないかと考えられます。

トラハニ(大谷選手).png

 ここで、A(大志)とB(努力)の間には、目標達成シートがありました。また、B(努力)とC(好き)の間には、読書による知識と科学的なトレーニングがあると考えられます。
 そしてA(大志)とC(好き)の間には、目標に沿った環境を求め、適切なタイミングで人との出会いがあったのではないかと思われます。
これらの要素がご本人の努力に伴い有機的に紡がれながら、螺旋を描くように展開されていきました。

 その結果として、彼の人間性にも裏打ちされた収入と、強いメンタルに支えられた肉体、そして運も味方につけた人気が得られているのだろうと考えられます。しかもそれはまだまだ発展途上にあるといえそうです。
 これを一言で何と言えばよいでしょうか。私は「野球界の鉄腕アトム」ではないかと思いました。まさに「心やさし野球の子・・・十万馬力だ鉄腕ショウヘイ!」。ちょっと古すぎましたかね。。。

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競争のかたちが変わってきた!(2023.02.28)

 昨日(2月27日)の日経新聞のトップ見出しは、「次世代車特許 アマゾン首位」というものでした。リード(前文)を引用します。―米テック大手5社の自動車の次世代技術関連特許を分析したところ、出願数でアマゾン・ドット・コムが首位だった。新興企業の買収によって、グーグルが強かった自動運転分野でアマゾンの出願数が急増した。次世代車技術の競争力は生産規模ではなく人口知能(AI)など知的財産が左右する。テック大手の台頭で自動車の競争や協業のあり方が変わる。―(引用終わり)

 ここにも、「・・・競争力は生産規模ではなく、・・・知的財産が左右する」とあるように、量ではなく質の問題、別な言い方では無形(intangible)の資産による競争のかたちが主流となってきたといえます。
似たようなことは、約5年前の弊トピックス(インタンジブルズ競争の時代、2018年4月30日)でも取り上げておりました。

 自動車が蒸気機関からガソリンエンジンで動くようになり、電動化へと移り行くなかで、もはや自動車業界内での競争ではなく、異業種の企業グループ間での競争であるばかりか、そこで醸成されつつあるのは、乗り物とか移動の手段とか、はたまた「走る楽しさ」といった範囲には収まらない「新しい価値」づくりとその提案競争になってきたと言えます。

 そうなると、これまでの表現では説明しにくいことから、明確なコンセプトとして打ち出せるかどうかも競争の行方を左右する大きなポイントとなるでしょう。目に見えるもので競争できている時代は分かりやすかったですが、目に見えないものでの競争の時代となり、分かりにくくなった部分を分かりやすくするために「コンセプトの見える化」が求められていると言えます。

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創業支援から事業家育成へ(2023.01.29)

 一昨日(1月27日)、岸田首相は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類を5月8日に「5類」に引き下げると決めたことを発表しました。日本で一例目の新型コロナウイルス陽性者が確認されたのが2020年1月15日でした。これまでに感染拡大の波が繰り返され、現在は第8波が収まりつつある段階のようです。

 国内での1日当たりの感染者数が最大だったのは、2022年8月19日(第7波)の261,004人(NHKまとめ)でした。現在の第8波では、1月6日の感染者数が最多で246,600人(同)です。第7波よりはピークが少なくなったようです。しかし、1日当りの死者数のほうは、第7波では2022年9月2日の347人(同)が最多でしたが、第8波では去る1月14日の503人(同)が最多となっており、今後これを上回る状況が生じるかもしれません。

 医療の逼迫対策と経済の回復対策のせめぎあいが続いた3年間と言ってもいい状況ですが、ここへきて企業の倒産や廃業が目立ってきました。以前は、創業してから日が浅い企業は倒産しやすいとみられていましたが、コロナ禍以降は、かなりの業歴がある企業でも立ち行かなくなるケースが出てきました。

 ひと頃、わが国の廃業率が開業率を上回っている状況をなんとか反転しようと、「創業支援」の制度が充実化し、筆者も携わった記憶があります。規制緩和も叫ばれ、その一つとして、資本金1円で会社設立できるようにもなりました。
 一方で、1991年のバブル崩壊以来、失われた10年が20年になり30年とまで言われる状況もあながち否定はできません。この間に、1995年の阪神・淡路大震災、2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災があり、それぞれ日本経済に大きな影響があったことは確かです。

 この間に世界では成長を続けた国もあり、物価も上がりましたが、賃金も上がっているようです。わが国では一部の大企業は成長を続けているようですが、賃金はそれほど上がらず、中小企業では成長できないでいる会社も多いと思われます。
 日本経済の停滞は、人口減少・少子高齢化の影響が大きいとの見方もあります。岸田首相は1月23日の施政方針演説(衆議院本会議)で、「異次元の少子化対策」を実現したいと述べられました。

 話を少し戻しますが、ここで取り上げたいのは、日本経済復活に向けての開業率向上・創業支援策に関してです。2000年から2010年まで、公的相談窓口や公的セミナーで創業支援に携わる機会がありました。開業プランづくりや開業資金の借入計画のお手伝いなど、当時はそれなりにお役に立てたのではないかと考えておりました。

 しかし、ここへきて、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻に関連した物価高などがあるにせよ、開業してから事業を続け発展させていくための支援内容(教育)としては、十分とは言えなかったのではないかと考えるようになりました。
 そのキッカケのひとつには、2019年6月の弊トピックスでも取り上げた、デービッド・アトキンソン氏の『日本人の勝算』での指摘があります。
同書の「第4章、企業規模を拡大せよ」では、生産性、女性活躍、研究開発、輸出、技術の普及率、人材育成トレーニング制度など、日本が抱えている様々な問題の根源を究極的に探っていくと、小規模企業に勤める労働者比率の高さに行きつく。これがさまざまな問題の唯一の共通点である。・・・と指摘されておりました。

 思い起こせば、開業相談にあたっていた当時、相手はいつも一人でした。つまり複数名での会社設立・開業計画づくりは皆無だったのです。そもそも開業段階での規模が小さいということ。そしてビッグビジネスを手掛けるといった発想もほとんど見かけることはありませんでした。(そのような人は、私のところへ相談にこなかっただけと思いたいのですが・・・。)

 戦後設立され発展している企業をみると、例えばソニー(当時は東京通信工業㈱)は、1946年、井深大氏と盛田昭夫により仲間20人と設立されました。
そしてホンダ(本田技研工業㈱)は、1948年に本田宗一郎氏によって設立され、従業員20人でスタートし、翌年には藤澤武夫氏が経営に参画し成長してこられました。いずれも作る人と売る人が役割分担し、力を合わせて発展してこられたのです。
 さらに京セラ(当時、京都セラミック㈱)も、1959年に稲盛和夫氏により7人の仲間とともに設立され、発展してこられました。
 戦後の復興期、人口増加もあり、モノがなくて作れば売れる時代であり、「今とは時代が違う」と言う人もいるかもしれませんが、果たしてそれだけでしょうか。一人で開業し、細々と頑張って今日があるというわけではなさそうです。

 現在の開業状況の問題や経済停滞の根本には、教育の問題もあるかもしれません。施策の考え方も、創業支援から事業家育成といった発想に切り替える必要があるように思います。経営の神様といわれる松下幸之助氏は、1918年(大正7年)に身内と友人2名の計5名で電球ソケットの事業を始められました。当時は開業セミナーのようなものはなく、丁稚奉公のたたき上げで経営感覚を身に付けられました。

 現代では、皆丁稚奉公で・・・というわけにはいきませんが、学校教育や創業・開業支援についても、官・民を問わず、大きなビジョンを描ける人材教育、事業家としての感覚を養える施策のあり方が必要と考えます。複数名で開業する発想や、従業員を雇って始めても成り立つ開業計画をアドバイスすることもポイントになるような気がします。
 もう1月も末となり年頭所感とも言えませんが、年末・年始にわたり考えたことを述べさせていただきました。

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新たな借換保証制度(コロナ借換保証)の創設(2022.12.31)

 コロナ禍が始まって丸3年を迎えようとしております。コロナの影響の長期化や物価高など、多くの中小企業が引き続き厳しい状況にあります。
 こうした中、今後、民間ゼロゼロ(実質無利子・無担保)融資の返済が2023年7月~2024年4月に集中する見込みとなっております。

 このため国は、積み上がった債務の返済負担への対応や、事業再構築などの前向きな取組の促進など、個々の事業者の実態を踏まえた支援が重要と考え、コロナ融資の借換え保証制度を創設することで、返済負担軽減のみならず、新たな資金需要にも対応するとのことです。(12月23日付け中小企業庁サイトより)

 具体的には、一定の要件を満たした中小企業者が、金融機関との対話を通じて「経営行動計画書」を作成したうえで、金融機関による継続的な伴走支援を受けることを条件に、借入時の信用保証料を大幅に引き下げるコロナ借換保証を1月10日より開始するとのことです。

 ・保証限度額:1億円(100%保証の融資は100%保証で借り換え可能)
 ・保証期間等:10年以内(据置期間5年以内)
 ・保証料率:0.2%等(補助前は0.85%等)
 ・売上高または利益率の減少要件(5%以上)、もしくはセーフティネット4号または5号の認定取得が要件。また、金融機関による伴走支援と経営行動計画書の作成が必要。

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DXと究極の愚策?(2022.10.31)

 今回は、世間一般では非常識とか妄想と思われるかもしれないことを述べます。
 企業に限らず各国の政府も含め、世界中でDX(digital transformation)の導入が競われております。こうした中、総じてわが国は後れをとっているといった論調が目につきます。
 <以下、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用>
デジタルトランスフォーメーション(英: digital transformation、DX[1])とは、「情報技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という仮説である。2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマンが提唱したとされる[2]。(中略)
2022年、ストルターマンは、日本の組織、文化、DXの進捗を鑑み、社会、公共、民間の3つの観点で、デジタルトランスフォーメーションの定義を自身のブログ等で再提示した[6]。新しい定義は、株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所と協働の上、策定および翻訳されている[7]。
 <引用おわり>

次に、株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所のサイトを覗いてみると・・・
 <以下、同社サイトより引用>
DXの定義の改訂(2022年)
2022年 エリックストターマン氏とデジタルトランスフォーメーション研究所が共同で策定
エリック・ストルターマンは、DXを推進する日本の様々な組織の現状に合わせて、社会、公共、民間の3つのレベルで、デジタルトランスフォーメーションの定義を以下の通り改訂しました。本定義にあたっては、日本の社会と企業の競争力と成功を高めることをビジョンとして掲げる株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所とコラボレーションの上、策定を進めました。

民間のDX
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業がビジネスの目標やビジョンの達成にむけて、その価値、製品、サービスの提供の仕組を変革することである。DXは顧客により高い価値を提供することを通じて、企業全体の価値を向上させることも可能にする。DXは戦略、組織行動、組織構造、組織文化、教育、ガバナンス、手順など、組織のあらゆる要素を変革し、デジタル技術の活用に基づく最適なエコシステムを構築することが必要である。DXは、トップマネジメントが主導し、リードしながら、全従業員が変革に参加することが必要である。
 <引用おわり>

ここでは、社会、公共、民間のうち、民間のDXについてだけ引用しました。
 さて、ここからが今回の「愚策?」の話になるのですが、日本の企業が後れをとっていることについてどうすればよいか、考えてみました。
 結論からいうと、まだよく説明ができません。日本のなかでも、大企業については、レベルはともかく、ある程度は導入が進んでいるようです。しかし私どもも含め、中小企業がDX導入に悩んでおり、進み方も遅いのは事実です。
 どうすればよいか悩んでいるうちに、デジタルの対義語であるアナログに思いが至りました。先の「民間のDX」では、DXは企業がビジネスの目標やビジョンの達成にむけて、その価値、製品、サービスの提供の仕組を変革することである・・・とありましたが、そもそも企業は市場において競合先と競いながら事業を営んでおります。
 その競い方としてDXの導入がクローズアップしてきたわけですが、それはおそらく、アナログよりもデジタルのほうが優位に立てる要素が大きいからだろうと推察します。
 しかしデジタル化の進展はとてもスピードが速い。技術的にも速いが、コモデティ化するのも速いです。競合先に負けずについて行こうとすると、継続的に多額の投資が必要となりそうです。中小企業にはとても投資し続けることは難しいのではないか、とさえ思えてしまいます。

 そこで、アナログの出番です。市場において競合先に伍していくには、なんらかの差別化が必要と言われています。競合しないようにできればなお良いのですが、それには「同じ土俵で戦わない」ということです。
 デジタルの特徴として、コピーしやすい、再現性が高いということがあります。つまり真似されやすい訳です。これに対してアナログは連続的に変化し境界がわかりにくいです。曖昧さがあり、正確にコピーすることは難しく、真似しにくいと言えます。音楽や美術、舞踊、演劇といった芸術の世界です。
 何が言いたいかというと、中小企業はアナログを大事にすべきではないか、ということです。デジタル化の大波に乗って行ければよいのでしょうが、それで果たして中小企業は生き残れるのでしょうか?
 時代の流れに逆行するようですが、むしろアナログ化を突き詰めることこそ、中小企業の生き残る秘策なのではないか、と、今では非常識・究極の愚策?と言われそうなことを妄想した次第です。なんらかのヒントになれば幸いです。

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「空き家」、相続登記とアスベスト問題(2022.09.30)

  「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、全国の「空き家」は約849万戸あるとのことです。放置「空き家」に関しては以前から問題になっていたのですが、今回取り上げたのには、ちょっとしたきっかけがあったからでした。
 それは、身内にこの空き家問題を抱えていた者がおり、最近、解体工事をしたことから知ったことでした。今まで、当事者でなかったため、よく調べたことがなかっただけなのですが ・・・ ここでは、身内をAさんとして述べることとします。

 Aさんは、最近、生まれ育った実家の「空き家」を解体しました。その実家は車で2時間ほど離れた地方都市にあり、親が亡くなって以来、しばらく年に何度か様子を見に行っていました。老朽化が進む一方、近年、異常気象が増えたと感じていたことから、放置しておいて近隣に迷惑をかけてもいけないと考え、解体に踏み切ったとのことです。
 売却も考えたようですが、地方ではなかなか買い手もつかず、更地にしたほうが売却しやすいものの、住宅を解体撤去してしまうと固定資産税が6倍にもなるらしいとの情報もあり、躊躇していたようです。
 実際に市役所へ行って訊いてみたところ、固定資産税は6倍にもならないことがわかり、また、解体に補助制度があることも知り、解体に踏み切りました。

 問題はこの時に気づかされました。それは、解体する空き家にアスベスト(石綿)が含まれていると、工事費が高くつくことでした。調べたところ、2022年4月1日以降に着工する、解体・改修工事を対象として、石綿に関する事前調査結果を、労働基準監督署や自治体に報告する制度がはじまっていたのです。(大気汚染防止法第18条の15)
 ここで、事前調査結果の報告が必要な工事とは次の通りです。
① 建築物を解体する作業を伴う建設工事(※1)であって、当該作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上であるもの
② 建築物を改造し、又は補修する作業を伴う建設工事(※1)であって、当該作業の請負代金の合計額(※2)が100万円以上であるもの
③ 工作物(※3)を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事(※1)であって、当該作業の請負代金の合計額が100万円以上であるもの
(注)上記以外の工事であっても、建築物等の解体・改修時には事前調査の実施、調査結果の保存等が必要です。

※1 解体、改造、又は補修の工事を同一の者が二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で請け負ったものとみなします。
※2 請負代金の合計額は、材料費も含めた作業全体の請負代金の額をいい、事前調査の費用は含みませんが、消費税を含みます。また、請負契約が発生していない場合でも、請負人に施工させた場合の適正な請負代金相当額で判断します。
※3 対象となる工作物については、ここでは説明を割愛します。

なお、2023年10月1日以降、建築物の事前調査は、必要な知識を有する以下の資格者等に依頼しなければならなくなることが決まっています。
①一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)
②特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)

 こうしたことが判明し、Aさんは解体業者を探し、既に上記資格者のいる会社に依頼して無事解体工事を済ませました。ただ、「もう一年早く空き家の解体を決断していれば、もう少し安くできたかもしれないのが残念」と言っていました。

 さて、ついでながら、2024年4月1日から相続登記の義務化が施行されます。現在はまだ、相続登記に申請義務がなく、相続登記を申請するための期限はありませんが、2024年4月1日以降相続により不動産の所有権を取得した者は、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に不動産の名義変更登記をしなければなりません。
正当な理由なく登記申請をしないでいると、10万円以下の過料の対象となり、遺言などの遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も同様とのことです。

 また、既に2015年2月から施工されたものとして「空き家対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」があります。空き家の老朽化が進み倒壊する恐れがあったり、草木が道路まではみ出している場合は、この法律により「特定空家等」とみなされる可能性があります。
 この認定がなされると自治体は、「助言・指導」⇒「勧告」⇒命令といった措置をとることとなりますが、命令に背くと、50万円以下の罰金が科されます。命令を受けてもなお、所有者が従わず状況の改善がみられない場合は「行政代執行」によって、樹木の伐採・建物の解体・ゴミの撤去などが行われ、その費用は空き家等の所有者が負担することになっています。

 解体工事費が高い、固定資産税も上がるといった「空き家」の処分に踏み切りにくい事情は理解できますが、放置しておいて得になることはほぼ無いと思われます。地元の自治体に「空き家解体の補助」があるケースもまだ多いと思われますので、補助があるうちに処理を検討されてはどうでしょうか。

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官民挙げてコロナ後を目指せ(2022.08.31)

 7月から始まったとされるコロナ禍第7波は、NHKのまとめによれば8月19日に国内の感染者数が260,935人となった後、8月末の今日でもまだ169,800人ほどと長引いております。全数把握見直しについて、国と地方自治体や医師会などでも意見が分かれているようです。屋外ではマスクを外している人を見かけるものの、まだまだ装着している人が大半を占めています。経済全体も沈滞ムードが漂う中、様々な物の値上がりが目立ってきました。

 そんな中、本日の日経新聞朝刊のトップ記事で「勤務地・職務 明示求める」、「厚労省、全社員にジョブ型促す」との見出しがありました。新たに労働契約を結ぶ際や再雇用時に、勤務地や業務内容を将来、どのように変える可能性があるかを明示させ、労働条件を変更した際も書面で通知することの義務化を検討するとのこと。そして、「新たな制度は規模を問わず、すべての企業を対象とする。非正規社員も含む見通しだ」とありました。働き手の意識が変わってきており、一方でデジタル技術の普及で、企業も事業構造の転換が迫られていることが背景にあるとはいうものの、中小・零細企業にとっては、かなりの負担になりそうな気がします。

 もうひとつ、同じ紙面に並んで、「稲盛和夫氏死去」の見出しがあり、大きな喪失感を覚えました。コロナ禍で沈滞ムードが漂うなか、稲盛氏ならどのような打開策を採られるのかを知りたいところでした。
 そうでなくとも日本は世界に先駆けて少子高齢化が進んでいます。

 『日本人の勝算』(デービッド・アトキンソン著)によれば――以下、同書より抜粋引用――、「日本は社会保障のためにGDPを維持する必要があるが、人口減少分を補って経済を縮小させないために、毎年1.29%の生産性向上が必要となる。1990年以降、G7の平均向上率は1.4%なので、日本でも実現可能な数字といえよう。給料が上がらないと日本の生産性は継続的には上がらない。どこまで最低賃金を引き上げるべきかを計算したところ、人口減少下でGDPを維持するためには、2030年で1,399円の水準にすることが必要。
 生産性向上のため最低賃金を引き上げる政策を実施すれば、日本にはそれに十分耐えられる人材はすでにおり、日本人の実力をもってすれば何の問題も生じない。
 日本の労働者の質は世界第4位なのに生産性が第28位なのは、いいものをつくっているのに価格が安いため。結果として所得水準も低い。ここまで人材評価と所得水準が乖離している先進国は日本だけ。ほとんどの国では、人材評価と所得水準は一致しており、相関係数は0.80である。」――引用終わり。

 要約すると、「企業は販売価格を上げ、従業員の賃金を上げ、生産性を高めて人口減少下での経済を維持せよ。日本には人材はいるので、それは可能である。」ということでしょう。
 そこで、稲盛和夫氏に話を戻すと、氏の著書『心を高める経営を伸ばす』の“値決めが経営を左右する”の項で、次のように述べておられます。
 「どれほどの利幅をとったときに、どれだけの量が売れるのかということを予想するのは、非常に難しいのです。この値決めは、経営を大きく左右するだけに、私はトップが行うべきものと考えています。
 そうすると、どの値をとるかということは、トップが持っている哲学に起因してきます。(略)もし値決めによって会社の業績がわるくなるとすれば、それは経営者の器の問題であり、心の問題であり、経営者の持つ貧困な哲学のなせる業だと私は思います。」

 また、賃金(報酬)に関して氏は、著書『アメーバ経営』のなかで、次のように述べておられます。
 「アメーバ経営のなかで、京セラフィロソフィの考え方が色濃く反映されているのが、その報酬制度である。あるアメーバがいくら「時間当り(付加価値)」を高めたとしても、(略)金銭により人の心を操るような報酬制度を京セラはとっていない。(略)
 当社では、京セラの経営理念のもとに、「信じ合える仲間の幸福のために貢献できてこそ、自分たちの部門の存在価値があるのだ」という考え方が根づいている。だから、会社への貢献をみんなから賞賛されることが最高の栄誉であると考えている。このように、アメーバ経営は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する」という経営理念が、制度として具現化された経営システムなのである。」

 引用が多くなってしまいましたが、デービッド・アトキンソン氏や稲盛和夫氏のこれらの著書には、コロナ後に向けて、官民ともに目指すべきヒントが含まれていると感じます。

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消滅しない地域、消滅しない会社(2022.07.30)

 ブランド総合研究所は「第4回地域の持続性調査2022」を実施し、7月27日に概要を発表しました。生活に満足して、幸せだと感じ、地域にも愛着があり、住み続けたいと思う人が多ければ、その地域の持続性は高いといえるとして、地域の持続性に関する4つの指標(幸福度、生活満足度、愛着度、定住意欲度)を数値化するとともに、その平均値を都道府県の「持続度」として算出されました。
出典は→https://news.tiiki.jp/articles/4745 です。
 その結果は、沖縄県が3年連続の1位で、2位には前年(2021年)に3位だった福岡県が入り、前年2位だった北海道は残念ながら7位に落ちております。
 なおこのランキングデータの完全版がDIAMOND online(https://diamond.jp/articles/-/306990?page=2)に載っていました。

 そこで筆者は、三大都市圏である東京都・大阪府・愛知県に京都府を加え、さらに沖縄県と北海道の6地域をあわせてグラフ化してみました。 
地域別持続度グラフ.png

 これを見ると、持続性に関する4つの指標のうち、「生活満足度」はいずれの地域でも低めであることが示されており、次いで「幸福度」も低い傾向が見られます。
 ここで取り上げた6つの地域のなかで、沖縄県については4つの指標とも明らかに他の地域を上回っております。一方、全体的に最も低い値を示したのが東京都でした。
 そんな中、大阪府は「生活満足度」や「幸福度」が北海道を上回っており、大都市だからこれらの値が低いとは必ずしも言えないことがわかります。歴史ある京都府で「愛着度」が低めであるのも意外に感じました。大阪府は比較的健闘しているといえそうです。これらの情報についてDIAMOND onlineでは、「消滅しない」都道府県ランキング(前掲URL参照)と称していました。

 そこで思い起こされるのが「消滅しない会社」ということです。会社の持続性については、財務分析によって評価されることが多いですが、今回のブランド総合研究所の「地域の持続性調査」と似たような手法として「モラールサーベイ(従業員満足度調査)」があります。私どもでは企業様から依頼を受け、BasMosというツールでそうした調査を行っております。
 BasMosでは、「仕事の内容」や「職場での人間関係」についての満足度や「経営理念」の理解浸透度、「評価や処遇」への納得感などを調査します。いわば「職場の健康診断」のようなものです。
 これらの内容は、他のモラールサーベイ・ツールでも行われていると思いますが、BasMosはこれらに加え、同時に「社会人基礎力」も調査できる点が特長として挙げられます。
 「社会人基礎力」については、2007年当時、経済産業省が人材力強化に向けた研究会を立ち上げ、取りまとめた経緯があります。

 コロナ禍で働き方にリモートワークを取り入れた企業も多いと思われますが、従業員の職場に関する満足感がコロナ禍以前から変化している可能性もおおいにあると考えられます。
 皆さんの会社でも、モラールサーベイを行い、職場の意識の実情を確認してみてはいかがでしょうか。

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働かせ方改革(2022.06.30)

 コロナ禍もなんとなく下火になってきた感があります。外出時にはまだマスクをしている人のほうが圧倒的に多いですが、マスクを外して歩いている人もチラホラ見られるようになりました。7月を待たずに梅雨明け宣言が出るなど、30度を超える暑い日が増えたこともあり、マスクをする苦しさがマスクを外すことを後押ししている感もあります。

 そんな中、コロナ禍以前にあった「働き方改革」という言葉を見聞きするようになってきました。また「リスキリング」という言葉を聞く機会も増えております。
 産業のDX(デジタル・フォーメーション)化により、業務のプロセスが大きく変わるなかで、これまでに存在しなかった仕事や課題に対処できる人材育成が必要となってきました。こうした新たな業務に対応するスキルを習得する取組みなどが「リスキリング(re-skilling)と呼ばれているもののようです。

 しかし今回は、それに水を差すような話を取り上げてみたいと思います。つまり新たな業務へ対応するスキルの再開発も大事ですが、もっと基本的なことがおろそかになってやしませんか?というお話です。

 実は先日、こんな話を聞きました。ある中堅企業に勤めているベテラン女子従業員(契約社員)同士の会話です。その職場は、顧客との相談業務をする窓口なのですが、毎年のように人材が入れ替わります。話の内容は、今年4月に入社した新人(身分は同じ契約社員)の勤務態度についてでした。

 その窓口での相談業務には一定の資格が求められており、その新人も資格ホルダーとして先輩社員には負けないという自負があるらしいのです。しかしベテラン先輩からみれば、まだまだスキだらけで、肝心なことをヒアリングできていないとか、実際にはわかっていないのに、わかっているふりをして自分達(先輩)に教えを乞わないのは何故だろうとか、話しているのです。

 「先日なども、教えてあげようとしたのに聞こうとしないので、放っておいた」とか、さんざんその新人の悪口を言ったあげく、「結局、仕事ができてもできなくても、私達と同じ時給なんだから、教えてあげるのも馬鹿らしい!」という話となり、ベテラン先輩同士の協議(?)はお開きとなったのでした。

 この話を聞いて私は、「とてももったいない」と思いました。「もったいない」というのは、その会社にとっても新人社員にとっても、そしてさらには、先輩社員にとっても言えることです。
 会社にとっては、契約社員とはいえ、せっかくスキルを持ったベテラン社員がいるのだから、少しでもスキルや知識を新人社員に伝授させられればいいのに、それができていないということ。そして新人社員にとっては、まさにその逆の立場として、せっかく身近に優秀な先輩がいていくらでも学ぶチャンスがあるのに、活かせていないこと。さらには、先輩社員にとっても、若い社員がどんな考えや価値観をもって働いているのか、知れるチャンスなのに叶わず、もしもそれがわかったら、より有効な心持ちで職場全体の生産性を高めることに貢献できたかもしれないということです。

 しかし実は、程度の差はあれ、このような状況は、もしかしたら多くの会社で起こっていることかもしれないのです。コロナ禍でリモートワークが増えた職場も多いことから、こうしたリアルで伝授し合えるチャンスは逆に減ってしまったようにも思えます。
 この例に挙げた会社では、その現場を担当する管理者はいるようですが、ベテラン社員のスキルや知識を積極的に組織内で活用し合えるような「働かせ方」ができていないとも言えそうです。

 「働き方」に比べ「働かせ方」というのは、どことなくブラック職場的な印象に聞こえる言葉かもしれません。しかし会社側として社員の自主性を尊重するあまり、組織にスキルや知識・ノウハウを蓄積できる「働かせ方」がおろそかになっているとしたら、とても残念なことです。一度真剣にチェック・検討してみる必要がありそうです。

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「分断」の時代(2022.05.31)

  5月も末となり、コロナ禍への対応にも変化が見えてきました。国は来月、海外からの観光客を1日2万人に倍増することになりました。
 NHKの取りまとめによれば、5月31日における1日の感染者数は22,022人(累計8,853,739人)、死者数は39人(累計30,623人)となっていますが、先日など気温が34℃を超えた地域があることから、政府は熱中症対策も考慮し、2mの距離確保や会話が少ない場合、屋外でのマスクは外すことを推奨し始めました。

 ここで改めて、最近の世の中をみて感じることは、コロナ前とはすっかり状況が変わってしまったということです。思い起こせばコロナ禍の直前頃には、「働き方改革」が叫ばれていました。それがコロナ禍により、すっかりどこかへ行ってしまった感があります。
 観光業界はインバウンドの停止、飲食業界はとくにアルコール提供の店において営業自粛要請の影響を強く受け、緊急事態宣言による移動制限、海外ではロックダウン(都市封鎖)が繰り返されました。

 2021年2月からは医療従事者等へのワクチンの先行・優先接種が始まり、4月からは高齢者への接種も開始されました。本日(2022年5月31日)現在の国内ワクチン接種状況は、NHKの取りまとめによると、1回目=103,563,713人(全人口比81.8%)、2回目=102,046,454人(同80.6%)、3回目=74,853,783人(同59.1%)とのことです。

 日本で感染者数のピークを打った今年2月5日(105.590人)から19日後の24日には、ロシアのウクライナ侵攻が始まりました。NATO諸国などからのウクライナへの武器供与が行われていますが、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請に関してはトルコが難色を示すなど、事態は複雑化しています。
 西側諸国を中心にロシアに対する経済制裁も行われ、「新たな冷戦」といった状況にもなりつつあります。
これらと並行して世界のエネルギー価格が上昇し、食料その他物価も高騰し始めました。

 世界各地で暴動も増えているようで、あらゆる場面で「分断」が生じているようです。
これまで多用されてきた言葉に「二極化」がありますが、今はそれよりも「分断」と言ったほうが当てはまるように思います。
 先ほど「新たな冷戦」と述べましたが、かつての「東西冷戦」のように東西両極に分かれるというよりは、表現はあまり良くありませんが、「敵・味方」の「味方」同士であってもケース・バイ・ケースで同一行動にはならない分断が生じているように思います。

 グローバル化の進展によって世界の国々の利害関係が複雑に絡み合うようになったことから、こうした「分断」の時代に入ったのではないかと感じております。イギリスのEUからの離脱は象徴的な出来事でしたし、国同士の話とは違いますが、2020年当時、アメリカでのトランプ大統領再選を巡ってのゴタゴタも分断と言えます。
 これまでの常識が通用せず、いわば「秩序」不在とも言える時代にあって、メタバースといったこともからみ、企業のあり方や個人の生活も見直しを迫られています。

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「脳腸相関」会社組織(2022.04.15)

  DX(デジタルトランスフォーメーション)とか、AI、脳といったキーワードでネット検索していたところ、「脳腸相関」とう言葉を見つけ、思わぬ寄り道をすることになりますが、面白かったので、ここで取り上げることにしました。

 脳は、一般的に、五感で得た情報を分析・判断し体を動かしたり感情をコントロールしていると考えられてきました。ところが近年、腸は脳からの指令で動くだけではなく、自ら判断し、行動する臓器であることが明らかになってきたとのこと。腸の状態が脳に伝わり、伝達の過不足が、喜怒哀楽や好き嫌いといった心の状態・感情にも変化を及ぼすというのです。
 このように脳と腸の間には密接なコミュニケーションがあり、それが過剰だったり不足したりすると、さまざまな疾病の原因になることが分かってきました。そしてこの、脳と腸が情報を交換し合う現象を「脳腸相関」と呼ぶそうです。

 これらのことは、公益財団法人ニッポンドットコムのサイトの『考える「腸」と「脳」:その不思議なメカニズム』という記事(https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c08004/)に書かれてありました。
 同記事ではまた、おおよそ次のようにも述べられています。
生物が誕生した40億年前、最初に現れたのは腸でした。生物の原型にあたる腔腸(こうちょう)動物・ヒドラが口と肛門という構造で、主体は腸であることがそれを物語っています。進化の過程で、腸の周りを神経細胞が取り巻き、やがて脊髄ができ、その先端部が膨らんで脳ができました。米コロンビア大学のマイケル・ガーション教授は、腸を「第2の脳(セカンドブレイン)」と呼んでいるとのことです。

 改めて「脳腸相関」をネット検索したところ、医療法人社団健生会 いそだ病院のサイトに、『連載03 腸は「第2の脳」といわれていますが、「第1の脳」かもしれません』というタイトルのブログが見つかりました(https://www.isoda.or.jp/3132)。
<以下、引用>
 受精卵の外側がくぼみ、その口が閉じ、「腸」が形成され、腸がのびて「口」と「肛門」ができます。さらに栄養をためる「肝臓」ができ、酸素をためる「肺」ができ、そして上の方が膨らみ「脳」ができます。脳は腸の出先機関として進化したのではないか?ということがうかがわれます。
 脳のない生き物はいますが腸のない生き物はいません。クラゲやイソギンチャクは腸はありますが、脳はありません。生き物の進化においても、まず腸ができ、その周りに神経系ができ、脳(中枢神経系)ができるのはその後です。生き物にとって「腸こそ生命の起源」といっても過言ではありません。(中略)

 腸には脳に次いで1億以上の神経細胞があり、これは脊髄や末梢神経系より多く、脳とは独立して自らの判断で機能しています(自律神経といわれるゆえんです)。つまり腸は脳からの信号を待つことなく消化吸収排泄の重要な機能を果たしており、新生児期の脳(無力な脳)でもなんら問題なく腸管機能が保たれていることを考えると妥当なことに思えます。(中略)

 ドーパミン(快感ホルモン)、ノルアドレナリン(ストレスホルモン)、セロトニン(幸せホルモン)は感情(性格)を支配する代表的な脳内神経伝達物質といわれていますが、その多くは腸で作られます。特にドーパミンやノルアドレナリンの暴走をも抑えるセロトニンは腸(腸内細菌との協同作業)で作られ、体内のセロトニンの90%は腸に存在し、腸管の蠕動運動に関与し、多ければ下痢をきたし、少なければ便秘になります。(中略)

 腸には体内の70%という大量の免疫細胞を宿しており、これは腸関連リンパ組織といい、外部からの細菌や食事性の毒物などの侵入を撃退してくれています。私たちは口から摂取するものにどのような菌がいて、体にとって有害かどうかは、見た目や匂いくらいしか判別できず決して脳で識別できないため「食べろ」と指令を出します。
 しかし腸に危険な食物が入ると、腸の神経細胞や免疫細胞が判断し吐き出したり下痢を起こさせます。腸は病気にならないように(生体防御機構といわれます)懸命に(賢明に)働いてくれています。以上のことなどから腸が脳に比べていかに優れた器官であるか、もしかすると腸は「第1の脳」と思ってもらえたかもしれません。
<引用終わり>

 引用が多くて恐縮ですが、脳と腸の関係は会社に置き換えて考えると、社長と中間管理職の関係に似ていると言えないでしょうか?
とくに中小企業においては、社長の指示命令のもと、業務が行われています。しかしその場合でも、ある程度規模が大きくなれば社長はすべてに目が届くわけではなく、要所々々で管理者の判断が求められます。また末端の現場作業では、一般社員も簡単な判断を伴いながら仕事が進められています。
 ここで、中間管理者には社長からの指令で動くだけではなく、自ら判断し、行動する役目があります。そして社長と中間管理者の間には密接なコミュニケーションが求められ、それがうまく行かないと会社運営は不健全となり、業績悪化(病気)の原因となります。

 近年はコロナ禍でリモートワークを求められる場面も増えたことから、これまでとはコミュニケーションのあり方が変化した会社も多いと思われます。
 人体におけるドーパミンやノルアドレナリンの暴走をも抑えるセロトニンは腸(腸内細菌との協同作業)で作られるとのことですが、これになぞらえれば、中間管理職(腸)の重要性を改めて確認できるように思います。この場合、腸内細菌にあたるのは一般社員になるのでしょうか?
 それにしても、会社組織の場合は、社長のいない会社はあるが中間管理職のいない会社はない・・・ということは言えませんね。

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パーパス経営とトライゴンハニカムチャート(2022.03.31)

  新年度を迎えるにあたりどんな話題を取り上げようか思案した結果、「パーパス経営」というキーワードに決めました。
 「パーパス経営」という言葉は、昨年11月ごろから日経新聞等で目につき始め、最新の話題とまでは言えませんが、ずっと気になっていたものです。

 2021年11月29日の日経新聞トップの見出しは「御社の存在意義何ですか」でした。そこでは・・・株式会社が誕生してから約400年。社会を豊かにしてきた会社が岐路に立っている。わが社は何のために世にあるのか。この問いかけに今、世界の多くの会社が直面している。自己資本利益率(ROE)を軸とした株主還元重視の時代を経て、約2100人の富裕層が下位46億人より多くの資産を保有する。社会との分断に危機感を募らせた米経営者団体のビジネス・ラウンドテーブルは19年、「パーパスの再定義」を呼びかけた。・・・等々といった記述がありました。

 また、2021年12月7日の日経新聞10面には、「金融界にパーパス経営」という見出しのもと、パーパスは「存在意義」と訳されることが多い。従来、企業が掲げてきたミッションやビジョンなどが「何を」に焦点を当てることが多いのに対し、パーパスは「なぜ」に注目が集まる。「何を」するかは時によって変わるが、「なぜ」の部分はぶれない軸となりうる。急速に変化する社会の羅針盤としてパーパスが必要とされている・・・と書かれていました。

 これらの記事を読んだ当時私は、企業にパーパスの再定義が求められているということは理解したものの、パーパスが重要といったニュアンスに「何を今更…」といった感覚がありました。
 しかしその後、新型コロナウィルス感染の第6波が押し寄せ、さらにはウクライナ問題が勃発して社会や世界の分断がより大きくなってきました。観光業や飲食業をはじめ多くの業界で企業は、その在り方を模索せざるを得ない事態となっています。

 そこで「パーパス経営」なるものをネット検索してみたところ、一橋ビジネススクール客員教授 名和高司氏へのインタビュー記事(https://www.foresight.ext.hitachi.co.jp/_ct/17469873)が見つかりました。
 その中で名和教授は、「Purposeは“存在意義”と訳されることが多いですが、それでは少し理屈っぽいですし、よそよそしいものに感じます。わたしは“志”と読み替え、パーパス経営を“志本経営”とも呼んでいます。(中略)資本主義の次に期待される未来モデルとしてわたしが提唱するのが、“志”に基づく経営が経済をリードする“志本主義”なのです。」・・・とありました。
 「パーパス」を「志」とする言い回しに、私はとても腑に落ちた思いがしました。

 しかし名和教授は、「(日本では)SDGsの17項目に沿った事業分析をもとにパーパスを設定する企業が多く、同業他社が似たようなパーパスを掲げているケースも数多く見受けられます。そのようなありきたりのきれいごとでは、社員の志に火が着くことはそもそも期待できません。」とし、さらに続けて、「こういった発想段階での問題に加え、ほとんどの企業でできていないのがパーパスを組織に落とし込む作業です。」と指摘されていました。

 ここで私がおススメしたいのが「トライゴンハニカムチャート」を用いた組織内への落とし込み作業です。
 「トライゴンハニカムチャート」は、筆者が名付けたものですが、コンセプトづくりに用いることを提唱してきました。具体的には2017年3月17日の弊トピックス「トライゴンハニカムチャート」によるコンセプトづくり(https://crea-m.net/index.html#%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B946 )をご参照ください。
 少し当てはめ方に工夫が必要かもしれませんが、社内で意見を出し合って「志」を語り合うワークショップに使えるチャートだと思います。

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インボイス制度(2022.02.28)

  2023年10月1日から導入されるインボイス制度とは、買い手が消費税の税額控除を受けるための条件として
   ❶一定の事項が記載された仕入の事実を記録した帳簿と、
   ➋一定の事項が記載された請求書や納品書などの帳票(インボイス)
 これら二つの保存が必要となる制度で、正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。
上記二つは、課税期間の末日の翌日から2ヵ月を経過した日より7年間保存する必要があります。

 売り手にも買い手にもインボイスの保存義務がありますが、請求書のPDFデータをメール等で送受信するといったように電子データで発行・受け取りしたインボイスは紙に印刷して保存しておいても良いため、電子帳簿保存法に対応した方法での保存が必須ではありません。ただデータのままインボイスを保存する場合は、電帳法への対応が必要ですし、将来的にはペーパーレス化(電帳法への対応)が流れと言えます。

 インボイスの様式は法令等で定められてはおらず、一定の事項が記載された書類であれば請求書、領収書、納品書など名称を問わず、手書きであってもインボイスに該当するとのことです。
 ここで、「一定の事項」とは次の6項目をいい、アンダーライン部分が現行の区分記載請求書の記載事項に追加される事項です。
  ❶適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  ➋取引年月日 
  ❸取引内容(軽減税率の対象品目である旨も必要) 
  ❹税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
  ❺税率ごとに区分した消費税額等(端数処理は一インボイスにつき、税率ごとに一回ずつ) 
  ❻インボイスを受取る事業者の氏名又は名称

 売り手にはインボイス(適格請求書等)の発行が求められます。インボイスを発行するには、売り手は「適格請求書発行事業者」として税務署へ登録する必要がありますが、免税事業者は「適格請求書発行事業者」にはなれません。
 買い手が消費税の税額控除を受けるには、インボイス(適格請求書等)を受取る必要がありますので、「適格請求書発行事業者」として登録された売り手から仕入れるか、免税事業者から仕入れる場合は、消費税なしの価格で仕入れることになるはずです。
 このため、免税事業者が売り手として消費税込みの価格で販売・請求したい場合は、まず「課税事業者」となったうえで「適格請求書発行事業者」になる必要があります。

 但しこれには経過措置があり、2021年10月1日~2023年3月31日の間に「適格請求書発行事業者」の登録申請をした免税事業者は、「課税事業者」となる届け出を省略でき、インボイス制度の開始(2023年10月1日)と同時に課税事業者になれることになっています。
 そして、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」をその課税期間中に提出すれば、その課税期間から簡易課税制度を適用することもできます。

 一方、買い手についても、免税事業者からの仕入についての経過措置があります。2023年10月から3年間は、買い手は免税事業者からの仕入につき80%の仕入税額控除を、また2026年10月からさらに3年間、50%の控除が可能となっています。
 売り手である免税事業者は、この最長6年間に「適格請求書発行事業者(課税事業者)」になるかどうかを決めればよいとも言えます。

 買い手は、インボイスを受取ったら、「適格請求書発行事業者」(国税庁のWebサイトで確認できる)の交付であるか、また必要な6項目に不備がないかをチェックする必要があります。不備があった場合、「適格」なインボイスとは認められないため、適格なインボイスの再発行を依頼しなければなりません。

 また、現在「課税事業者」であっても、「適格請求書発行事業者」としての登録申請をする必要があります。既に2021年10月1日から登録受付が開始されており、登録申請書の審査には時間がかかるため、制度導入(2023年10月1日)と同時にインボイス発行できるようになるには、原則として2023年3月31日までに申請書を提出することとされています。
 なお、買い手自身が作成する一定の事項が記載された「仕入明細書等」を保存することにより仕入税額控除を受けることも可能ですが、その「仕入明細書等」の一定の事項である登録番号は、売り手の登録番号であること、そして売り手の確認を受けた「仕入明細書等」に限られます。

 ほかにも、不特定多数の顧客に販売等を行う小売業、飲食店、タクシー業者などの場合は、適格請求書に代えて「適格簡易請求書」を交付できるなど細かな規定がありますので、詳しくは国税庁や日本税理士会連合会などのWebサイトを参照してください。
 また、国税庁の「適格請求書等保存方式の概要」については、こちらからもダウンロード できますのでご利用ください。

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電子帳簿保存法の改正(2022.01.29)

  会計処理に関して大きな変化が動き出しました。本年1月1日施行の電子帳簿保存法改正とインボイス制度の導入(2023年10月)です。今回は前者について紹介します。

 電子帳簿保存法は、本来「紙での保存」が原則であった国税関係の帳簿や書類について「電子データ(電磁的記録)での保存」を特例として認めることで1998年に施行されました。以後2度の改正を経て今回が3度目の改正となりますが、要件が緩和されるものと強化されるものとがあります。
 電子データ(電磁的記録)による保存は
電子帳簿等保存(会計ソフト等で電子的に作成した帳簿等を電子データのまま保存)、➋スキャナ保存(紙で受領作成した書類をスキャナで読み取り画像データとして保存)、❸電子取引(電子メールやネットを介して授受(DVD等の授受も)した取引情報の保存)の三つに区分されています。

 ❶電子帳簿保存に関しては、税務署長の事前承認が不要となったり、最低限の要件を満たす電子帳簿の電子データ(電磁的記録)による保存等が可能になるなどの要件緩和がなされています。
また、➋スキャナ保存に関しても事前承認制度や適正事務処理要件が廃止されたほか、タイムスタンプ要件や検索要件等の一部要件緩和がなされましたが、スキャナ保存に際し隠ぺいや仮装があった場合の罰則強化(重加算税の10%加重措置)が行われています。
❸の電子取引に関しては、出力書面等による保存措置の廃止が2年延期となったものの、2024年1月からは消費税における電子取引情報の出力書面による保存を除き、電子データによる保存が義務化されます。
また電子取引情報の電子データに関する隠ぺい・仮装があった場合は重加算税が10%加重されます。なお、タイムスタンプ要件や検索要件については要件緩和がなされております。

以上、ざっと概要を紹介しただけですので、詳しくは国税庁のホームページや税理士さんなどに確認してください。

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生産性向上の取組と成果(コロナ禍前後)(2021.12.29)

  新型コロナウィルス感染症が我が国で確認されて以来、まもなく丸2年になろうとしています。この間、中小企業はどのような経営課題に取り組み、その成果はどうであったのか?興味深い調査報告書が先月発表されましたので、ここで取り上げることとします。
 以下、『ポストコロナ時代における規模別・業種別に見た中小企業の経営課題に関する調査報告書』(公益財団法人 全国中小企業振興機関協会 2021年11月)からの情報です。
 この調査は、2021年7月12日から8月31日の期間で実施され、全国の中小企業・小規模事業者20,000社へのアンケート調査と、それでは十分に把握することが難しい事項について事業者の「生の声」で補完・深堀りするために、地域や企業規模、業種等をばらつかせた11社(団体)へのオンラインによるヒアリング調査で構成されています。

 詳細は上記報告書をご覧いただきたいと思いますが、ここでは同協会が2015年度に行った前回調査と比較できる調査項目のうち、生産性向上の取組と成果について見てみることとします。
 前回調査と今回調査の間にはコロナ禍が存在することから、生産性向上の取組と成果がコロナ禍によってどのような影響を受けたのか、さらに今後に向けてどう取組むべきかのヒントが得られるのではと考えたからです。

 上記報告書では、生産性向上に取組んでいる企業の割合と成果の出ている企業の割合を前回調査と今回調査とに分けてグラフ化されていました。ただ、前回調査は生産性に関する取組が19項目あったのに対し、今回調査では14項目となっていたため、比較可能な14項目に絞って私どものほうで一つのグラフにまとめたものを下に示しました。

 各項目に取り組んでいる企業の割合を青系統の折れ線で、また、それぞれの項目に対し成果の出ている企業の割合を赤系統の折れ線で表現しています。
 コロナ禍前後で取組が増えた項目や減った項目、また、成果についてもコロナ禍前後で増減など変化が比較的大きかったものについては、黄色と緑色の輪でマークしてあります。
生産性向上の取組と成果(コロナ禍前後比較).png

 この調査結果をもう少しわかりやすくするために、横軸に生産性向上に取り組んでいる企業の割合をとり、成果の出ている企業の割合は縦軸にしてチャート化してみました。
 プロットした丸や三角につけた番号は、上記折れ線グラフの取組事項の番号ですので、取組内容は上記グラフのほうを参照してください。
また、前回調査(2015年)から今回調査(2021年)の間で増減の大きかったものについてはその増減方向を三角形で示してあります。
生産性向上の取組と成果の状況(企業の割合).png

 コロナ禍(下)での調査となった今回の結果が、前回よりも取組企業の割合が大きく減少(三角形が左方向へ伸長)したものとしては、4番の「物品等購入の際には、価格低減策(相見積もり等)を行っている」や、8番の「継続的、具体的な従業員教育に取り組んでいる」があります。そしてこれらはいずれも、成果の出ている企業の割合も減少(三角形が下方向へ伸長)したことがわかります。

 そうした中で、取り組んでいる企業の割合がコロナ禍以前より増え、尚且つ成果の出ている企業の割合も増えているものが二つだけありました。13番の「進捗や課題を、社員間で共有する仕組みづくりに取り組んでいる」と、14番の「日常的に意識して、PDCAを回している」です。
 いずれも左下の象限に属し、回答企業全体のなかでは少ない割合ではありますが、13番については、コロナ禍でリモートワークに工夫を凝らしたことなどが含まれているのかもしれません。

 このチャートは、プロット位置や三角形などのサイズが厳密ではなく、ざっくりとわかることを目指して私どもが作成しました。厳密な成果率などについては情報の出典である冒頭で述べた調査報告書をご確認ください。

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ポストコロナ時代に向けて(2021.11.09)

  2年近くにわたって「コロナ漬けの日々」とも言える状況が続きましたが、ワクチン接種が進んだこともあり、ようやく経済も動き出したように見えます。
 首相官邸サイトの「新型コロナワクチンについて」のページによれば、これまでの総接種回数は192,610,138回(令和3年11月9日公表)で、うち2回接種完了者は93,762,791回(接種率74.0%)とのことです。
 しかし、コロナ禍はまだ完全に終息したとは言えず、今後の展開が見通せないものの、ある程度落ち着きを取り戻した今、この約2年間はどのような流れであったのか、ポストコロナ時代を考えるためにも、少し整理してみようと思い立ちました。
 毎日の感染者数のグラフ化では横長になりすぎ、かと言って月単位では少し荒くなるため、ひと月のデータを前半と後半に分けて集計し、グラフ化してみました。わが国においては、2020年1月15日に新型コロナウィルスの感染第1例目が見つかり、それ以降、毎日、感染者数の把握がなされていますので、'20年1月後半からの半月単位がおさまりが良かったからでもあります。
PCRコロナ禍の推移.jpg

 このグラフには、感染者数(棒グラフ)のほかに、PCR検査の人数も折れ線グラフで示しました。死者数も載せたかったのですが、桁数が大きく異なるため、表現しきれず諦めました。
巷では「第6波」について議論されていますが、このグラフの続きがどのようなものになるのか、様々な条件を想定しながら経済を動かして行かねばなりません。

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事業再構築補助金(2021.02.27)

  令和2年度第3次補正予算で、1兆1485億円が計上された「事業再構築補助金」が間もなく公募開始となります。
 この補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すために新設されました。
 補助率や要件が中小企業か中堅企業かで異なりますので、以下、「中小企業」を対象とし 
た主な申請要件について述べます。
1.申請直近6ヵ月間のうち、任意の3ヵ月(非連続も可)の合計売上高が、2019年又は
  2020年1~3月の同3ヵ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。
2.公募要領等で示される「事業再構築指針」に沿った「新分野展開」、「業態転換」、「事
  業・業種転換」等を行なうこと。
3.事業再構築に係る「事業計画」を「認定経営革新等支援機関」(※1)と策定すること。
  その事業計画は、補助事業終了後3~5年で付加価値額(営業利益+人件費+減価償却
  費)が年率平均3%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額が年率平均3%以上増
  加を見込むものであること。
4.申請は全て電子申請となるため、「GビズIDプライムアカウント」(※2)が必要。
  また、上記1~3の要件は、全て満たす必要があります。

※1 認定経営革新等支援機関としては、ほとんどの金融機関や多くの会計事務所のほか、
  中小企業診断士等が登録されています。ネットで「経営革新等支援機関認定一覧」を
  検索してください。

※2 GビズIDプライムアカウントは、gBizIDのサイト(https://gbiz-id.go.jp/top/)か
  ら取得手続きをしてください。尚、これには2~3週間かかるようですので、まだの
  企業さんはお早目に。

【募集枠及び補助率など】
中小企業を対象とした募集枠は次の3つです。
1.通常枠 :   補助額100万円~6,000万円、 補助率2/3
2.卒業枠(※3): 補助額6,000万円超~1億円、 補助率2/3
3.緊急事態宣言特別枠(※4): 補助金額・従業員数により100万円~1,500万円を補
  助率3/4として募集。

※3 卒業枠は、事業計画期間内に「組織再編」、「新規設備投資」、「グローバル展開」の
  いずれかで、資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向
  けで400社限定募集となる。正当な理由なく中堅企業へ成長できなかった場合、補助
  金の一部返還が必要となる予定。

※4 緊急事態宣言特別枠は、通常枠の要件を満たし、かつ、緊急事態宣言により飲食店
  の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等で影響を受け、令和3年1~3月のいずれ
  かの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少し、早期の事業再構築
  が必要な中小企業等が対象。要件に合致すれば、地域や業種は問わない。
   審査では加点措置を講じるほか、この「特別枠」で不採択となっても、加点の上「通
  常枠」で再審査されることとなっている。

   以上は、中小企業に関して述べたが、中堅企業(定義は公募要領等で示される予定)  
  については、別の募集枠や補助額・補助率等が設定されています。補助対象となる経
  費等も含め、詳しくは、間もなく公表される「募集要領」をご確認ください。

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差別化から差異化(2021.01.31)

 新年もひと月目が今日で終わりです。今月は何を書こうか色々と考えてしまいました。コロナ禍は、昨年1月6日に中国・武漢市から帰国した神奈川県の30代男性が、1月15日に新型コロナウイルス陽性と確認(一例目)されてから1年が過ぎました。
 その後、昨年7月下旬から8月上旬にかけての第2波があり、第3波はこの1月7日に東京で新たに2,447人(全国7,567人)の感染、8日に東京で2,392人(全国7,882人)、9日に東京で2,268人(全国7,785人)と、3日連続で東京は2千人台、全国は7,000人台を記録したのち、ようやく本日(31日)東京は633人、全国で2,673人と下降傾向がハッキリしてきた感がありますが、医療体制のひっ迫はまだ続いております。
 こうした中、2月7日に期限を迎える緊急事態宣言を延長するかどうかが議論され始めました。

 2020年は、まる一年間、コロナ禍で翻弄され、東京オリンピック・パラリンピックも今年に延期されていますが、開催の有無がまだハッキリしません。
 経済情勢もリモートワークによるPCや通信機器関係、マスクや消毒薬・衛生サービス関係、巣篭り需要による食品スーパーやデリバリーサービス、ゲームコンテンツなど、一部好調な業界はあるものの、総じて業績悪化が大きく、これから廃業・倒産・失業者の増加が本格化しそうです。

 昨年12月のトピックスでは、コロナ禍が収束しても経済社会のありようは元には戻らず、企業(組織)や個人は物理的にも心理的にも「脱皮」が求められていると書きました。
 問題はそれをどのように捉え、具体的に実践していくかですが、事業内容等によっても対応しやすい業界、しにくい業界があると思います。
 たとえばリアル店舗を営んでいたとしても、今後も別な感染症の発生・流行はありうるわけで、ネット販売の強化にシフトしたり、デリバリーの強化をはかるといったことは多くの業界で進められてくるでしょう。

 しかしその場合でも、作っているモノや売っているモノが他社と同じでは、やはり猛烈な競争に晒されることは想像できます。 そこには当然、なんらかの「差別化」できる要素が必要となってきます。ここでフト疑問がわきました。「差別化」でよいのか?と。
 ネットが発達したおかげで便利になった反面、瞬時に情報は伝わり、グローバルな競争もますます激化してきました。地域密着でやってきていた小規模事業といえども影響は受けざるを得ません。企業体力がない分、「差別化」をはかるにも限度があります。

 他と差別化することをどのように「設計」するかということについて、一昨年『コンセプトづくりのフレームワーク』という本を書きました。
 「コンセプト」という言葉は、わりと見聞きすることが多いものの、それがどういうもので、どのように作ればよいのか?については、明快に説明されているケースは皆無といってもいい状況でした。私どもはその本のなかで、コンセプトの定義を「他と差別化しうる提供価値を、それを実現できる裏付けのもとに一言で主張したもの」としました。そしてそれをつくるためのフレームワークも提案しました。これはなかなか良くできたフレームワークであると自負しております。

 しかし、今振り返ってみると、そこで使っているのは「差別化」ということばです。私はこれを「差異化」とするほうがよいと感じております。
 実はその本の最後のほうには、「差異化」についても少しだけふれてはありました。詳細はその本に譲るとして、ここで言いたいのは、コロナ後の時代はもはや「差別化」でも足りないのではないか、「差異化」を真剣に考えるべきではないか?ということです。

 たとえて言えば、「差別化」は足し算・引き算の世界で、「差異化」は掛け算・割り算の世界のように思います。前者と後者とでは、計算(実践)結果の開きはたぶん後者のほうが大きくなります。つまり「差別化」よりも「差異化」のほうが効果的ということです。
 「差別化」は、どちらかと言えば量的なものであり、資金力など経営資源が豊富な企業が追い付くのは時間の問題であり、比較的簡単に模倣されます。
 しかし、「差異化」ということで質的になんらかの違いを打ち出すことができれば、容易に模倣されにくく、その効果は比較的持続します。但しその分、「差異化」を考え出し、具現化するのはより難しいことです。

 そうではあっても、「差別化」がとくに量的拡大の要素の強いものであれば尚更、地球環境の持続可能性の点からも見直す必要性があることではないかと思うようになりました。
 近年、Diversity(多様性)というキーワードが取り上げられることが増えたように思います。社会のあり方もそうですが、人間一人ひとりにとっても多様な価値観が顕在化し、尊重されることが求められています。
 そうした変化に合わせ、商品やサービスのあり方も「差」というよりは「違い(異)」ということに目を向けて、他とは「差のある商品・サービス」というよりも、「他とは比較されにくい“違い”をもった商品・サービス」を提供することに知恵を絞る時代がきているのではないかと思うのです。

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脱皮できない蛇は滅びる (2020.12.13)

 今回のタイトルは、ドイツの哲学者フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche, 1844年~1900年)の言葉です。
 2日前の日めくりカレンダーに書かれていたのに気づき、思うところあって取り上げました。それは、私どもがお手伝いのテーマとしている「経営革新」を別な言葉で表現されていると感じたからです。

 「脱皮」とは、『精選版 日本国語大辞典』によれば、
① 動物が成長の途中で、体表の最外層にある皮を脱ぎすてること。昆虫や甲殻(こうかく)類では外表面に堅いクチクラがあり、それが成長の妨げになると脱ぎすて、下に新しい皮をつくる。脊椎動物では両生類・爬虫(はちゅう)類にみられ、特にヘビでは顕著。
② 旧習を打破して新しい方法を採用すること。古い考えや、以前の段階から脱け出して進歩すること。・・・とのことです。

 ついでに「新陳代謝」についても上記同辞典で調べると、
① (━する) 古いものが次第になくなって、新しいものがそれと入れ代わること。
② 生体内で、必要な生活物質が摂取され、不用物は排泄(はいせつ)される作用。物質代謝。物質交代。代謝。・・・とありました。

 以上より、「脱皮」は、広い意味では「新陳代謝」の一種ととらえることができるのだろうと思います。
 ここで言いたかったことは、私どもがお手伝いのテーマとしている「経営革新」は、今回のタイトルの「脱皮」に相当するだろうということです。これに対して「経営改善」は、「新陳代謝」のようなものです。そして「蛇」は、「企業」ということになります。

 ところで昨日(12月12日)は、新型コロナウィルスの1日の感染者数が全国で初めて3000名を超えました(21時30分時点で3,041人)。
東京都では621人と、12月10日の602人を上回り最多となっています。(神奈川県223人、埼玉県199人、千葉県121人、大阪府429人、兵庫県137人、愛知県206人、北海道189人、福岡県86人)

 政府が「勝負の3週間」として11月25日に集中的な取組みを訴えてから2週間余りが過ぎても、全国の感染拡大には歯止めがかかっていません。医療体制が逼迫した北海道旭川市には自衛隊の看護師などが災害派遣として10名、8日夜に現地入りしています。
 また大阪府でも陸上自衛隊の看護師ら7人が15日から活動を始める予定です。いずれもおよそ2週間とのことです。

 これに先立ち、11月24日以降12月15日までに出発する札幌市または大阪市を目的地とする旅行について、Go Toトラベル事業の利用を停止。11月27日以降は、発着ともに停止されました。東京都においても、65歳以上の高齢者及び基礎疾患を持っている方の東京都発着の旅行について、12月3日から17日までの間、Go To トラベル事業の利用自粛要請が出されております。

 ここへ来て医療関係者などからは、感染拡大が続いている地域などについてGo To トラベル事業の一時的中止を求める声もあり、国としては協議はしているようですが、まだ決断には至っておりません。

 12日に過去最多の3309人/日が死亡(米ジョンズ・ホプキンス大学発表)したアメリカなどとは比較になりませんが、日本での第3波は感染が続いており、思いのほか収束までには時間がかかりそうです。
 イギリスでは12月8日から米ファイザー社と独ビオンテック社の共同開発ワクチンの接種が始まりましたが、一部の人に副作用が生じたとのニュースもあり、不安が残ります。
 こうしたことから、コロナ禍が収束しても経済活動や社会生活はコロナ前とはかなり異なった状況が常態化するとの見方が増えてきました。

 話を戻しますが、私たちはまさに「脱皮」を迫られているといっても過言ではないと思います。
 今回のタイトルの言葉をもう少し調べてみました。ニーチェ全集(氷上英廣訳、白水社)によれば、第9巻『曙光』(Morgenröthe)の第573篇「脱皮する」が出所です。
 そこには、「脱皮することができない蛇はほろびる。見解を変えることを妨げられた精神たちも同様である。彼らは精神たるを止める」とありました。

 今回のタイトルと微妙に違うのは、訳者の表現の違いということでしょう。「・・・蛇はほろびる」に続いて「精神」についても述べられていますが、形のあるものも無いものも、継続するには「変化」が必要だということでしょう。
私達も、コロナ後の世の中の変化に対して、自らもどう変化していくかが問われています。

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バランスシート経営を (2020.11.30)

 今月半ば頃から、新型コロナウィルスの感染者が急増し、重症者も増え、医療体制の崩壊が危惧され始めました。感染防止活動と経済維持活動のバランスのとり方が極めて難しくなっております。
 国や地方自治体が様々なコロナ対策を打ち出していますが、企業も生き残りをかけ必死です。企業が生き残って(存続して)いくためには、資金が必要です。もちろん利益は必要ですが、たとえ赤字であっても、使える資金があれば企業は存続できます。

 本稿のタイトルを「バランスシート経営」としましたが、これはあまり馴染みのない言葉かもしれません。おそらく、ひところ話題となった「キャッシュフロー経営」のほうがよく知られていると思います。
 「バランスシート経営」とは「キャッシュフロー経営」とほぼ同じです。敢えて「バランスシート経営」と述べたのは、「キャッシュフロー経営」と書くと「資金繰り」のイメージが強くなりそうと考えたからです。

 企業の経済活動を数字でとりまとめ報告するものとして、財務三表が挙げられます。いわゆる決算書の中核をなす財務諸表で、具体的には貸借対照表(バランスシート:B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/S)を指します。

 これらのうち中小企業の経営者に最も馴染みがあるのは、損益計算書です。いくら儲かったか、赤字だったかは、わかりやすい話だからです。
 キャッシュフロー計算書については、中小企業の場合、上場企業などのように作成が義務化(2000年3月決算より)されてはいないため、おそらく貸借対照表(バランスシート)のほうが馴染みがあると思われます。(このことも、本稿のタイトルを「キャッシュフロー経営」としなかった理由に含まれます。)

 しかし中小企業経営者では多くの場合、損益計算書は見ても、バランスシートを意識して見ることは少ないようです。
 ここに企業存続の落とし穴があります。損益計算書には、資金の有無は示されていないからです。損益計算書が黒字であっても、資金があるとは限りません。こうして「黒字倒産」が起こります。

 ましてや目下、コロナ禍の真っ最中であり、黒字の確保もままならない状況が多いと思います。当然、資金繰りにクギ付けになっている経営者も多いでしょう。

「キャッシュフロー経営」と言われても、自社でキャッシュフロー計算書が作られていなければ、見ることもありません。しかしどんな中小企業であっても、バランスシート(貸借対照表)は作られているはずですので、その気があれば見ることはできます。

 バランスシートには、経営に必要なお金(資金)がどのように調達され、それを使った(運用)結果がどのような形で残っているかが示されています。
 できるだけ、現金や預金といった「すぐに使えるお金」の形で残っていると、企業が生き残り易いのは誰にでもわかることです。

 この「すぐに使えるお金」が少ない場合、在庫や売掛金、あるいは過大な設備等の形となっている部分が多いか、借りたお金の返済に充てなければならない部分が大きいはずです。
 「バランスシート経営」とは、こうした貸借対照表の中身のバランスをうまくとりながら経営しましょうということです。
「資金繰り」とは少しニュアンスが異なることが感じられたでしょうか?

 貸借対照表は、企業の財政状態の残高(=結果)を一覧にした表です。先ほど「中身のバランスをうまくとりながら…」と述べましたが、これは結果ではなく将来に向かって意識しなければできないことです。
 したがって、「バランスシート経営」とは、将来のバランスシート(少なくとも1年後)をどのような形にするかを考え(計画)ながら、経営するということです。明日や今月末の「資金繰り」をどうするかを考えるのとは少し違います。

 私どもでは、十年以上前から、未来の目標バランスシート作りを計画するセミナーを開催してきました。これにご参加いただいた企業様では、このコロナ禍でもあわてずに経営の舵取りができているようです。

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最小複合商業施設 (2020.10.31)

  コロナ禍のなか、経済や雇用の下支えのための需要喚起策として、Gotoキャンペーンが展開されています。7月下旬に始まったGotoトラベルのほか、GotoイートやGotoイベント、Goto商店街も今月になってスタートしています。
 巷の商店街はどうなっているのか、改めてブラついてみました。札幌で、古くからある狸小路商店街は、昨年までインバウンド客でにぎやかでしたが、今年春以降、パッタリと途絶え、ゴールデンウィークなどはどこの街のことかと思うほどひっそりとしていたものです。
 それがここへきて、5割程度は人通りが回復しているかな・・・と感じる状況になっていました。しかし、実際に商店街のお店での買い物となると、店による格差も大きく、全体としても人通りの回復ほどにはなっていないと思われます。

 一方、市の中心部から少し離れた円山地域にも出かけてみました。人通りはそれほどでもないのですが、面白い店が色々できているのに気づきました。フルーツサンドの専門店や、あんみつの専門店、お刺身の専門店までありました。いずれも今年3月以降にオープンしたそうで、テイクアウトに力を入れていました。
 これらはいずれも専門店で小さなお店が多かったのですが、その真逆をやっている店を見つけました。
 交差点の角にある小さな建物なのですが、入り口を見ても何のお店か分からず、入ってみてびっくり。小さな窓からは衣料品が見えてはいたのですが、中には雑貨のほか食品も少しあります。店員さんに訊くと、2階は美容室になっており、この店の店主は美容師とのこと。

 ちょうどその時、2階から美容サービスを受け終えたお客様と店主が降りてきました。お客様をお見送りされたあと、店主に少し話を伺いました。
すると、地下フロアもあり、そこはギャラリーにしているとのこと。そして「やっと自分の思うような店の構成になってきた」と言うのです。ご本人曰く、「日本最小の複合商業施設」なのだとか。
 これはご自分で発案したものだそうで、普通のコンサルタントには出せないアイデアだと驚いた次第です。こんな時、中小企業診断士としての疑問がつい湧いてきます。それを察したのか店主は、「あまりもうからないけどね。」と仰いました。しかし、コロナ後は、こうした店が案外生き残るのかもしれません。

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デジタル庁とIT革命 (2020.09.19)

  2020年9月16日、約7年8ヵ月に及んだ安倍晋三前首相の持病悪化による辞任を受けて、菅義偉新内閣が発足しました。
 その目玉政策と言われているのが、「デジタル庁」の新設です。これを担うのが、平井卓也デジタル改革担当大臣となりました。

 企業経営の世界では、よくヒト、モノ、カネ、情報ということが言われます。これらを総称して経営資源とも言われますが、企業はこれらの資源を活用しながら事業経営を行っているわけです。これは、国や地方公共団体ほか様々な組織においても、同様に当てはめることができます。
 国においては、国会議員や各省庁の官僚といった「ヒト」がいて、法律や政策をつくりそれを遂行することによって「モノ」(ハコモノのほか行政サービスを含む)ができ、そのモノを活用することによって政策運営が行われます。それを行なうにはカネが必要となりますが、そのほかに情報を集め議論し発信することもしなければなりません。

 わが国の国際競争力の低下が指摘されて久しいですが、高齢化・人口減少とあいまって国全体(とくに流通業・サービス業)の生産性向上が叫ばれてきました。そのための重要なポイントとなるのが「情報」なのだろうと思います。つまりわが国の国際競争力の低下は、高度情報化の部分が目詰まりすることによって生じていたと考えられます。
 しかしわが国は、これまでに情報を重視してこなかったわけではないと思います。2000年には「IT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)」ができ、5年以内に世界最先端のIT国家を目指すとされました。

 その少し前から、「IT革命」という言葉も流行りました。これについては、「なぜ“革命”というのだろう?」と考えた記憶があります。「“革命”とは、被支配者階級が支配者階級に替わって権力を握り、社会構造を根本的に覆すこと」なわけです。このように、ある種「物騒な」意味をもつ“革命”ということばを用いるからには、世の中が覆るほどの状況が生まれることを示唆したいのだろうと考えたものでした。

 そしてほどなく、それに近い事件(?)が起こりました。購入した家電製品の修理を依頼した男性が、修理状況にクレームをつけたできごとです。クレームへの対応がまずく、その家電メーカーの副社長が99年7月に謝罪会見を開く事態となりました。男性は、メーカーの対応への不満を自分のホームページ上に公開し、大メーカーが謝罪に追い込まれたわけです。少し前なら、裁判でも起こさない限りありえない事態だったと思います。
 これをみて自分なりに考え、出した答えは、「IT“革命”の本質とは、一般大衆が情報発信により主導権を持つことにある」というものでした。

 しかしその後の状況をみていると、なかなかそのようには進展してこなかったように思います。確かに、ブログを書いて情報発信する人はいましたが、まだ一部の人に限られていました。そのうちにYahoo!やGoogleといった検索サービスが進化し、情報収集はかなり便利になりました。またNTTドコモが携帯電話でメールの送受信やWebサイトを閲覧できる「iモード」を開発・提供し、他社も追随しましたが、やがてスマートフォンが台頭してきました。こうした流れにあっても、情報発信というよりは、むしろ検索をしたり閲覧したりといった「受信」としての使い方が大勢を占めていたのではないかと思うのです。
 最近になってようやく、自ら制作した動画を配信する“ユーチューバ―”といわれる人達や、自前のECサイトで情報商材を販売する人、メルカリ等のフリマアプリで遊休品を売買する人、クラウドファンディングで資金調達する人などが目立つようになり、「IT“革命”」と言ってもいいような状況になってきたかなと感じているところです。

 話を戻しますが、「IT基本法」をつくり世界最先端のIT国家を目指したものの、国のシステムは各省庁がそれぞれに仕様の異なるシステム導入をするなど、全体が最適化されるような進め方ではありませんでした。つまり情報やデータの「デジタル化」はしたものの、「つながらない」状況が残ったために、結局は活用されず、旧来のアナログな方法が使われ続けてきたのです。こうした情報流通の目詰まりが、わが国の国際競争力の低下を招いた一因と言っても過言ではないと思います。

 菅新政権のもと、法整備を図り、「デジタル庁」が発足することにより、ようやくIT国家の司令塔として機能することが期待されます。しかしほんとうの意味でIT先進国となるには、情報流通のデジタル化だけでは足りません。それらと同時に、デジタル機器リテラシー(活用する能力:literacy)や情報リテラシーに関する教育も強化しなければなりません。そして、サイバーセキュリティに関するリテラシーも求められます。
これらが伴って初めて、真の意味での「IT革命」が実現するのではないかと思います。

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ステークホルダー資本主義 (2020.08.15)

  8月9日の日経新聞に、「新型コロナウィルスの世界的な流行は、ステークホルダー資本主義を加速させている」とありました。仏食品大手ダノン社の会長兼CEOエマニュエル・ファベール氏へのインタビュー記事での、氏の発言です。
 同記事によれば、フランスは2019年に新法を制定し、利益以外の目標を達成する責任を負う「使命を果たす会社(Entreprise à Mission)」を新たな会社形態に取り入れた。そして上場企業でその第1号となったのがダノン社とのことです。
 KSM社のネット情報(https://ksm.fr/archives/528992)によれば、ダノン社の2018年の売上高は246億5000万ユーロで、営業利益は35億6000万ユーロとのこと。日本ではミネラルウォーターの「エビアン」や「ボルヴィック」といった製品が知られています。

 再度、日経新聞の記事を引用させていただくと、ファベール氏は「ビジネスは現金で始まり現金で終わるとみる今の経済モデルは間違えている。近代経済は金融資本で語る癖があるが、人的資本や自然資本も経済活動に活用している。それらを資本と捉え、お返ししないといけないという概念が乏しい。(中略)企業が破綻するのも資金が尽きるからではない。リーダーがエコシステム(生態系)への自信をなくすからだ。ビジネスは人で始まり、人で終わる」そして、目指す会社像は「サーブ・ライフ(生命に尽くす)だ。(中略)まず自然があり、経済を回すときには中心にお金ではなく人間がいる。製品を作るには植物や土、水などの自然が必要だ。ここに製品を買ってくれる消費者のほか、製品を作る人、運ぶ人、販売する人がいる。すべての生命を支え、尽くす会社になる」と述べられました。

 さらに、「過去6ヵ月で最も注力したのは、コロナで都市封鎖の指示が出ても、国境を越えて必要な食品が届くようにする仕組み作りだ。(中略)事業を展開する120ヵ国以上のうち売上高の99%を占める70の国ではすべて地元で調達し、消費する体制にしてきた」とのことです。

 また同記事の下のほうには、次のような記述もありました。仏の「使命を果たす会社」と似たような法律は、“株主至上主義”が最も色濃い米国の各州にあり、「ベネフィット・コーポレーション」と呼ばれているとのこと。7月に上場した米オンライン住宅保険のレモネード社の目論見書には、「利益が最大化しない行動をとる可能性がある」と記されており、余った保険の掛け金を顧客が指定する慈善団体に寄付するのだそうです。

 要するに、株主中心の資本主義からそれ以外のステークホルダー(利害関係者)にも目を向けた経営を重視する方向に舵が切られたということだと思います。これはコロナ禍が猛威をふるい始めたから出てきた話ではないことは、本稿冒頭の「・・・加速させている」で示されています。
 単に利益追求が目的ではなく、ゴーイングコンサーン(going concern:継続事業)であることを企業が目指すならば、当然ながら持続可能な経営が求められます。しかし資本主義がグローバルに展開されるにつれて、地球環境に大きな負荷をかける結果となったほか、経済格差も拡大し、貧困や飢餓といった問題も顕著となりました。これでは企業経営の持続可能性も危ういと言わざるを得ません。

 こうしたことから、2015年9月の国連総会では、2030年に向けた国際的な開発目標=SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が採択されました。
 またその9年前の2006年には、国連のコフィー・アナン事務総長(当時)が「責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)」を金融業界に対して提唱しました。これは、機関投資家にESG(Environment、Social、Governance)課題という概念を用いて、環境、社会、ガバナンスの3つの観点から投資判断することを求めたものです。
 持続可能な開発目標(SDGs)も責任投資原則(PRI、ESG投資)も、法的拘束力がなく企業にとっては任意の取り組み対象です。

 しかしこれらについては、グローバル企業や各国の大手企業、機関投資家等の参加が増え続けており、コロナ禍の世界的蔓延とあいまって、「ステークホルダー資本主義」が加速しているのでしょう。
 企業活動だけではなく、人々の価値観や行動も大きな転機を迎えていると言えそうです。

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もう一つの変化 (2020.07.31)

  新型コロナウィルス感染症は6月下旬から兆候が出始めていたのですが、7月半ば以降、本格的に第2波の拡大が始まったと思われます。東京で一日に366人(7/23)、大阪でも221人(7/29)と過去最大の陽性者が確認され脅威に感じていたところ、本日(7/31)には、東京で一気に463人の感染が判明しました。
 厚生労働省HPによれば、8月1日0:00現在の国内感染者は35,836例で、うち空港検疫583例、チャーター便帰国者15例とのこと。また、死者数は1,011例で、うち空港検疫で1例でした。なお、クルーズ船での人数は含まれていません。
 ちなみに日本時間7月31日15:00における各国の感染者数は、米国4,494,601人(死者152,055人)、ブラジル2,610,102人(91,263人)、印1,634,746人(35,718人)、英303,910人(46,084人)、伊247,158人(35,132人)、独209,535人(9,144人)、仏185,280人(30,238人)、中国84,292人(4,634人)、豪16,903人(196人)、韓14,305人(301人)。

 こうした状況から、経済がコロナ禍前の水準に戻るには2年程度、業界によっては3年はかかるとの論調が目立ち始めています。
 とくに旅館・ホテル・温泉等の観光関連とこれに伴う飛行機や列車といった交通機関、更には飲食業関係への影響が大きいです。また劇場や映画館、コンサート会場のほか、アパレル関係も厳しく、小中高、大学といった教育関係者のスケジュールも大幅に支障をきたしています。東京2020を目指して鍛えてきたオリンピックアスリートやその会場関係者も、先行きが見通せない状況が続いています。

 接触や密を避ける日常活動が定着しつつあり、キャッシュレス決済やオンライン会議を駆使したテレワークも常態化しそうです。
 この変化は、ここ半年間ほどの間に、一気に世界的に巻き起こった出来事でした。そろそろ本格的に顕在化してくるであろう世界経済の落ち込みは、想像を絶するものになる可能性が強いです。

 そうした中、先日、ある経営者の憤慨話を聞かされました。その経営者は、このコロナ禍で廃業や倒産が増え始めたなか、将来有望と思われるビジネスを見つけ、別会社をつくって新規事業として始めることにしました。そこで一つの現実を確認させられたと言います。
それは、新会社設立に際し、実印を作り印鑑登録をすることです。折しもコロナ禍でテレワークが普及しつつあり、「ハンコを押すのに出社するのはやめよう」、「印鑑文化も廃止してはどうか」といった声が強まりつつあった矢先だったからです。「しかしまぁ、会社設立にあたり実印登録は当面必要だろう」と思ったようですが、問題はその後の出来事でした。

 会社設立登記が終わり、銀行口座を開設しに行ったのですが、すぐにはできないのです。色々と調査があるらしく、1週間ほどかかるとのこと。「昔は、即日、口座開設できたのに・・・」と考えて待っていたのですが、3日ほど経った頃、1通の郵便物が件の銀行から届きました。開けてみると、保険勧誘のDMでした。「いまどきの銀行は、客の要請を満たすより早く、こうした売り込みには熱心なんだ~」と思ったと言います。
 それだけでは終わりませんでした。新規事業立ち上げにあたり、ある程度自己資金はあるものの、設備投資や人材採用の予定もあるので、口座開設後に件の銀行に融資を申し込みに行きました。金額にもよるだろうが、通常は自己資金の2倍程度は借りられるはずと思い、それなりに検討した事業計画を携えて融資窓口へ行ってまたびっくり。「その額は難しいかもしれない」と言われたとのこと。自己資金は1000万円、融資希望は2000万円弱でしたが、新会社による新規事業は「実績がない」ので・・・とのこと。しかも申し込んだ融資は、保証協会の100%保証付きの資金でした。

 銀行の見立てはともかく、保証協会に話を通してもらうこととし、その日は戻ってきました。そして10日ほど経った頃、件の銀行から電話があり、「やはり保証協会からは難色を示された。ご希望の半分以下の額くらいなら可能性はありそうだが、保証協会の保証がつかないのであれば、当行のプロパー資金での対応なども無理」とのこと。
 この銀行の対応には、その社長もさすがに頭にきた。「100%保証付きでないと一切融資できないとは何事か!銀行はまったくリスクをとる気はないのか!昔、事業の目利きをし、リスクをとりつつ産業や企業を育てようとしたバンカー魂はどこに行ったのだ!」と憤慨しきりでした。
 世界的なコロナ禍により、廃業や倒産が増え、失業者も増えつつある中、少しでも雇用をつくり経済を盛り立てようとする動きに対し、このような対応はどこか変だ。「口座開設に時間がかかる話といい、融資申し込みへの対応といい、世の中こんなにも変化しているのかと、愕然とした。」とのことでした。

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コロナ後に向けて (2020.06.29)

  新型コロナウィルス感染症対策としての外出自粛要請等の解除をうけて、6月に入り、ソロソロと日常生活や経済活動が動き出しておりました。これまでの流れを整理したうえで、今後に向けての話題に触れたいと思います。

 4月7日に初めて、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が7都道府県に出され、4月16日には、5月6日までを目途にその対象を全国に拡大しておりました。そして5月4日には、緊急事態宣言を5月末まで延長することとされていました。
 その後、感染拡大が収まりを見せてきたことと、経済へのダメージを考慮する必要もあり、5月14日には、13の特定警戒都道府県のうち茨城、石川、岐阜、愛知、福岡の5県を含む39の県について、緊急事態宣言が解除されました。残りの特定警戒都道府県=北海道、千葉、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫については、引き続き5月末まで緊急事態宣言を維持することとされていましたが、実際には5月25日に全て解除されております。

 この間に、外出自粛対策として各業界では「テレワーク」や「デリバリー営業」への取り組みのほか、「キャッシュレス決済」などが、やや強制的に普及することとなりました。
 一方で、政府が推進した全世帯へのマスク配布や持続化給付金の業務処理には数々の問題が発生し、国全体のIT化の遅れなどが露呈しております。

 しかしながら4月~5月と約2ヵ月にわたる特措法にもとづく自粛要請をうけて、企業や個人も新たな行動様式への対応が定着し始めた部分も認識されつつあります。
 ここへ来て感染拡大の第2波が懸念される事象も見受けられたり、新型コロナウィルスに効くワクチンがまだ実用化されてはいないものの、「コロナ後」に向けての企業等のあり方についても様々な「声」が出始めております。

 ここで私共なりに触れておきたいのは、やはり想像力を豊かに思い切った革新を断行すべきということです。異常気象もそうですが、世界経済や国際情勢をみると、明らかにこれまでの繰り返しとは異なる事態となっています。これまでの延長線上での改善レベルでは対応しきれない状況であることは、多くの方が感じているはずです。

 しかし、想像力を豊かに革新を発想せよと言われても、どう考えてよいかわからないと思われるかもしれません。すぐに思い浮かぶのは、これまでとは違った様々な分野の方の意見を聞くことでしょう。幸いにも現代は、ネット上に情報が溢れております。玉石混交ですが、それは数多く色々な角度から比較検討すれば、ある程度判断ができるでしょう。この判断力を養うところから始める必要があるかもしれません。

 イメージからメッセージを感得するという点では、SF(Science Fiction)映画を観るのも良いと思います。ただ、密を避けるという点では映画館は難しい場合もあるかもしれませんが、DVDのレンタル等も利用できます。
 もちろん、SF小説もありです。更にいうなら、日経新聞が創設した「星新一賞」は、電子書籍として読めるSF短編小説といえます。現在、第8回の作品募集中ですが、第7回までの受賞作を無料でダウンロードできますので、それを読まれるのも良いと思います。

 ちなみに第7回(今年4月発表?)の受賞作の中では、一般部門のグランプリとなった「森で」よりも、優秀賞だった「テツノオトシゴ」のほうが私は面白いと感じました。「森で」は、緑化ウィルスによる緑のパンデミックといった、まるでコロナウィルスを想起させるようなテーマに近いものの、緑化ワクチンにより光合成の能力を人体に付加することにより水と日光があれば生きられるといったような内容で、その発想力には驚かされました。「テツノオトシゴ」のほうは、宇宙塵に紛れて地球に飛来した菌糸のようなものが地上で増殖し金属柱に変体した生物にかかわるお話です。

 このほかでは、ジュニア部門の優秀賞の1つ、「何かやり残し保険」もコンパクトにまとまった面白い作品でした。ジュニア部門でも、個人的にはグランプリ作品よりも優秀賞となったほうに惹かれましたが、このあたりは優劣というよりも「好み」の問題のように感じます。この印象をさらに推し進めると、これからの時代は機能の優劣もさることながら、これまで以上に「好み」が重視されて、商品やサービスが選ばれる時代となるような気がします。

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(北海道)休業協力・感染リスク低減支援金の電子申請スタート (2020.05.14)

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、道では、令和2 年4月17日に「『新型コロナウイルス感染症』の感染拡大防止のための『北海道』における緊急事態措置」(以下、「緊急事態措置」といいます。)を決定し、事業者の皆様には、休業等や感染リスクを低減する自主的な取組の実施をお願いされました。
この要請に応じて、休業等にご協力された事業者の皆様には「休業協力・感染リスク低減支援金」が支給されます。
郵送による支給申請は4月30日から受付を開始しておりますが、5月15日13時から電子申請がスタートするとのことです。
また、電話による問い合わせ先が5月15日(金)の8時45分から、変更になります。
詳しくは、http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/csk/sienkin.htmをご覧ください。

<以下、引用 (上記URLの一部内容のみ)
■ 対象施設・支給額等

20200514 youken shikyugaku.png

・ 新型コロナウイルス感染症に係る休業要請等の対象施設一覧は次のとおりです。
※ご注意! 下記PDFを印刷する際は、65%程度に縮小しないとA4に収まりません。

基本的に休止を要請する施設、 基本的に休業要請を行わない施設(PDF)

・ 北海道内で対象施設を管理する法人(中小企業に限らず、大企業等も含まれます。)又は個人事業者が申請者となります。
・ 道内に対象施設があれば、道外に本社がある法人であっても支給対象となります。

・ 複数の施設を管理している事業者は、全ての対象施設で取組を行うことが必要です。
・ 令和2年4月24日時点で、対象施設に関して必要な許認可等を取得の上、対象施設を管理している事業者が対象です。

・ 1つの施設内に、休業等を要請する施設と要請しない施設が併設され、明確に区分されている場合、休業等要請の対象となる施設を休業等した場合は、支給対象となります。

・ 休業要請の対象施設において、複数の個人事業者が1つの施設で営業しているケースで、施設を休業した場合は、代表者に1事業者分を支給します。

・ 出張サービスを専門とする事業者は、客等が利用する施設が特定できない場合は、施設の感染防止対策に主体的に携わることができないため、支給対象外となります。

・ 従来から酒類を提供していない飲食店及び、従来から通常19時以降に営業を行っていない飲食店は、支援金の対象となりません。

※ 詳細については、
「休業協力・感染リスク低減支援金」申請の手引き【申請受付要項】(PDF)をご参照ください。

※ 個々のケースが対象となるか、ならないかについては、北海道公式ホームページの
「休業要請等について」の「休業要請等についてのよくあるお問い合わせ」 をご参照ください。


【参考】市の支援金制度
 次の市では道の支援金制度に独自の上乗せと対象拡大を行っておりますので、事業者の皆様は、そちらの制度もご覧ください。
 【各市の休業等支援金についてはこちら】(それぞれの市名をクリックしてください)

札幌市帯広市苫小牧市旭川市釧路市函館市

※「酒類の提供がない飲食店(感染防止対策を実施)」以外で休業等要請の対象となる施設を運営する事業者の皆様につきましては、申請書を道に提出してください。
「酒類の提供がない飲食店(感染防止対策を実施)」を運営する事業者の皆様は、市に申請してください。

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新型コロナ対策 専門家派遣(北海道) (2020.05.01)

 北海道では、新型コロナウイルス感染症により、経営に影響を受けている中小企業・小規模企業の皆さまを対象として、無料で専門家を派遣する事業を開始しました。
 資金繰り、雇用環境、助成金・給付金など、各々の課題に応じ、中小企業診断士、弁護士、公認会計士、税理士、行政書士、店舗コンサル、社会保険労務士等を2回程度派遣するものです。
詳しくは下記をご覧いただき、お申込みください。

新型コロナウイルス感染症対策 専門家派遣 特設サイト

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新型コロナウィルス特集 (2020.04.26)

 残念ながら、新型コロナウィルス収束の見通しがまだ見えません。25日夜8時半現在の国内の感染者数は12,907人、死者は358人、退院患者数2,645人とのことです。ほかにクルーズ船(ダイヤモンド・プリンセス)での感染者721人と死者13人などがおります。(日経新聞2020.04.26より)。
 中国の湖北省武漢市当局の説明では、原因不明の肺炎患者が最初に見つかったのは昨年12月8日とのことですが、昨年11月17日に感染者が確認されていたとの報道(香港・サウスチャイナ・モーニングポスト紙)もあります(朝日新聞デジタル2020.03.13)。
 いずれにせよ、わずか約3カ月で、感染者は114の国・地域の計約11万8千人、死者4291人(3月11日現在)にまで広がり、世界保健機関(WHO)は3月11日、世界的な流行を意味する「パンデミック」と認定しました(朝日新聞デジタル2020.03.12)。
 日本では、1月6日に武漢市から帰国した神奈川県の30代男性が1月15日に新型コロナウイルス陽性と確認(一例目)されました(厚生労働省)。
 この重大トピックスを今後の参考とするため、以下、時系列に概要を記載しておこうと思います。

 クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスは1月20日に横浜港を出発しました。そして1月25日に香港で下船した80歳の香港人男性が新型コロナウィルスに感染していたことが2月1日に判明。同船はベトナム、沖縄などを回り2月3日に横浜港へ帰港したが、日本政府は乗員乗客の下船を認めず、全員の健康診断(検疫)を実施。
 2月5日、検査結果から10名のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)陽性者を確認。
 ダイヤモンド・プリンセスは2004年に三菱重工長崎造船所で建造(2014年改装)され、全長約290m、総トン数115,875 トンで、英国P&O社が所有し、運航会社は米国のプリンセス・クルーズ社、船長はイタリア人。
 横浜帰港時は乗客2,666人、乗員1,045人の計3,711人を乗せていた。このうち約半分は日本人で、ほかは55の国と地域の人達であった。船籍、運航会社、寄港地の国が違うなか、検疫や乗客の行動等のコントロールを誰が主導すべきか法的にも明確ではない部分があり、対応は錯綜した。
 2月17日、米国からのチャーター機がクルーズ船の米国人乗客を乗せ羽田を出発したほか、豪・香港・加・英・伊・台湾などもチャーター機を派遣し、全員の下船が終了したのは3月1日であった。(国立感染症研究所のサイト記事などより)

 次に、クルーズ船以外のこれまでの推移は、以下のとおり。なお、国内での感染者数等は、報道媒体により微妙に差があるため、厚生労働省のWebサイトの報道発表資料を参照しました。
1月29日 朝、政府チャーター機第1便で湖北省武漢より206人が帰国(外務省HP)。
1月30日 朝、政府チャーター機第2便で湖北省武漢より210人が帰国(外務省HP)。
1月31日 朝、政府チャーター機第3便で湖北省武漢より149人が帰国(外務省HP)。
2月07日 朝、政府チャーター機第4便で湖北省武漢などより198人が帰国。
      初めて中国籍77名、台湾籍2名が含まれていた(外務省HP、jiji.com)。
2月17日 朝、政府チャーター機第5便で湖北省武漢などより65人が帰国。
       うち29名は中国籍者(外務省HP、jiji.com)。
2月25日 厚生労働省に「クラスター対策チーム」発足
2月26日 政府、大規模イベントの自粛を要請。
2月28日 北海道、鈴木知事、法に基づかない緊急事態宣言(外出自粛要請)。
3月05日 政府、4月に予定されていた習近平国家主席の国賓来日を延期すると発表。
3月09日 0時より中国・韓国からの入国を制限(14日間の宿泊施設等での待機を要請)。
3月13日 改正新型インフルエンザ対策特別措置法が成立(期間は最長2年間)。
3月18日 中国、湖北省武漢市で新たな感染者が初めてゼロになったと発表。
3月20日 国内感染者1,000人超す(厚生労働省HPより)。
     (1,007人。うち空港検疫2名、無症状者9名含む。  死者35名。)
    ・日本時間12:00における各国の状況
      中国80,967人(死者3,248人)、韓8,652人(94人)、豪681人(6人)、
      米14,250人(176人)、英3,269人(144人)、伊41,035人(3,405人)、
      独10,999人(20人)、仏10,995人(372人)
3月21日 0時より英・仏・独・伊・エジプト・イラン等38ヵ国からの入国を制限(14日間の
      待機要請)(4月末まで)。
3月23日 米国からの入国を制限(14日間の待機要請)(4月末まで)。
3月24日 東京五輪・パラリンピックを2021年夏に延期決定。
3月26日 改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく政府対策本部を設置。
3月27日 英国、ジョンソン首相が新型コロナウィルスに感染。
3月29日 志村けんさんが新型コロナウィルス感染症により死去(70歳)。
3月31日 国内感染者2,000人超す。
     (2,178人。うち空港検疫18名、無症状者35名。 死者57名。厚生労働省HP)
4月04日 国内感染者3,000人超す。
     (3,191人。うち無症状者278名含む。 死者70名。厚生労働省HP)
    ・日本時間12:00における各国の状況
      中国81,639人(死者3,326人)、韓10,156人(177人)、豪5,454人(28人)
      米275,586人(7,087)、英38,168人(3,605)、伊119,827人(14,681人)、
      独91,159人(1,275)、仏64,338人(6,507)
4月07日 国内感染者4,000人超す。
     (4,168人。うち無症状者306名含む。 死者81名。厚生労働省HP)
     ・東京・埼玉・千葉・神奈川・大阪・兵庫・福岡に法に基づく緊急事態宣言(5/6まで)。
     ・緊急経済対策として、売上半減した中小企業に最大200万円、個人事業主に
      最大100万円の「持続化給付金」を予算化へ。
4月09日 国内感染者5,000人超す。
     (5,246人。うち無症状者363名含む。 死者88名。厚生労働省HP)
    ・日本時間12:00における各国の状況
      中国81,865人(死者3,335人)、韓10,423人(204人)、豪6,010人(45人)
      米430,376人(14,768)、英60,773人(7,097)、伊139,422人(17,669人)、
      独113,296人(2,349)、仏82,048人(10,869)
4月11日 国内感染者6,000人超す。
     (6,616人。うち無症状者420名含む。 死者98名。厚生労働省HP)
4月12日 国内感染者7,000人超す。
     (7,123人。うち無症状者444名含む。 死者102名。厚生労働省HP)
4月15日 国内感染者8,000人超す。
     (8,442人。うち無症状者513名含む。 死者136名。厚生労働省HP)
     ・東京都医師会など、都内約20ヵ所にPCR検査所を設置すると発表。
     ・厚生労働省、自治体へドライブスルー方式でのPCR検査容認を事務連絡。
4月16日 国内感染者9,000人超す。
     (9,027人。うち無症状者539名含む。 死者148名。厚生労働省HP)
     ・緊急事態宣言を全国に拡大(5月6日まで)。
     ・国民1人あたり10万円の給付決定(減収世帯へ30万円/世帯の給付は撤回)
4月18日 国内感染者10,000人超す。
     (10,219人。うち無症状者588名含む。 死者161名。厚生労働省HP)
    ・日本時間12:00における各国の状況
      中国82,719人(死者4,632人)、韓10,653人(232人)、豪6,522人(63人)
      米699,105人(36,727)、英108,692人(14,576)、伊172,434人(22,745人)、
      独140,886人(4,326)、仏109,252人(18,681)
4月21日 国内感染者11,000人超す。
     (11,350人。うち無症状者660名含む。 死者277名。厚生労働省HP)
4月23日 国内感染者12,000人超す。死者も300人超え。
     (12,240人。うち無症状者703名含む。 死者317名。厚生労働省HP)
     ・日本赤十字社、献血血液の一部を使いコロナウィルスの「抗体検査キット」 
      の評価を開始。(mainichi.jp、2020.04.24より)
4月25日 国内感染者13,000人超す。
     (13,031人。うち無症状者802名含む。 死者348名。厚生労働省HP)
    ・日本時間12:00における各国の状況
      中国82,816人(死者4,632人)、韓10,718人(240人)、豪6,667人(76人)
      米890,524人(51,017)、英143,464人(19,506)、伊192,994人(25,969人)、
      独154,545人(5,723)、仏122,577人(22,245人)。

 4月7日に初めて、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が7都府県に出されました。2月25日には厚生労働省に「クラスター対策チーム」が発足していたわけですが、テレビその他の情報によっても、緊急事態宣言までの国の対応には今一つしっくりこないものが感じられました。法に基づく緊急事態宣言であっても、外出自粛や移動制限は強制できず、罰則もなく、あくまでも要請しかできないとのこと。「国民の命と健康を守る」と言う一方で「社会的・経済活動へのダメージも極力避けたい」と言います。
 「人との接触を8割減らせ」ということは、テレワークが可能な職場はともかく、一般の中小・零細企業や個人事業主にとっては「仕事を休め」「閉店せよ」ということであり、実際、具体的に業種名を指定して休業を要請されたところもありますが、それへの協力に対する補償も明確とは言えない状況にあります。

 一般国民はどう考え行動すればよいのか? その答えと思われるものがありました。
4月11日に放映されたNHKスペシャル「新型コロナウイルス瀬戸際の攻防~感染拡大阻止最前線からの報告」です。
 この番組では、「クラスター対策チーム」の押谷仁教授(東北大:2003年のSARS流行時、WHOで封じ込めの陣頭指揮を執った)と西浦博教授(北大:数理モデルによる感染症対策の専門家)の苦悩を明かしながら、いかにして日本独自のコロナウィルス対策が導き出されてきたかが語られていました。
 まず日本においては、中国などで行われたような都市封鎖(ロックダウン)を行なうことは極めて難しいこと。次に、韓国やシンガポールなどのような徹底したPCR検査についても、その体制(設備・人材の絶対数)が十分ではなく、難しかったことが述べられていました。
 このため、日本独自の新型コロナウィルス対策として、その戦略目標を「基本再生産数」を1未満に抑える対策を見つけ出すことにおいたとのことです。そこで、中国・武漢からの帰国者でコロナウィルス感染者110人を徹底的に解析しました。
 するとその8割は誰にも感染させておらず、残り2割のうち半分以上の人も1人にしか感染させていなかった。ところが3人だけ、それぞれ一人から4人、9人、12人と複数に感染させている状況が判明した。
 こうしてクラスター(感染者集団)の存在が浮かび上がったわけだが、このように感染の広がるケースと広がらないケースがある理由が年齢・性別・病気の有無など、患者の特性を調べても手掛かりが不明であった。
 しかし調べていくうちに、大規模なクラスターが発生していたのは、飲食店やスポーツジムなど、密閉された閉鎖空間という共通点があり、人ではなく環境要因が大である可能性が高いと思われた。閉鎖空間における会話での飛沫によるウィルス拡散は、そうではない環境よりも感染が18.7倍起こりやすいことも判明。
 こうして、密閉・密集・密接を避ければ「再生産数<1」が実現できると考え、「3密が重なる場所を徹底して避けよう」というスローガンができたといいます。
 番組の中で西浦教授は、「日本人に対する鉄壁の信頼があった」と述べておられます。リスクをしっかりコミュニケーションして、皆で長期間持続可能な行動をしてもらうことができれば、大規模流行を起こさずに済むと考えたようです。


しかし実際には、筆者には、そのコミュニケーションが十分ではなかった印象があります。また、「3密が重なる場所を避けよう」というスローガンについても、「重ならなければ大丈夫」と逆に解釈して行動する人がいたように思います。

 さて「3密」に着目し、クラスターを見つけ監視下におき、感染連鎖を断ち切ることを目指すなかで、孤発例(感染経路不明な感染者)の存在が浮かび上がってきました。これは、背後に未知のクラスターが潜んでいる可能性を意味しています。放置すると、2~3日で感染者が倍増する「オーバーシュート」を引き起こすおそれがありました。
 3月19日、国の専門家会議では、東京での感染者急増が止まらないため、東京都にも「人々の行動を変える強い措置をとるべき」との助言がなされました。3月25日、東京都は週末の外出自粛を初めて呼びかけました。
 ところで、多くの孤発例が生れる場所として、接客を伴う夜間営業の飲食店が考えられ、感染者の3割が関係していると推定されました。しかし夜間営業の飲食店やその利用者に対し、保健所の聴き取りは難航。語ってもらえず、情報収集はしづらい。夜の街のクラスターを潰すにはどういうアプローチがいいのか・・・医療崩壊してしまうと一気にパニックになる。クラスター対策チームは悩みました。
 3月28日、東京の再生産数は1.5になっていました。3月30日、東京都の記者会見に西浦教授も出席し、カラオケ・ライブハウス・バー・ナイトクラブ等の出入り自粛を呼びかけました。4月7日、東京都の再生産数は1.7に上がりました。
 欧米に比べ「数理モデル」が感染症対策に十分に活かされてこなかった日本。
西浦教授は、「人との接触を2割減らす程度ではオーバーシュートは防げない。8割減らし、10日~14日後に新たな感染者数がピークを迎え、その後急減させられる」といいます。

 この「8割」という目標に対し、「7割ではダメなのか?」といった疑問が起こるかもしれません。事実、安倍総理も「7割から8割減らし・・・」と語っていたのを筆者もTVで見ました。これに対して西浦教授は、「自分は7割とは言っていない。政治家が言ったこと…」と後日指摘されていました。
 ここがポイントだと思います。数理モデルの専門家が緻密な計算をして8割と言ったら「8割」なのです。よく100%絶対というのはありえないといわれますが、それはシミュレーションにおいても同様でしょう。しかし、専門家であれば、おそらく95%の確率で正しいであろうとの基準をもとに「8割」と言ったのだろうと筆者は思います。

 西浦教授は、「今までの生活が戻ってくるという保証は、1年以内にはありません。但し、ものすごく自粛しないといけない生活がず~っと続くかというとそうでもないです。社会経済活動が停止しない範囲で、でも一方で、二次感染が起こるハイリスクな環境、とくに屋内環境を避ける手段を皆で可能な限り考えた上でクラスター対策の第2弾みたいなものを感染者が減ったところでスタートする。それができれば、うまくこの流行と付き合いながらゴールが見えてくると思っています」と述べておられました。

 未知のウィルスであり、いつ終息するのか見通せない。対処法にほとんど答はないように思われていますが、実は答えはありました。「人との接触を8割減らす」ことなのです。8割という具体的な答えが示されています
 ワクチンもないため、とにかく感染を広げないようにするくらいしか手はないのですから「接触を8割減らす」ことが難しいとか言っている場合ではなく、「どうやったら8割減らせるか」皆で考え実行するしかないのです
 国はもっと強力に、この専門家が出した答えを国民や企業に向かって打ち出すべきです。
 答えはあるのに、そのことが正しく伝わっていない現実、また、知らされても実行しようとしない現実、このことこそが問題です。それをしっかりと伝えきれているとはいえないマスコミにも問題があるかもしれません。

 押谷教授が、「都市の封鎖→再開→封鎖を繰返していくと、世界中が経済も社会も破綻します。次々と憧れていたような企業は潰れ、若者は将来に希望を持てなくなる。中高年は安らぐ憩いの場が長期間にわたって失われる。その先は、もう闇の中しかない。その状態を作っちゃいけない。」と番組のなかで仰っていたのが印象的でした。
 また押谷教授は次のようにも述べられました。「このウィルスを克服するカギは“地域力”だと思っています。医師会、医療機関、自治体、一般の人達が連携して取り組んでいる地域では、早期にウィルスを収束させる可能性が出てきています。但し、自治体の連携に時間がかかるとか、国からの指示がないと動けないとかいうようなことを言っていると、時間が浪費され、手遅れになる可能性がある。平時の考え方をいち早く脱却して、この未知のウィルスに立ち向かっていくことが必要です」と。

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ものづくり補助金が変わった!(公募開始)(2020.03.11)

 昨夕17時に、令和元年度補正「ものづくり補助金」の公募が開始されました。今回は「一般型」(補助金額100万円~1000万円、補助率1/2(小規模・個人は2/3))のみで、「グローバル展開型」や「ビジネスモデル構築型」は後日の公募となる予定です。

今回より、大きく変わった点がいくつかあります。
1.通年で公募
  今回の1次公募は3月31日締切ですが、その後5月頃に2次公募、8月頃に3次公募、11月頃に4次公募、来年(R3年)2月頃に5次公募(変更の可能性あり)が予定されています。

2.事業実施期間が倍増
  これまでは事業実施期間が5ヵ月間程度で、2次公募などの場合、年度末の3月までとなると、実質2ヵ月間位しかない状況でした。
 今回からは、事業実施期間が交付決定日から10ヵ月以内(但し、採択発表日から12ヵ月後の日まで)となり、通年公募とあいまって補助事業に取り組みやすくなったといえます。

3.「gBizID(GビズID)」による電子申請
  これまでは紙(+CD)での応募が主流でしたが、今回より電子申請となりました。 このため、応募するには予め「gBizID(GビズID)」を取得しておく必要があります。
  尚このIDには、法人や個人事業主の場合、3種類のアカウント種別があり、その違いは下表のようになっております。
  ものづくり補助金の申請には、「gBizIDプライム」アカウントが必要ですが、その取得には2週間程度かかりますので、早めに利用登録をしてください。
 「gBizID」の登録は→ こちらから

gBizID.png

4.賃上げ要件の追加
  これまでも「賃上げ」は「加点項目」となってはいましたが、今回より給与支給総額(全従業員+役員の給与等(福利厚生費・退職金は除く))を年率平均1.5%以上増加させることと、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすることが必須となりました。未達の場合は、補助金の返還規程も定められています。

5.中古設備も対象に
  補助対象経費にはこれまで同様、「機械装置」や試作のための「原材料費」などがありますが、機械設備については一定の条件のもと、中古設備も対象になりました。

6.新型コロナウイルスの影響へも対応
  目下、収束の見通しが不明な新型コロナウイルスの影響が広がっています。補助事業の実施にも影響がありそうですが、賃上げ等の申請要件の緩和や事前着手を可能とするなどの対応がとられるようです。(ものづくり補助金サポートセンターに要確認)

 ほかにもこまかな変更点がありますので、公募要領の概要版は、 ここで ダウンロードしてご覧ください。

また、公募要領(一般型)の「一次締切分」については、今後微修正される可能性もありますので、全国中小企業団体中央会のサイト↓でご確認ください。

全国中央会ものづくり補助金サイト

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ものづくりニッポンの弱点(2020.02.23)

 今月に入って俄かに顕在化し、いまだに収束の見通しがつかないトピックスが、新型コロナウィルスの問題です。この三週間強、毎日のトップニュースはこの話題の連続でした。 
 この間、わが国の対応には、どこかぎこちなさを感じざるを得ません。こんなにも、こうした面の危機管理ができていなかったのか!という思いがします。
 今月初めころのアナウンスは、「致死率がそれほど高くないので、過度に怖れることはない」といった論調だったと記憶しています。しかし「死ななければ、感染が広がってもあまり心配することはない」といったニュアンスには、この問題をどこか甘く見ていたフシが感じられます。日本全体としてはそうであっても、一企業や一個人にとっては、自分や周囲が感染した場合、死ぬことはなくても事業や仕事に支障が出るわけです。感染症であることが、一企業だけ、一個人だけで済む問題ではないという点を、十分認識できていなかったのではないかと思うのです。

 ここでもう一つ、似たような問題があることに思い至りました。それはコンピューターウィルスなど、サイバーセキュリティ対応についてです。この分野についても、わが国は全体として認識が低く、極めて脆弱な状況にあるのではないかと感じています。
 コロナウィルスもコンピューターウィルスも、感染します。そして、肉眼では見ることができないものであると言えます。
 わが国はこれまで、どちらかといえば「ものづくり」に強い国と言われて来ました。それは、「目に見えるもの」には強いといった見方ができるのではないかと思うのです。一方の感染症やサイバー攻撃など、「目に見えないもの」に対しては、驚くほど脆弱であると考えるのは、言い過ぎでしょうか。

 今日の日経新聞に、「感染症専門の司令塔なく」との見出しがありました。このことばはそっくり、「サイバーセキュリティ専門の司令塔なく」と言い換えることが出来そうです。
 本日のトピックスは、自分自身への自戒も込めて、いま迫っている大きな危機(とくに目に見えにくい危機)に、想像力を働かせて立ち向かう必要性を訴えたいと思い、ここに記しました。

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経営革新から「供給革新」へ(2020.01.13)

 一昨年の12月の本欄で「2019年は経営革新力が問われる」と述べました。当サイトも「経営革新」をメインテーマとして、各種情報を掲載させていただいてきましたが、新年を迎え、これまで述べてきた「経営革新」を一歩深め、「供給革新」を提唱してみたいと思います。
 国による「経営革新」の定義は、「事業者が“新事業活動”を行うことにより、その経営の相当程度の向上(年率3%以上の付加価値向上など)を図ることをいう」とされ、「新事業活動」とは、“新商品の開発又は生産”、“新役務の開発又は提供”、“商品の新たな生産又は販売の方式の導入”、“役務の新たな提供の方式の導入”その他の新たな事業活動をいう」とされております (中小企業等経営強化法(2018年に中小企業新事業活動促進法を改正・施行))。

 ここで、敢えて「経営革新」から「供給革新」へと言い回しを変える理由を述べます。年明け早々の新聞報道などを見るにつけ、資本主義経済のありようが変わってきたといった論調が強いことに気づきました。経済が需要と供給で成り立っていることからすれば、中小企業経営の立場としては、需要の変化を捉え、供給をどう変えていくのか?が問われていると言えます。

 大量生産・大量消費による成長は終焉を告げ、今、若者はモノを持たない生活を選び始めています。 <以下引用>― デジタルを使いこなし、モノの所有欲が乏しいミレニアルが存在感を増すほど消費がしぼみ、成長は停滞するのか。米ミニマリストの草分け、ジョシュア・ベッカー氏は、「ミニマリストも欲望の総量は変わらない」と言い切る。欲望の矛先が変わったのだという。―<引用終わり:日経新聞2020.01.09より>
 この状況に加え、とくに日本では少子高齢化・人手不足が言われ、この4月からはいよいよ中小企業においても「働き方改革」が迫られています。
 一方では、IoTや5Gといった技術革新による生活の変化やAIにより仕事が奪われる(?)といった懸念が示されています。

 つまり、消費(需要)のかたちが大きく変わりつつあるわけですから、供給のかたち・内容も大きく変えて行く必要があるはずだということです。そこで「供給革新」を考えるべきと述べたわけです。
 上記「経営革新」における「新事業活動」の定義には、「生産の方式」なども含まれていますので、これをもっと絞り、「供給の内容」や「供給の方式」を革新するよう意識することにより、新たな取り組みのヒントになるのではないかと思った次第です。
 自らDisruption(創造的破壊)に取り組んで行かないと、これからの構造的変革の時代を乗り越えることは難しいでしょう。

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なりすましメール対策(2019.12.01)

 昨日(11/30)の日経新聞に、「なりすましメール拡散、ウイルス国内本格上陸」との見出しで、コンピューターウイルスEmotet(エモテット)の被害が日本でも広がり始めたとの記事がありました。
 その記事にあったJPCERTコーディネーションセンターという団体を筆者は知らなかったのですが、<以下、部分的に引用>――「JPCERTコーディネーションセンターのサイト(JPCERT/CC)は、(中略)特定の政府機関や企業からは独立した中立の組織として、日本における情報セキュリティ対策活動の向上に積極的に取り組んでいます。――とのことでした。
 同サイトによれば、マルウエア Emotet の感染活動は、――「感染先から窃取した連絡帳やメール認証情報を使い、実際にやり取りしたメール本文を引用した添付ファイル付きの攻撃メールを送信」<引用おわり>――するのだそうです。
 取引先と実際にやりとりしたメール本文をもとに添付ファイルを送られたなら、受け取ったほうは、ほぼ100%添付ファイルを開くでしょう。

 セキュリテイ対策を啓蒙しているサイトには、不審なメールかどうか、「送信元アドレスを確認せよ」とか、「添付ファイルを安易に開くな」と書かれていますが、最近の巧妙な手口を見分けるのは極めて難しくなっていると思います。
 取引口座のある銀行などからも注意喚起のメールが来ますが、そもそもそのメール自体がホンモノかどうか見極めるのもホネが折れると感じています。
 プロバイダーが提供しているフィルター機能で、「迷惑メール」等をブロックする方法もありますが、実際に使ってみると、やはり限界があります。
 筆者の場合は、特殊なソフトを使い、メールを見る前に、サーバーに届いたメール内容を確認する方法をとっています。そして、明らかに怪しかったり、そもそも見なくても良い「売り込み」メールなどは、サーバーにある段階で削除することにしています。

 それでも、本物かどうか分からないケースがあり、それが銀行などからのものであれば、別途こちらからその銀行のサイトを見に行って、ほんとうに今受けたメールと同じ注意喚起をその銀行でしているのかどうかを確認するようにしています。
 また、そうした注意喚起をする情報がネット上で広がっていないか、検索をかけます。すると、たいていの場合は、「同様のメールが届いたが、それはフィッシングメールなので注意せよ」といった情報が見つかるケースが多いので、それで判断するようにしています。
 フィッシングについては、フィッシング対策協議会 https://www.antiphishing.jp/ のサイトも参考になります。

 さらに踏み込んだ対策としては、ウイルス等に感染してもよいPCを用意し、一旦そのPCでメールを受けるという方法も考えられます。
 そのPCには、データは何も入れておかないようにします。アドレス帳はもちろんのこと、メール本文も読んだら削除(ゴミ箱も)して、万が一感染しても、引用されたり持って行かれる情報がない状況にするということです。
 メールを見たとたんに感染してもいいように、先にネットから遮断した状態にしてからメールソフトを起動しなければなりません。
 そのPCが「身代金ウイルス」等に感染した場合、「乗っ取られた状態」になりますので、PC全体をフォーマットしなおし、基本的なソフトもインストールしなおす、場合によってはそのPCは諦めて捨てる(?)ことになるかもしれませんが、そうなってもよいPCを用意し運用するといった対策です。極めて使い勝手の悪い方法とは思いますが、そこまでせざるを得ない時代がくるかもしれません。

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「成長支援制度」 (2019.11.26)

 「成長支援制度」という言葉を聞かれたことはあるでしょうか?おそらく、聞いたことがない人がほとんどではないかと思います。これは、実は私(野﨑)が名付けた「人事評価制度」の別名です。 
 1994年6月より、約180名ほどの食品製造業の会社で運用開始していただいた制度です。その制度を策定するお手伝いをした際に、その会社の雰囲気を考えると、どうも「評価」という言葉が上から目線な印象があり、評価される立場の人に抵抗感が生じるのではないかと思いました。そこで、なんとか会社側も従業員側も、気持ちよく制度を運用できるようにしたいと考え、名付けたものでした。
 基本的に会社側の意向に沿って従業員を「評価」することにはなるのですが、その底に流れている心情は、「従業員の皆さんの成長を願って、それを支援し、その成長の状況を確認する制度なんですよ」ということを分かってもらいたかったからでした。従って、通常は「人事評価シート」を使うところを、「成長確認シート」と名付けたシートで評価を行なうように作りました。
 この話題を取り上げたのは、先日、まったく同じ「成長支援制度」と名付けた「人事評価」を実施している会社を知ったからです。そして今日、その会社(札幌市内)を訪問し、社長さんに色々とお話を聞かせて頂きました。

 素晴らしい経営をされていました! その社長さんは二代目の方でしたが、「社員の成長が無ければ我が社の発展はない」と仰っていました。まったくその通りだと思います。そして私がお手伝いした25年前のものより、はるかに優れた仕組みを導入されていました。
 単に上司が部下の成長を支援するというだけではなく、同僚同士も互いの成長を助け合う、そしてそれが会社の業績にどのようなプラスをもたらすかをも考え、そのことを事前に各自が目標設定して取組み、結果を互いに評価・フィードバックし、次回はさらに高みを目指すという運用を進められていました。
 言葉としてはこのように説明できても、実際にこれを運用するのはそう簡単なことではありません。やってみればわかります。現場の隅々まで、かなり高い実践能力が備わっていないと実現できない事です。この会社は強いです。このこと自体が、一種のコア・コンピタンスを形成しているとみることができるでしょう。実際に、会社の業績も良いようです。今後の発展が楽しみな会社の1つです。

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経営デザインシート (2019.10.31)

 3日前(10月28日)の日経新聞に「内閣府の“経営デザインシート”」なる見出しを見つけました。―― 企業のビジネスモデル変革を促すツール「経営デザインシート」の利用が広がりつつある。内閣府知的財産戦略本部がつくった原型をもとに大企業がM&A(合併・買収)や新規事業の開発、中小企業は事業承継などに活用している。―― とありました。早速、内閣府・同本部のWebサイトを覗いてみると、このような シートでした。
 内閣府はこの「経営デザインシート」を、2018年5月に公表したようです。中小企業庁あたりがこのようなツールを公表するのならわかりますが、縦割り行政のゆえか、まったく気づきませんでした。

  「なんで内閣府が…?」と思いながら、内閣府・同本部の「知財のビジネス価値評価検討タスクフォース」がまとめた報告書をみると、冒頭に次のように書かれていました。
 ―― 時代はSociety5.0の勃興期にある。産業の牽引力がハードからソフト・プラットフォームへシフトし、企業・サードパーティと国家との境界が溶融する等、大きなパラダイムシフトの兆しが散見されている。こうした目に見えやすい変化の他、生産力・物質的豊かさの向上に伴う個人ニーズの変化・多様化(「モノ」から「コト」へ)、さらには、AI・IoT・データ産業やバイオテクノロジー等の発達に伴って人間の生き方自体がより根源的に変化していく可能性も指摘されている。(中略)
 企業には、ニーズや「ウォンツ(潜在ニーズ)」ドリブンで環境と共に変化しつつ、持続的にイノベーションを生み出していくような戦略が必要である。そうした戦略の実現のためには、自らの価値創造のメカニズムの中において、自他の資源及びそれらがどのように組み合わされて価値を創造しているか、創造しようとしているかを認識することが極めて重要である。すなわち「経営をデザインする」ことが求められる。―― 
 さらに「経営デザインシート記載要領」の冒頭には、―― 経営デザインシートは、将来に向けて自社が持続的に成長するために、将来の経営の基幹となる価値創造メカニズム(資源を組み合わせて企業理念に適合する価値を創造する一連の仕組み)をデザインして移行させるためのシートである。(以下略)―― とありました。

  時代認識はまったくその通りと思いますし、シート自体も、大きくは左側に「これまでの価値創造メカニズム」を整理し、右側に「これからの価値創造メカニズム」を記載する。そして「これまで」と「これから」をつなぐ役割として、シート下部に、移行させるための戦略を記載するようになっているのは、一覧性がありわかりやすいと思います。
 類似のシートに、世界で活用されている「ビジネスモデルキャンバス」がありますが、「経営デザインシート」は、1枚のなかに「これまで」と「これから」を整理した点が特徴と言えましょう。その分記載し易さはあると思いますが、ビジネスモデルの部分をより詳細に詰めたいのなら、「ビジネスモデルキャンバス」のほうが使えるかもしれません。
  また「経営デザインシート」は、シートの左半分が「これまで」の整理に使われていますが、「これから」を考え出す部分をもっと深掘りできるとよいかもしれません。手前味噌ではありますが、その部分に私共が提唱している 「トライゴンハニカムチャート」 が使えるのではないかと考えております。

  なお、経営デザインシートに関わる各種情報は、次のURLで確認できます。
  内閣府 「経営をデザインする」 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html

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台風15号と事業継続力強化計画 (2019.09.30)

 今月初めに千葉県等に大きな被害をもたらした台風15号のニュースを見聞きするにつけ、昨年(2018年)9月6日3時7分に発生した北海道胆振東部地震を思い出しました。
 昨年の地震の際は全道約295万戸が一斉に停電になりましたが、それでも3日目には電力供給エリアの99%が復電した(電気新聞デジタル版2018年10月6日付)とされています。
 実際に私共も2日目の途中まで停電を経験し、信号機が消えている中をタクシーで知人の安否確認に行った経験があります。そのタクシーも、「燃料補給ができないので、使い切る前に会社に戻れ」と指示されているとのことでした。

 テレビも固定電話もPCのネットも台所(停電で都市ガスのボイラー停止)も使えず、携帯電話もつながりにくく、バッテリー残を気にしながらの利用を心掛け、トイレは備蓄してあった非常用グッズで大・小の用を足しました。わずか1日半程度の停電でも、あれだけ不便だったことを思うと、千葉県での台風15号による長期間の停電や断水はどれだけ大変であったか、想像を超えたものがあったと思われます。地震ではなかったため、被害について、周囲からはどこか軽く受け止められているような印象があります。千葉県内での停電はピーク時64万1千戸に上ったそうですが、9月8日の停電発生以来、16日後の24日夜に初めて停電ゼロ(東京電力のサイト)と発表されたものの、大規模な倒木などで作業が困難な場所では依然190戸で停電が続いているとの情報もありました。

 こうしたリスクへの備えとして、2017年7月の本トピックスで「事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」について取上げました。帝国データバンクが同年5月に調査した結果によると、実際に「事業継続計画(BCP)」を策定済みの企業はわずか14.3%に留まったとのことで、「現在策定中(7.3%)」と「策定を検討中(22.1%)を合わせても半数に満たない状況でした。
 帝国データバンクでは毎年この調査を続けており、今年の5月の調査結果は、BCP策定済みの企業は15.0%と、2年前よりわずか0.7ポイント増加したのみとのことです。
また、『策定意向あり』(「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」の合計)でも45.5%と半数に満たず、依然としてBCPの策定が進んでいない実態が浮き彫りとなりました。
 さらにBCPを策定していない理由(複数回答)についても「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が2年前=45.1%、今年=43.9%、「策定する人材を確保できない」は2年前=30.3%、今年=33.7%と、ほとんど変化がありません。

 これはどういうことでしょう。ほんとうに作り方がわからないのでしょうか?国がBCPを作ることを奨励しだしたのは、2011年の東日本大震災をうけてのことでした。
しかし8年経った今日においても策定済みがわずか15%という現実から、国は推進方法を改めました。これまで提唱してきた重要業務の洗い出しと目標復旧時間の決定などといった難しい取り組み事項を検討させるBCPづくりの手法を見直し、災害が発生したとき、必要最低限のことをいかに素早く実施するかをまとめた「事業継続力強化計画」の実効性が認められれば、国が認定するといった制度になりました。
従来のBCPづくりでは、あまりにも理想的な要件を満たした内容を求められたきらいがあり、中小企業にとってはハードルが高く、「策定スキルがない、人材もいない」から作れないといった結果となっていたようです。

 これだけ大規模自然災害が頻発する時代になっているのですから、企業は国に言われなくとも自発的に備えを進めて然るべきでしょう。今年も残すところあと3ヵ月、被災地に学び、災害への備えを急ぎたいものです。

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出版記念セミナー (2019.08.28)

 先日ご案内した本の出版を記念して、東京と大阪で「コンセプトづくり」に関するセミナーを開催します。

大阪のほうが先に開催し、申込み締め切りは9月17日です。 
内容は、解説セミナーのみのコースと、演習もセットにしたコースなど、各種あります。

大阪開催 ( 会場: AP大阪淀屋橋 大阪市中央区北浜3-3-25 京阪淀屋橋ビル3F )
・セミナーのみのコース
 1回目 9月20日(金) 19:00~20:30
 2回目 9月21日(土) 10:00~11:30

・セミナー+演習コース
 1回目 上記9月20日のセミナー + 9月21日(土)13:30~16:30の演習のセット
 2回目 上記9月21日のセミナー + 9月21日(土)13:30~16:30の演習のセット


東京開催 ( 会場: TKPスター貸会議室「神田南口2号館」
                     東京都中央区日本橋本石町4丁目5 日本橋ミツヤビル4F )
・セミナーのみのコース
 1回目 9月27日(金) 19:00~20:30
 2回目 9月28日(土) 10:00~11:30

・セミナー+演習コース
 1回目 上記9月27日のセミナー + 9月28日(土)13:30~16:30の演習のセット
 2回目 上記9月28日のセミナー + 9月28日(土)13:30~16:30の演習のセット


申込み受付は、クラウドファンディング (CAMP-FIRE)のサイト(終了しました)

 上記以外にも、コンセプトづくりのメールサポートの回数などにより、さまざまなコース(東京・大阪あわせて18種)がありますので、詳しくはクラウドファンディングのサイトをご覧ください。
 尚、下記はポスターで、こちらよりダウンロードできます が、A3判なので印刷にはご注意ください。

このポスターの右下には、クラウドファンディングサイトへのQRコードがついておりますので、
スマホなどで読み取ってサイトを見ることもできます。

メールサポート等の特典がつくのは9月17日の締切までにお申込みいただいた方のみですので、よろしくお願い致します。

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出版のご案内 (2019.08.24)

 2017年の春以降、このトピックスでも、トライゴンハニカムチャートとか、コンセプトまたはコンセプトづくりについて取り上げて参りました。
 そのノウハウについて本にまとめる作業をしていたのですが、来月には出版できる運びとなりました。全国の書店に並ぶのは9月半ば頃となるかもしれませんが、是非、一度、お手にとってご確認いただければ幸いです。
 書名は『ビジネスを成功させるコンセプトづくりのフレームワーク』(中央経済社)です。よろしくお願い致します。

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デジタル革命の時代 (2019.07.21)

 この1週間ほど、IoTの導入やデジタルイノベーションに関するセミナー、及びAIの活用等に関する展示会に立て続けに参加してきました。
 一方この間に新聞等で話題となったものとして、フェイスブックがVISAなど米国有力企業とともにデジタル通貨「リブラ」を使った金融サービスの構想を発表したことに対する主要国の金融当局等の反応がクローズアップされました。また、セブンペイがサービス開始直後に不正利用されるという事件が起こり、その対応がセブンイレブンらしからぬ状況となったことに対し、世間からの厳しい目が向けられました。
 これらはいずれも、いま始まりつつある新たなテクノロジー活用の時代への入り口で起きている現象といえます。

 時計の針を2~3年前に戻してみると、私達の足元では少子高齢化がますます大きな影となって迫るなか、働き方改革関連法案が成立、今年度より施行されました。少子高齢化はかなり以前からわかっていたことでしたが、国も企業も個人も、ほんとうの意味で具体的な対策がとれてきたとは言い難いような気がします。この大きな問題がいよいよ本格化し始めた一方で、グローバルには冒頭で述べた変化が押し寄せているわけです。この急激に進展しつつあるテクノロジーの奔流は、うまく活用できればわが国の少子高齢化問題の解決に大きく役立たせられる可能性がありそうです。しかしそれには、学校教育も企業経営者も政治家の意識も法整備も追い付いておりません。
 4月の当トピックスでは「グローバル人材とリベラルアーツ」について取上げましたが、7月15日の日経新聞では「産業界はグローバル人材やイノベーション人材の育成を大学に求めるが、実際の採用に当っては、論理的に相手を説得できる人材よりも、空気を読んで円満な人間関係を築ける人材のほうを求める傾向が続いている」との大学人からの指摘もありました。

 少子高齢化とのからみで介護人材の不足は益々大問題になってくる可能性があります。この分野は、どうしても労働集約的な要素が強く、生産性向上が求められる業界の1つです。社会保障における医療費負担を和らげるために介護保険ができました。しかし人命尊重の観点から要介護者等に対する介護支援人材の割合は法律で規定され、一方でフレンドリーなサービスが可能な小規模施設を重視した政策もあります。経営の維持・経済性を考えた場合、バランスをとるには介護人材へ支払う人件費を抑えざるを得ない構造がありそうです。こうした業界に対し、冒頭で述べた最近のテクノロジーを大いに活用した運営ができればよいのでしょうが、まだまだコスト的にもそして人材的にも法律的にも、導入できる状況ではないのです。
 介護業界は一例にすぎず、中小企業が属しているほとんどの業界において、新たなテクノロジーの時代への対応が進んでいないと感じます。冒頭に述べたセブンペイの件にしても、あれだけの大企業ですら、デジタル革命やそれに伴うセキュティ対策等に関し、経営陣の認識は追いついていなかったようです。

 産業界における別な話題として、事業承継の問題もあります。これまで経験したことのないほどのデジタル革命の時代を乗り切るには、新たなテクノロジーを理解し使いこなす経営者へのバトンタッチが必要です。国も企業も個人も、デジタル革命の意味を理解し、本気でドラスティックに変わらねばならないのが正に今ではないかと思います。
 これまでに“良し”としてきたことも、おそらくその半分程度は180度逆に考え、デジタル革命に「ついていく」のではなく「自ら使い、その進化を担う」ほどの意識の切り替えと実際の行動をできた者だけが、15年後に“主体的に”生き残っているような気がします。

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『日本人の勝算』 (2019.06.29)

 今回のタイトルは、今年1月に東洋経済新報社から出版されたデービッド・アトキンソン氏(小西美術工藝社社長)の著書名です。遅まきながら読了しましたが、根拠を示しながらの極めて示唆に富む提言があったので、その一部を紹介します。
 わが国では、この4月から働き方改革関連法が施行され、生産性向上が課題となっています。今回紹介する本では、第6章に「生産性を高めよ」との見出しで、日本は「賃上げショック」で生まれ変わるとありました。以下はその部分を中心に抜粋要約したものです。

 日本では、2015年から2060年までの間に生産年齢人口が約3,264万人も減る。これは世界第5位の経済規模があるイギリスの労働者人口=約3,211万人を上回る規模である。その反面、65歳以上の高齢者数は減らないので、社会保障費の支払いに支障が出る。
 日本の輸出企業は生産性が高いが、国内産業の生産性は1990年代に入ってから諸外国とくらべ驚くほど低くなり、あまりにも低迷している期間が長く、他の先進国とのギャップが開きすぎている。日本的経営や日本型資本主義、文化の違いを理由にこのギャップを正当化することはできない。

 日本の労働生産性(1人当りGDP2016年=83,233米ドル)は、ギリシャ(同80,449米ドル)より3%高いだけでイタリアやスペインよりも低い。先進国中3流レベルだが、失業率が低いという点だけがギリシャ、イタリア、スペインよりも上なだけ。ここに、日本政府が企業に賃上げを求める理由がある。
 社会保障費を生産年齢人口で割り、さらに年間平均労働時間(ここでは2000時間とする)で割ると、1人1時間当たりの社会保障費負担額を計算できる。2018年には約817円だったが、2040年には1642円となり、2060年には2150円にまで膨らむ。(2040年まで社会保障費が190兆円まで膨らみ、その後は横ばいと仮定した場合)。 今の最低賃金ではとても対応できない。

 日本での人口減少分を補って経済を縮小させないためには、どれだけ生産性向上が必要かは、次で計算できる。今のGDPを今の生産年齢人口で割り1人あたりGDPを算出。次に、今のGDPを2060年の生産年齢人口で割って、今のGDPを維持するための1人あたりGDPを算出。その2つを比べ、43年間のGDP向上率を計算。
 同様にGDPの成長率ごとに必要な生産性向上率を計算。すると、毎年1.29%の生産性向上が必要となる。1990年以降、G7の平均向上率は1.4%なので、日本でも実現可能な数字といえよう。

 これから日本の生産性向上に逆風が吹き始め、なおさら生産性向上が難しくなる。世界的にみても40代はもっとも生産性が高い世代でその人口が増えると生産性は上がりやすくなると言われているが、日本ではこれからこの世代が減る。
 給料が上がらないと日本の生産性は継続的には上がらない。GDPは縮小し、国が破綻しかねないが、経営者が進んで賃上げに動くことは考えにくい。そこで、国による最低賃金の引き上げが必要となる。
 ではどこまで最低賃金を引き上げるべきか。まず経済成長率ごとにGDP総額を計算し、それを生産年齢人口で割り、経済成長率ごとの1人当たりGDPを算出する。格差社会を是正する政策も含め考えると、最低賃金は1人当たりGDPの50%が妥当であることが、世界的な共通認識となっている。
 以上の計算から人口減少下でGDPを維持するためには、2030年で1399円の水準にすることが必要である。

 2016年のランキングでは日本の人材評価は世界第4位で、大手先進国としては最高ランクである。ちなみに次に高いのはドイツの第11位。ここまで人材評価の高い国なら、本来ならば、人材を上手に活かしさえすれば大手先進国で最高水準の生産性と所得水準が実現可能なはず。
 日本以外の国では、生産性と人材評価との間に強い相関関係があり、人材評価と最低賃金にも深い関係がある。しかし日本だけは人材評価が高いのに、最低賃金が低く、生産性も低い。異常だと言わざるをえない。
 生産性向上のため最低賃金を引き上げる政策を実施すれば、日本にはそれに十分耐えられる人材はすでにおり、日本人の実力をもってすれば何の問題も生じない。

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情報銀行 (2019.05.31)

 先日(28日)の日経新聞に、「“情報銀行”データ仕様統一」との記事がありました。
情報銀行とは、名前や住所、ネットの購買履歴など個人情報を利用者から集めて預かり、同意を得た上で他社に提供する企業のこと、だそうです。

 いよいよ、個人の日常生活情報が本格的に商売のネタになる時代になったのだと認識せざるを得ません。頭ではわかる気がしても、心のどこかに違和感を感じるのは、私だけでしょうか?
 平成15年(2003年)5月に個人情報保護法ができたあたりから、名簿の管理などには気を使わなければならない状況が意識され出したと記憶しています。紙ベースで管理されていた情報が電子データとして管理できるようになり、加工も容易になりました。さらにはネットを介して簡単に流通できるようになったことから、生じてきた現象といえます。

 情報銀行は、一種の情報サービスを取り扱う企業なわけですが、似たようなもので思い浮かぶのは、信用調査会社や格付け機関などです。これらはどちらかといえば企業情報を扱うのに対し、この度の情報銀行は、まさに個人情報を売買するところに違和感を覚えるのかもしれません。

 さらに現代を見回してみると、既に街中やさまざまな施設内には防犯カメラ・監視カメラが配置されており、車にはドライブレコーダーの普及もかなり進んできました。個人は常に監視された状態となってきており、否が応でもその状況のなかで生活せざるを得ない時代となっています。

 対価を受け取って自分の情報を提供するからには、その管理についても、提供者の意思に従う運用がどこまで徹底されるのか。まさにそのことが問われています。

 冒頭で示した日経新聞によれば、政府が全国の1000人を対象に実施した調査では、情報銀行を利用したくないとの回答は8割弱を占めたが、データを活用した具体的なサービスを示された場合は、利用したいとの回答が多くなったとのことです。
 データを使うサービス開発は米中勢が先行しており、このままでは日本の産業競争力が海外に引き離されかねないといった懸念から、政府は情報銀行を通じたサービスを浸透させたいようです。

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グローバル人材とリベラルアーツ (2019.04.30)

 平成から令和へと元号が変わるこの連休に際し、最近ますますクローズアップされている人手不足問題について考えてみました。
 経済のグローバル化が進展する中、海外展開されている企業では、たんに人手不足というだけではなく、国際的に通用するグローバル人材が求められています。
 一方、人材を送り出す側の大学においても、十年ほど前から「リベラルアーツ」ということが取り沙汰されてきました。「正解」のない問題に対処でき、グローバルに活躍できる人材を育成するために、英語による授業や専攻以外の科目を幅広く履修できるような体制を整えているようです。
 しかし、そのような取り組みでは、日本の大学教育のグローバル化はできないという意見があることを知りました。現在、世界の高等教育は共通化、統合化が進んでおり、日本の大学教育の学問体系を欧米にそろえないと、人材の評価を適切に行うことができず、企業が人材を採用する際に支障が出てしまうというのです。

 リベラルアーツという言葉は、ギリシャ・ローマ時代の末期に成立した「セブンリベラルアーツ(自由7科)」が起源であり、奴隷ではない自由人として生きていくために必要な素養として、3学と4科が挙げられていたそうです。
  ・3学・・・言語にかかわる 文法、修辞学、弁証法(論理学)
  ・4科・・・数学にかかわる 算術、幾何、天文、音楽
この自由7科の上に哲学があり、さらにその上に神学(Theology)があるとのこと。
 中世ヨーロッパで大学が誕生したとき、自由7科は学問の科目として公式に定められたそうです。
 日本の大学でリベラルアーツというと、「一般教養」の科目と捉えられている傾向が強いようですが、本来、リベラルアーツとは先述した起源をもち、日本の大学の学問体系は、欧米のそれとはずいぶんズレがあるそうです。
 キリスト教世界をベースとした欧米での学問体系は、大きくアートとサイエンスに分かれているといいます。日本の大学でいえば、文系と理系といった分け方に相当しそうですが、その中身はだいぶ違うようです。
 この記事は、ジャーナリストである山田順氏が2013年4月に述べられたものを参考に書かせて頂いていますが https://toyokeizai.net/articles/-/13697、氏の記事を整理すると次のようになります。
 ・アート = 人間がつくり出したもの・・・を学び研究する科目
            (文学、美術、音楽、歴史、哲学、建築 など)
 ・サイエンス=神がつくったもの・・・自然界を貫く法則を見つけだすこと
    これはさらに二つに分かれる
       natural science(自然科学)・・・化学、物理学など
       social science(社会科学)・・・自然界の一部である人間社会が対象。
                      心理学、経済学、経営学、政治学など
 こうしてみると、アート=文系、サイエンス=理系 といった分け方に当てはまらず、ズレている部分があることがわかります。日本の大学で文系とされている心理学や経済学、経営学、政治学などは、アートではなくサイエンスに属し、どちらかといえば理系としての位置づけに近い扱いとなっているようです。
 こうしたことから、学部や専攻学科を参考に採用しようとした際に、食い違いが生じてしまうというのです。
 したがって、海外人材の採用に際しては、このような事情をふまえ、本人が学び研究してきた具体的な中身を確認する必要がありますし、逆に、日本で学んだ人が欧米企業へ就職しようとする際にも、このようなことを踏まえた上でアピールする必要があるといえます。

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補助金担保の借入制度に思う (2019.03.25)

 昨日の日経新聞に、「中小企業庁は国の補助金を裏付けに企業が借り入れをできる仕組みを新たにつくる。」との記事がありました。
 具体的には、「ものづくり補助金」といわれている補助金が対象のようですが、国の補助金は、交付が決まってから支払われるまでに時間がかかるため、補助事業を採択された中小企業がこれを担保に銀行借入できるようにし、その際にフィンテック企業が作成する電子債権を利用することになるようです。
 新たな製品開発や先進設備導入計画に補助金が使えるよう採択されても、実際に補助金を受け取れるのは、その補助事業(新製品開発等)が終了し補助金請求をしたあとになります。このため企業側は、この間の開発等にかかる費用を自前で賄わなければなりません。

 今回の話は、それが難しいために中小企業が補助事業にチャレンジするのを思いとどまることがないように、というのが目的ではないようです。実際、補助金の採択を受けた企業では、それを担保にはできないものの、銀行側がそれも考慮のうえで融資されているケースは結構あるように感じております。
 中小企業のお手伝いをしている者としては、融資を受けやすくして補助事業を活用した新製品開発等の促進をはかるといったこと以上に、補助事業をもっと使い勝手をよくする必要があるように感じています。

 補助金には、当然ながら応募期間と補助事業の完了期限があります。一番問題に感じるのは、補助金の制度が国の会計年度に合わせた運用となっているため、補助金を採択された企業は、新製品開発等を年度末までに完了し、報告しなければならないという点です。 
 企業側は、補助金の制度の期間にあわせて新製品等を開発するというのは本来の姿ではありません。補助金の応募にしても、採択される前に開発等を手がけた部分は補助事業の対象外になりますが、スピードの速い開発競争のなかにあって、補助金の採択を待ってから開発にとりかかるようなことをしていては、貴重なタイミングを逃すことになりかねないのです。このような理由から、有益な新製品開発等をしている企業であっても、補助事業を活用できずにいるケースが結構ありそうです。国の資金管理上の難しさがあるのはわかりますが、法の見直しを進め、もっと使い勝手のよい補助金制度になればよいなと思います。

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Society5.0 (2019.02.28)

  去る2月16日、「Society5.0で北海道が変わる」と銘打った集まりに参加してきました。これは日本学術会議が主催した学術講演会で、「日本学術会議in 北海道」との位置づけで開催されました。
 講演は3つで、1つ目は「Society5.0時代における科学技術・イノベーション政策」について、文部科学省文部科学審議官 山脇良雄氏によるお話。2つ目は、東京大学大学院工学系研究科教授 浅間 一 氏による「ロボット技術とその知能化~現状と社会実装加速に向けての将来展望~」についてのお話。3つ目は、「農業におけるSociety5.0の実現に向けて」と題して、北海道大学大学院農学研究院副研究院長 野口 伸 氏によるお話でした。
 いずれも中身の濃いお話で、私としては初めてこの種の集まりに参加したのですが、ロボットテクノロジー(RT)や自動走行農業機械などが、かなり産業の実用化段階にはいってきていることを知り、未来に明るさを感じたものでした。
 昨年10月~12月(特別編は今年1月)にTVドラマ「下町ロケット」(原作小説:池井戸潤氏)で自動走行トラクターやコンバインのことが放映されましたが、3つ目のお話は、まさにその舞台裏に現実に関わってこられた方のお話であり、ドラマでは紹介されていない未来像までをも解説されていました。
 そこで感じたことは、たんにドラマだけの世界ではなく、あと10年もすれば農業界の姿は相当程度、自動走行農機具による農業が現実のものとなっている可能性があるということです。
 「農業労働力に関する統計(農水省ホームページ)」によれば、基幹的農業従事者の平均年齢は、平成30年で66.6歳。平成27年当時の67.0歳から若干若返ってはいるものの、高齢化・担い手不足であることは切実で、自動走行農機具によるスマート農業の実現は担い手の面からも迫られており、その可能性は高いように感じられました。
 これが現実のものとなると、農業の未来は一気に最先端科学産業のひとつになる可能性があります。農業者の発想も、これまでの農業生産者から最先端技術を駆使できる科学的経営者に変革する必要があります。その世界では、農業の概念そのものが変わる可能性もありそうです。
 先の1つ目の講演で、Society5.0とは「サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と定義されていました。Society1.0が狩猟、Society2.0は農耕、Society3.0が工業、Society4.0を情報社会とし、Society5.0は新たな社会ということで、先の定義となったようです。
 これに加えて経団連の捉え方についても紹介されており、「Society5.0とは創造社会であり、“デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合によって、社会の課題を解決し、価値を創造する社会”である」とのことでした。
 中小企業においても、こうした新たな社会の到来を見据えて自社を革新していくことが求められます。
 日本学術会議の今回の札幌での学術講演会は、今の山極壽一会長(京都大学総長)になってから、「東京以外でも開催しよう」ということで、昨年12月に京都で開催した「第1回地方学術会議」に次ぐ第2回目とのことでした。私は、とある団体のメールによる案内で知り参加しましたが、参加者はざっとみて120名前後と少なく、もっと一般向けにもPRされ、多くの産業人・経営者等が参加されることが、今後の新たな社会形成のために必要と感じた次第です。

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2019年は経営革新力が問われる (2018.12.28)

  先日、ある経済セミナーを受講しました。その時の講師の方は、2019年は様々な角度からみて、「日本経済は底堅く、結構良いであろう」とのことでした。但し、「想定外」・「不測の事態」もないとは言えない・・・と。
 ここ一週間ほど、日米ともに株価は乱高下しました。経済市場環境がとくに変わったわけではなく、特筆すべき要因もない(と言われている)のに不安定なのです。

 こうした株式市場の影響も重要ですが、それ以上に、色々な構造型変化への対応が経営にとっては根本的に重要と思われます。少子高齢化はもちろんですが、経済のサービス化、社会のデジタル化・IoT化、価値観の多様化・・・等々といった変化は構造的ですが、すべてある程度予想されているものです。

 その一方で、中小企業の経営がこれらに対してどの程度の取組みがなされているかと言うと、まだまだ手つかずの状態といってもいいような印象が感じられます。
 しかし、構造型変化は待ってはくれません。これには地球環境の変化による異常気象等も含めて考えるべきかもしれません。様々な自然災害が経営に与える影響も顕著になってきたからです。

 構造型変化は、じっと堪え忍んでいたり、しばらく様子を見ていれば通り過ぎてくれるというものではありません。つまりある程度時間が経過すれば元に戻るわけではなく、自分(自社)が取り残されるだけということです。それでもまだ追いつく余地があるのであればいいのですが、変化のスピードは速まるばかりです。すぐに自分(自社)も変化し始めなければ、生き残ることも難しくなります。
その意味で、来年(2019年)は経営革新力が問われる年と言えるのではないかと思います。

 昨年の11月のトピックスで、「革新再生産TM」ということを書きました。「拡大再生産」という言葉に対比させての提案でした。
 再生産は、ある種「繰り返し」を意味します。「拡大再生産」はどちらかというと同じ物を繰り返し生産し、量的拡大を目指す要素が強いと言えるでしょう。
 しかし、構造型変化は、元に戻ったり繰り返したりということではありませんので、これまでの「拡大再生産」の発想ではそぐわないのです。
 そこで「革新再生産TM」が求められることになります。ここでも「再生産」という言葉が使われてはいますが、「拡大再生産」とは繰り返すものが異なります。すなわち、「革新を繰り返す」ということです。

 「なぁ~んだ、そんなの経営にとってあたりまえじゃないか」と一笑に付さないでほしいのです。その中身は、経営のあり方を「質的に変えていく」ということですから、たやすいことではない筈です。2019年~2021年あたりで「革新再生産TM」の道筋をつけられた企業は、その先の時代に生き残って行ける経営体質が得られたということになるのではないかと考えております。

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人材への投資増加 (2018.11.21)

  二日前の日経新聞に、「人材育成投資1割増」との見出しがありました。ようやく動き出したか・・・といった感想を抱きました。
 と、いうのも、実は3年前(2015年10月13日)に「忍び寄る危機、“組織崩壊”」というタイトルのトピックスを書いておりました。
 そこでは、わが国で「ワーク・ライフ・バランス」が提唱され始めたときに感じた違和感について触れ、その理由らしきものとして、わが国企業における「組織力の弱体化」があるのではないかと述べました。そして次のように解説していました。

・・・「失われた20年」の間、多くの企業は防戦一方もしくは我慢に徹するか様子見を決め込み、前向きな投資をほとんどしてこられなかった。 そして日本的経営の特徴とされた終身雇用・年功序列・企業別組合のほか、株式持合や稟議制度によるボトムアップ型意思決定、家族主義的経営などはことごとく変革を迫られました。
 とくに人材面には“しわ寄せ”が大きかったように思います。その結果、人材力の低下が進み、組織力も弱体化したと思うのです。 日本的経営には良し悪し両面あると思いますが、そこで培われた組織風土なり企業文化といったものには、その企業としての“強み”や“底力”が秘められていたと思います。
 「ワーク・ライフ・バランス」が提唱されたとき「何かが違う」と感じたのは、この組織風土から生まれる“底力”を回復しないかぎり、機能しない(成果が出ない)と直感したからだと、今、思うのです。・・・と。

 2年ほど前から、「働き方改革」が言われ、関連して「ワーク・ライフ・バランス」も取り沙汰されております。
 3年前と違うのは、少子高齢化による人手不足感が厳しい現実となり、いよいよ本腰を入れた「働きやすさ実現」と「人材育成による生産性向上」が迫られていることです。
 日経新聞の記事では、上場企業等いち早く「働き方改革」に取り組み労働時間や残業代を削減できた企業は、そこで浮いた時間や資金を人材投資に振り向け始めたとのこと。
回答企業の2018年度の研修費の平均額は約4億円で、19年度は16年度比で10.6%増となる見通しであることが書かれていました。

 ここ1~2年でそうした対応ができなかった企業は、5年後、対応出来た企業にはもはや追いつけないほどの差をつけられてしまう可能性があります。ロボットやAIを駆使できる“組織風土”があるか否かは「エクスポネンシャル(Exponential:指数関数的)」な差となって表れるからです。

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IT導入補助金 (2018.10.26)

 働き方改革が叫ばれているなか、生産性の向上が喫緊の課題となっています。その実現のためにITツールを導入する中小企業・小規模事業者等を対象とした補助金が用意されています。
 この補助金は今年(平成29年度補正予算)、昨年の5倍の500億円が予算化されており、まだその枠がかなり残っているようです。
 補助金というと申請が面倒と考えがちですが、この補助金はIT導入支援事業者(ITベンダー等)による代理申請で受付ることとなっていますので、導入企業の手続き負担が軽くなるように配慮されています。

 注意が必要なのは、導入するITツールにはハードウェアは含まれないことです。顧客管理や財務管理といったソフトウェアや、予約機能や決済機能をもったホームページを作成するといったようなことにより、生産性向上に結びつく機能を組み合わせた“パッケージ”(=ITツール)の導入が求められています。
 但し、これらについては、IT導入支援事業者となっているITベンダー等のほうで、補助対象となるITツールが登録されていますので、その中から利用したいものを選択すればよいことです。
 また、申請要件として、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「セキュリテイ アクション(セキュリティ対策に取り組むこと)」の宣言を行なうことと、一般社団法人 サービスデザイン推進協議会のWebサイト(https://www.it-hojo.jp/applicant/checktool.html)にある「経営診断ツール」により、IT導入補助金で導入すべきITツールを選択するための自社の経営状態を把握することが必要となります。

 しかし、いずれもそれほど難しい内容ではなく、まずは、最寄のITベンダーがこの補助金のIT導入支援事業者となっているか否かを確認し、相談するのが早いと思われます。
 現在、第三次公募中であり、2週間毎に締切を設け、逐次審査・採択がなされています。問題は、採択された場合、補助金の公布決定日以降、来年1月31日までに事業を実施(ITツールを導入し、稼働)しなければなりませんので、申請が遅くなるほど、事業実施期間が短くなってしまうことです。
 ちなみに、第四回締切日は11月6日、第五回締切日は11月19日となっております。
 IT導入補助金の概要説明資料は こちらからもダウンロード できますので、ご覧ください。

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新しい学びの機会「ビジログ」 (2018.08.26)

 8月20日、中小企業庁が新たな学びの機会を公開しました。その名は「ビジログ」といい、ビジネススキル+記録(ログ)から名付けられたようです。
 その背景・趣旨として、中小企業庁のウェブサイトでは次のように述べられています。
 「中小企業が、第四次産業革命等の急激な環境変化や人口減少という構造的問題に対応しながら、成長・発展を続けるためには、経営者を支える中核人材の育成が急務です。
 こうした問題意識から、中小企業庁では、中小企業等で働く従業員を、将来、社内の中核的な人材に育成するためのプラットフォーム『ビジログ』を構築し、ホームページ上に公開しました。」

 カリキュラムとしては、“仕事にどう向き合い取り組んでいくのかといった[姿勢]”を学ぶ「キャリア・オーナーシップ」、“前に踏み出す力”、“チームで働く力”、“考え抜く力”などについて学ぶ「社会人基礎力」のほか、「専門知識」として①現場を一新させる“人手不足解消術”や②仕事の効率をアップさせる“生産性向上術”など、将来、社内の中核的な人材に成長してもらえるような内容となっているとのことです。

 学習スタイルも、全国9会場のいずれかに参加する「ワークショップ型」のほか、インターネットを利用した「ウェブ型」および「双方向ライブ型(定員・開催日程指定あり)」の3つから選んで(組み合わせも可)受講できますので、時間や場所にとらわれない学習が無料で受けられます。
詳しくは、 「ビジログ」のサイト をご覧ください。

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「質」を伴ってこその「働き方改革」 (2018.07.31)

 働き方改革関連法案が6月29日に成立しました。8つの法律の改正を伴うもので、具体的には雇用対策法、労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法(パート法)、労働契約法、労働者派遣法が対象となります。
 本日の日経新聞に、厚生労働省が2019年4月より管理職の労働時間を把握するよう企業に義務付けるとありました。長時間労働や残業抑制の話題は依然として目立つ存在といえますが、一方で「生産性の向上」議論も経営の現場では問題となっております。

 私共では、「働き方改革」がブームの様相を呈し出した昨年春頃、私共の視点にはない捉え方で「働き方改革」への取組みを提唱していたあるコンサルティング会社のコンサルタント養成講座を受講してみました。その会社では、自分達の会社における「働き方の成果」を前面に訴求しながら、その手法を様々な企業へ提案しておりました。
 その講座の内容は、私共にとっても新鮮な部分があったのですが、残念ながらそこで配布されたケーススタディの内容はお粗末でした。

 そのコンサルティング会社では、「従業員は残業せず定時に帰っているが、業績は順調に伸びている」といい、「生産性は向上している」とアピールしていました。
 しかし、講座で配布された資料には致命的なケース設定が複数あり、しかもその訂正については当方が指摘するまで説明されることはありませんでした。「これで果たして本当に生産性が高いといえるのか?」と、素朴な疑問を感じたものです。所定の時間内に仕事を完了できたとしても、その質がお粗末であれば、まともに評価するわけにはいきません。
 「生産性の向上」に努め長時間労働を解消することは重要ですが、仕事の「質」が確保された「働き方改革」でなければホンモノとは言えません。

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エクスポネンシャル思考 (2018.06.29)

 何年かに1回、時代に取り残されるといった危機感を覚えることがあります。最近読んだ齋藤和紀氏の著書『エクスポネンシャル思考』大和書房との出会いもその一つです。私にとっては、想像を絶することが書かれていました。
 エクスポネンシャル(exponential)とは、“指数関数的”という意味。最近話題のAIは、指数関数的進化の代表格といえます。エクスポネンシャルな進化を遂げるテクノロジーを利用し、いかに理想の未来を作り出すイノベーターになれるかを議論しているシリコンバレーのシンギュラリティ大学は10年も前に創設されました。そこでは、10倍アップを目指す考え方が叩き込まれるそうです。常に現状を劇的に変えるブレークスルーにチャレンジし、シリコンバレーのベンチャー企業は出現してきているのです。
 それにしても、テクノロジーはここまで進んでいるのか!と驚かされたことのひとつを同書から引用します。「今後数年以内に、バーチャル・リアリティや遠隔操作、感覚のフィードバックなどを介した“テレプレゼンス”といったものが現実化します。これは、たとえば地球の裏側に置いたロボットに五感を転送して操作し、あたかも自分がそこにいるように共に旅行をしたり、一緒に作業をしたり、人と会ったりできる技術です。(中略)このテクノロジーが実現し、普及した世界においては、生身の人間が飛行機で移動することはもはや時代おくれとなる可能性が大いにあります。」とのこと。
 また、ピーター・ディアマンディス氏とともにシンギュラリティ大学を創設した未来学者のレイ・カーツワイル氏は、2020年以降人類の寿命が1年に1歳程度伸びると予測しているそうです。そして人間の肉体をこのまま使うことも想定していないとのこと。あと20年くらい生き続ければ、かなりの高確率で「死なない」存在になる可能性があるというのです。恐怖を気にするよりも、わくわくして生きていたほうがよいのかもしれません。

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GDPR(一般データ保護規則) (2018.05.31)

 最近、いつも見ているニュースサイトを開くと、30秒もしないうちに、「〇〇(当該サイト)は、・・・クッキー(cookie)を使用しています。このバナーを閉じるか、閲覧を継続することでクッキーの使用を承認されたとみなされます。」といったポップ表示がなされるようになり、何だろう?と思っていたが、どうやらGDPRへの対応らしいと理解しました。
 GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)とは、EUが個人データやプライバシーの保護を強化するために去る5月25日より施行したもので、EU加盟国に同一に直接効力を持つほか、EU域外の事業者へも適用されるとのことです。
 先述したポップ表示は、GDPRがクッキー(cookie)を「個人を識別しうるデータとして規制の対象にした(日経新聞2018年5月27日)ことから生じていたようです。

 またGDPRはその17条で、EUに住む個人がデータを消すよう企業に求める「忘れられる権利」を定めました。たとえば、EU在住の方が日本企業のショッピングサイトを利用する際に名前やクレジットカード情報を提供していたが、そのショッピングサイトを利用する予定が無くなって退会する際には、日本企業側に「個人情報をすべて消して欲しい」と求めることができるわけです。
 問題は、その要求を受けた企業は、データを遅滞なく消す義務を負うばかりか、データの形式がデジタルか紙か、保管場所が国内外のどこにあるかを問わず消去が求められるとのこと(日経新聞2018年5月29日より)。
 GDPRの詳細については、個人情報保護委員会のウェブサイトなどで日本語仮訳をダウンロードできます。
https://www.ppc.go.jp/enforcement/cooperation/cooperation/GDPR/

 また、個人情報保護委員会のサイトのトップページでは、「SNSの利用者のみなさまへの留意事項」として、次のような注意を呼びかけています。
 「一部のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は、当該SNSの「ボタン」等が設置されたウェブサイトを閲覧した場合、当該「ボタン」等を押さなくとも、当該ウェブサイトからSNSに対し、ユーザーID・アクセスしているサイト等の情報(※)が自動で送信されていることがあります。」
      (※SNSがユーザーID等を他の情報と紐づけて個人情報として管理している場合、当該ユーザーIDは個人情報となります。)
 インターネットを利用する側にも、個人情報への意識を高めていくことが求められていると言えます。

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インタンジブルズ競争の時代 (2018.04.30)

 先月のトピックスでは、「コンセプト」を取り上げました。その際に、差別化という要素がなければコンセプトとしての目的を果たせないと書きました。これは、なぜコンセプトが重要なのか?必要なのか?といった「そもそも論」として、少なくとも経営においては、他との違いを明確にして(差別化して)商品(サービス)や店や事業に優位性を持たせるためにコンセプトをつくるのだということです。

 逆に言えば、コンセプトは、競争力の一部であるといえます。そこでふと思ったことは、今はインタンジブルズ(触ることができない、無形のもの)による競争の時代ではないかということ。昔から、経営資源として「ヒト」「モノ」「カネ」と言われ、やがてこれらに加えて「情報」も取り上げられるようになりましたが、企業はこれらを駆使して市場競争を繰り広げております。当初は、「モノ」や「カネ」をたくさんもっている企業が強かったわけですが、徐々に「ヒト」や「情報」にその重点がシフトしてきたといえます。

 つまり目に見える有形(tangibles)の「モノ」や「カネ」から、目に見えない無形(intangible)の「情報」などへのシフトです。
しかし実は、経営にかかわるインタンジブルズ(無形のもの)は、以前からなかったわけではありません。経営理念や経営戦略は、言葉に表さなければ見えませんが、きわめて重要とされてきました。そして、コンセプトもそのひとつに数えられるはずです。
実は、目に見えるものは、目に見えないものによって動かされています。わかりやすい例はコンピューターのハードとソフトを挙げれば説明がつくでしょう。

 問題は、以前から重要とされていたはずの目に見えないインタンジブルズ(無形のもの)が、わが国ではまだまだ重視されていないことです。
有形物による競争は、少なくともふた昔(20年)くらい前には終わっていて、無形物による競争の時代(21世紀)に入っているのに、未だにこの部分に焦点を当てた経営がなされていないといったら言い過ぎでしょうか?
 しかしその責任は、私どもにもあると感じております。これまで、そうしたインタンジブルズによる競争のあり方をわかりやすく説明してこられなかったからです。少なくとも今後は、「コンセプトの定義」やその構築手法について、私どもなりの説明をし、実践していただけるようにしたいと考えております。

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コンセプトとは何か (2018.03.23)

 コンセプト(Concept)という用語は、色々な場面で使われます。「商品コンセプト」、「ストアコンセプト」、「事業コンセプト」といった具合にです。
しかし、その「コンセプト」って何?どういう意味?・・・と問われたとき、明確な答えを言える人は多くないと思います。

 辞書で調べると、「Concept=概念」と出てきます。何となくは分るのですが、では、例えば「商品コンセプト」をどのように考えて作ればよいのか?と訊かれたら、これまた、ハタと詰まってしまうのではないでしょうか。実は私共も長年、自問自答し続けてきたテーマでした。

 実は本日、この自問自答に終止符を打てる気がしております。私共なりの「コンセプトの定義」が決まりました。それは、次の通りです。

 コンセプトとは、「他と差別化し得る顧客への提供価値を、それを実現できる裏付けのもとに一言で主張したもの」。(2018年3月23日、野﨑晴行)

 他と・・・の「他」は、「他の商品」であったり、サービスであったり、店舗や事業を指すこともあります。
 差別化しうる・・・は、この要素がなければ、コンセプトの目的を果たせないと考えております。

 これ以上の説明は割愛しますが、巷で「〇〇のコンセプト」と言われているものを上記の定義に照らし合わせてみてください。それが機能するコンセプトとなっているかどうかが、わかるのではないかと思います。

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「ものづくり補助金」の公募 (2018.02.28)

平成29年度補正「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」の公募が開始されました。(全国中小企業団体中央会サイトより)

 この補助金は、足腰の強い経済を構築するため、日本経済の屋台骨である中小企業・小規模事業者が取り組む生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等の一部を支援するというものです。

 公募期間は2月28日(水)から4月27日(金)(当日消印有効)

 応募申請のための公募要領や応募様式等は各地域(都道府県中央会)事務局のホームページに順次掲載予定とのことです。

全国中央会のサイトでは「公募要領」がダウンロードできるようになっているのですが、(参考版)とのことで、実際の応募申請には、地域事務局が発行する申請書(様式)をご使用くださいとのことでした。
地域によって多少、様式が異なるようですので、注意が必要です。

早めに準備を始めるために、公募要領の「参考版」を入手したい方は、こちらからもダウンロードできますので、ご利用ください。⇒公募要領(参考版).pdf

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「ニッポン品質」への憂慮 (2017.12.23)

 1年を締めくくるにあたり、このような話題を取り上げねばならないのは残念ですが、書いておくこととします。
 2005年、一級建築士A氏によるマンションの耐震偽装から、同種の問題が全国的に噴出。2007年、不二家や石屋製菓の消費・正味期限偽装、ミートホープの牛肉偽装、船場吉兆の偽装表示・賞味期限切れ商品販売事件。2013年、有名ホテルや百貨店のレストランでバナメイエビを芝エビと表示して使用・販売するなどといった食材偽装問題。2015年、基礎の杭打ち工事で虚偽データが使われ、横浜市で大型マンションが傾き、旭化成建材が手掛けた工事が全国的な問題に。

 そして今年、東洋ゴム工業のデータ偽装、神戸製鋼所や三菱マテリアル子会社の性能データ改ざん、東レ子会社の検査データ改ざん、日産やスバルでの無資格者による新車の完成検査問題など、数年ごとに企業不祥事が大きなニュースとなっております。
 最近では、JR西日本で新幹線「のぞみ」の異音・異臭に気付き後も2時間以上運行し、台車に亀裂が見つかった問題は記憶に新しいでしょう。こうした問題・事件が起こる度に企業は「再発防止」を唱え、「コンプライアンス」や「コーポレートガバナンス」が指摘されてきました。「厳しい競争に晒されている」、「法令と実態が乖離している」、「客先の仕様・要求が過剰すぎる」、「これまでも問題にはならなかった」…様々な事情説明がなされます。「トクサイ(特別採用)」といった商慣習もあるようです。

 神戸製鋼所の事件を受けて、国も工業標準化(JIS)法の改正に乗り出すようです。食の問題も含め、安心・安全・信頼を誇ってきた「ニッポン品質」が揺らいでいることに憂慮を禁じ得ません。「コンプライアンス」や「コーポレートガバナンス」が指摘され、「再発防止策を講じる」わけですが、それは論理的な側面が中心になっていると思われます。しかし、こうした対応は、ある種の限界にきているのではないかと感じます。
 そこで思い出したのが、『国家の品格』(藤原正彦著 新潮新書)です。その第二章に「論理」だけでは世界が破綻する-とあります。その中には①論理の限界、②最も重要なことは論理で説明できない、といった説明が続き、「ならぬことはならぬものです」で締めくくられる「会津藩の教え」が紹介されています。説明はさらに続くのですが、この本の中に“ニッポン品質回復のヒント”があるような気がします。

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「診断士登録養成課程」by 札幌商工会議所 (2017.11.28)

 札幌商工会議所が、経済産業省より「中小企業診断士登録養成機関」に認定(2017年11月9日付)され、来年3月より「中小企業診断士登録養成課程」を開設するとのことです。
 中小企業診断士の資格を取得するには、通常、一次試験、二次試験に合格したあと実務補習(診断実習)を修了しなければなりません。
 しかし、あまり知られてはいませんが、一次試験合格後、「中小企業診断士登録養成課程」を修了して取得する方法もあるのです。
 この方法は、当初、公的な存在としての「中小企業大学校(東京校)」のみが実施していたのですが、平成18年度(2006年4月)より民間にも開設が認められたものです。
 札幌商工会議所は、東北・北海道地域で初の登録養成機関となりましたが、中小企業大学校以外では13番目の登録でした。
 登録養成機関が実施する「中小企業診断士登録養成課程」は、演習330時間以上、実習については312時間以上といった、国が定めた基準を満たしたカリキュラムとなっております。
 二次試験合格後、15日間の実務補習(診断実習)を修了して資格取得するよりも、費用はかかりますが、みっちり実力をつけるには良い制度だと思われます。

詳しくは、札幌商工会議所:中小企業診断士登録養成課程のサイト をご覧ください。

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「革新再生産TM」で行こう! (2017.11.27)

  「成長か衰退か」。本日の日経新聞トップの見出しです。そして「生産性」とありました。巷で言われている「働き方改革」では時間外・長時間労働が問題視されがちですが、本質は、生産性向上にあります。
 AIやロボットの導入を望みたいところですが、技術が進展途上であったり、必要投資額からみても、なかなか中小企業(とくに小・零細企業)には導入しにくいのが実情と言えます。また、テレワークやサテライトオフィス・シェアオフィスの活用なども進んでいますが、「現場で物を動かしたり」「人のお世話(介護)をする」ような仕事をされている場合、そういうわけにもいきません。
 しかしそうした産業や仕事が、生産性を高めにくいからといって「不要」なわけではありません。必要ではあるのだが、それに見合った対価を得にくい。また、相対的にその価値が低いものと見做されてしまいやすい、といったところに「問題」があるように思います。
 「必需品」と言われているものには、毎日のように必ず消費しなければならないため、対価(単価)をなるべく抑えたいという傾向があるのは事実です。
 しかし、例えば「食」では、一人の人間が食べられる量には一定の範囲があります。にも拘わらず、「食」にかける対価は、人により時によって大きな格差があります。つまり同じ食材が使われていたとしても、ある料理は価値が高いと見做され、何ヶ月も先の予約をしたり、並んで待った挙句、高額な費用を惜しみなく払ったりされています。

 命をはじめ、モノゴトが継続してゆくためには、なんらかの「再生産」が必要です。これまでの社会や産業は、「拡大再生産」を目指すことが主流であったと言えます。
 「大量生産・大量消費の時代は終わった」と言いつつも、頭の片隅には依然として、継続の為には「拡大再生産」が必要であると考えているフシはないでしょうか?
 言いたいことは、「拡大再生産」の呪縛から解き放たれない限り、「必要ではあるが、それに見合った対価を払いにくい」と感じられている産業や仕事の現場における「働き方改革(=生産性向上)」の解は見出せないのではないか、ということです。
 「拡大再生産」という言葉には、どうしても「量」の概念がつきまといます。今後急激に人口減少が進み、国内における消費量縮小が明らかなわが国においては、「拡大再生産」とは異なるコトバが必要だと感じました。
 そこで提唱したいのが「革新再生産TM」というコンセプトです。国内人口の減少だけではなく、地球環境資源の面から考えても、「量を追う」ようなコンセプトでは未来へ向けての解が導き出せません。そこで必要となるコンセプトが「革新再生産TM」ではないかと思うのです。
 そこには「技術」の要素はもちろん含まれますが、それ以外にも、発想や手順、関係作り等々、あらゆる側面で「革新」ということにフォーカスした取り組み方への転換が求められます。革新を発想し行動できる人材を育てるために、教育のあり方から変える必要があるように思います。今の安倍内閣が提唱しだした「人づくり革命」とは違った次元のものが必要となるように感じております。
 「働き方改革」に行き詰まりを感じている企業等の皆様には是非、「革新再生産TM」を軸に据え、「どんな工夫ができるか? 何をしなければならないか?」を徹底的に考え抜き、行動しきることをお勧めします。同じ食材(境遇)であっても、工夫次第で十分な対価を得ている例(食の業界に限りません)もあるのですから。

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第31回 ビジネスEXPO (2017.10.25)

 北海道最大のビジネスイベントである「北海道 技術・ビジネス交流会(ビジネスEXPO)」が、今年もアクセスサッポロを会場として開催されます。11月9日(木)~10日(金)に行なわれ、今回で31回目となります。
 全部で345の企業・団体が出展するとのことですが、実は初めて、私共も所属している(一社)中小企業診断協会北海道がブースを出します。
 中小企業診断士と診断協会を少しでも知っていただくことを目指してのことで、協会事務局のほか、協会所属の各研究会が展示を行います。私(野﨑)は、「トライゴンハニカムチャート研究会」ということで参加しておりますので、ビジネスEXPOへ行かれる方は、是非、私共のブースへもお立ち寄りください。
 当研究会では、事業コンセプト作りの研究などを行っております。会場内でのブースの位置は、一番奥の壁際で中央付近にあります。
 尚、ビジネスEXPOのサイトは こちら(31st EXPO) からどうぞ。

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社会保障費の負担はAIで? (2017.09.26)

 昨日、安倍総理は28日の臨時国会冒頭に衆議院を解散すると表明されました。平成31年10月には消費税率を10%に引き上げることが予定されています。その増税分の5分の1を社会保障の充実に使い、残りは国の借金返済に使う予定でしたが、今回の解散は、消費税の使い道を医療・介護に加え幼児教育の無償化など、子育て支援等も厚くする全世代型の社会保障制度へと転換することの是非や、北朝鮮のミサイル・核問題への対応などについて、国民の信を問いたいとのことです。

 税金の話で思い出したのが、「AIへの課税」です。今年春、ビル・ゲイツ氏が「ロボットが人と同じ量の仕事をするようになれば、人と同じレベルでロボットに課税すればいい」と発言されたとか。また、欧州議会では一部の自律的なロボットを権利や義務を伴う「電子人間」と位置づける案が議論され、ロボットを使う企業に社会保障費の節約分に見合う負担を求める話が出ているようです。(いずれも日経新聞2017年9月7日5面より)

 2000年当時、インターネットの普及で「IT革命」と言われていましたが、それから20年足らずで「AI・電子人間」への課税の話へと発展するとは驚きを隠せません。AI時代への意識改革が迫られていることを実感させられました。

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時間外労働の上限規制と無期転換ルールなど (2017.08.31)

 先日、厚生労働省北海道労働局と北海道経済部労働政策局共催による「“働き方改革推進”に向けた説明会」に出席してきました。
 たくさんの説明がありましたが、とくに影響が大きそうな点について、私共の備忘録的意味も含め、記しておきます。

1.時間外労働の上限規制
  月45 時間、年360 時間を上限とする。
 ただし、一時的な業務量の増加がやむを得ない特定の場合の上限については、
  ①年間の時間外労働は月平均60 時間(年720 時間)以内
  ②休日労働を含んで、2ヵ月から6ヵ月の平均は80 時間以内(2ヵ月,3ヵ月,4ヵ月,5ヵ月,6ヵ月の
    いずれの月平均でも80 時間を超えないこと)
  ③休日労働を含んで、単月は100 時間以内とする
  ④月45 時間を超える時間外労働は年半分を超えないこと
 以上を、罰則付きで労働基準法に明記する予定(経団連と連合が3月に合意済み)。

2.無期転換ルール
  無期転換ルールとは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者(契約社員、パート、アルバイトなど名称問わず)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのこと。
 この法律は平成25年4月1日より施行されているため、平成30年4月から転換申し込みが本格化する見通し。
 有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申込み(書面が望ましいが口頭も可)をした場合、使用者(企業)は経営上の事情があっても断ることはできない。
 給与や待遇等の労働条件については、労働協約や就業規則、個々の労働契約で別段のめがない限り、直前の有期労働契約と同一となる。労働条件を変える場合は、別途、就業規則などの改定等が必要。使用者(企業)は、例えば「職務限定正社員」等、多様な正社員制度を整備する必要が出てくる。
 無期転換ルールを避けるため、雇い止めをすることは労働契約法の趣旨に照らし望ましくなく、有期契約の満了前に使用者が更新年限や更新回数の上限などを一方的に設けたとしても、されない場合があるとのこと。

3.改正 育児・介護休業法
  育児・介護を理由に離職することを防ぐとともに、育児休業や介護休業等を利用しやすい職場環境の整備を促進するため、育児・介護休業法が改正され平成29年10月1日から施行されるので、施行日までに就業規則の整備が必要。
 改正内容は次の3点
   ①保育園に入れない場合等の育児休業期間を、子が2歳に達する日までに延長
   ②育児や介護休業が必要となる可能性のある労働者に、関連する制度を個別に周知するこ
    とを事業主に努力義務化(その際、プライバシー保護の観点から、育児や介護が必要な旨
    を労働者が自発的に申し出しやすい職場環境が重要であり、事業主はハラスメント防止措
    置を講じることも必要)
   ③小学校就学前までの子を有する労働者に対し、育児目的休暇(卒園式参加など)をとれる
    制度の新設を事業主に努力義務化(特に男性の育児参加促進のため)

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事業継続計画(BCP) (2017.07.27)

 3日ほど前に、北海道が、苫小牧地区倉庫協会と「災害時における物資の保管等に関する協定」を締結したとのニュースが流れました。これは、これまで大きな地震等があった際に、各地から救援物資が送られるものの、被災地の物流拠点が機能を果たせなくなり、せっかくの救援物資が必要としている人々に届けられない事態が生じたことを教訓にしたとのことです。
 北海道では昨年夏、これまでとは違ったルートで大きな台風が3個直撃し、もう1個も一部をかすめるなど、農作物を中心に甚大な被害を被りました。今年になってからも、福岡や秋田など局地的な集中豪雨による甚大な被害も生じています。こうした異常気象以外にも、地震や新型ウィルス等の感染症、サイバー攻撃、テロといった、事業運営に大きな影響を与える事案は多数考えられます。
 こうしたリスクに対しては損害保険をかけるといった対策がありましたが、2011年の東日本大震災以降、「事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」を作ることが奨励されております。
 これは、事故や災害に遭ってから対策するのではなく、事前にどのような対応を取るかを計画しておくことによって、被害を最小限に留めるとともに、より早い復旧を可能とし、事業が継続できなくなることを予防するという考え方です。
 ところで、帝国データバンクが2017年5月に調査した結果によると、全国10,142社からの有効回答(回答率42.3%)のうち、実際に「事業継続計画(BCP)」を策定済みの企業はわずか14.3%に留まったとのことです。「現在策定中(7.3%)」と「策定を検討中(22.1%)を合わせても半数に満たない状況でした。
 この、BCPを策定していない理由(複数回答)については「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が最も多く(45.1%)、次いで「策定する人材を確保できない」(30.3%)とのことです。また、事業の継続が困難になると想定しているリスクについても、調査結果が業界別に表で整理されていますので、参考になります。詳しくは次のURLからpdfで入手できますので、ご覧いただくことをお勧めします。 https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p160702.html

 更に中小企業庁では、「中小企業BCP策定運用指針」というサイトを開設しており、次のURLで見ることができます。 http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/index.html
 ここには、BCPの策定と運用に関する様々な情報がありますので、それを参考に自社で策定に取り組まれてはいかがでしょうか。
 昨年、私共でも、道内のある管内の商工会を集めた勉強会で、BCP策定研修を担当させていただきましたが、皆、我が事に感じられたようで、自社に持ち帰ってすぐ策定に取り組まれた企業さんがあったと後から知らされ、お役に立てて良かったと感じております。

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なぜ「働き方改革」が必要なのか? (2017.06.15)

 本日の日経新聞に「2025年問題から2050年問題へ」という記事が載りました。そこでは、4月に発表された国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」に触れ、経済社会の担い手である勤労者層の人口減という「人口オーナス」現象の深刻化を指摘した上で、さらに団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、後期高齢者の急増が社会保障・財政赤字などを通じて経済社会に大きな影響を及ぼす(=2025年問題)ことを指摘しております。

 この二つのことが「担い手不足」と「担い手への負担増」として大きな問題となることはほぼ確実と述べた上で、さらに次のように続きます。「話はまだ終わらない。2050年ごろになると団塊世代の子供たち(団塊ジュニア)が後期高齢者になっていくが、この2050年問題のほうが2025年問題よりさらに厳しそうなのだ。
 今回の推計によると、50年の後期高齢者の数は2,417万人であり、25年(2,180万人)よりずっと多い(ピークは54年の2,449万人)。-(中略)- 2025年問題を乗り切れば済むという問題ではない。その先には、さらにさらに厳しい2050年問題が控えているのだ。」と書かれておりました。
 ここでは触れられていませんが、実は上記(ピークは…)の前年の2053年には、わが国の人口は1億人を切る見通しであることも、冒頭の4月発表には示されております。

 先月ご紹介した「働き方の未来2035」では、「技術革新」により、働き方の変革が迫られるという側面が強いものの、実感が伴いにくい傾向が感じられます。しかし、この「人口減少」とくに担い手:勤労者層の減少は、現実の問題として人手不足に直面している企業も多いことから、「働き方改革」や生産性向上の必要性を実感できるはずです。

 こうしてみると、「働き方改革」が必要な理由は、「人口減少(とくに担い手の減少)」と、「技術革新」の2点に集約できると言えます。後者の「技術革新」については、革新しないようにすれば「働き方改革」もしなくて済むということにはなりません。前者の「人口減少」の場合は、今の出生率で推計した場合の見通しなので、出生率を高めることができれば、厳しい状況を緩和することはある程度可能と考えられます。

 ところが問題は、出生率を高めるには、結婚・出産・子育てしやすい環境づくりが欠かせないということです。業績確保のために長時間労働を前提とした働き方を全社的に改めない限り、わが国は益々厳しくなってゆく一方なのです。「全社的に」と書きましたが、むしろ「社会全体で」と言うべきかもしれません。

 というのは、企業内の結婚・出産適齢期にある人達だけが定時退社できたとしても、その人達の分を他の社員の長時間労働で賄うのであれば、定時退社する人達は「肩身が狭い」思いをします。出産・子育て以外にも、後期高齢者を抱えた方々が増えれば、介護のために長時間労働できなかったり、休業せざるを得ない人も増えることは明らかです。

 その状況で、長時間労働で頑張っている社員を基準とした評価制度を適用するようなことがあれば、企業自ら首を絞めるようなものです。そして、特定の企業が長時間労働を解消できたとしても、それが他企業や他産業の犠牲のうえで成り立つようなものであれば、やはり日本全体として人口減に歯止めをかけることは難しいでしょう。

 これで「働き方改革」が必要な理由が明確となりました。出生率を高め「人口減少」を食い止めるために、そして、「技術革新」を取り入れ生産性を高め、担い手不足を補うためにも「働き方改革」が必要なのです。今生まれたとして、「担い手」になるまでには20年かかります。今すぐ皆で取り組むしかありません。

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「トライゴンハニカムチャート」が記事になりました (2017.06.13)

 私事で恐縮ですが、「トライゴンハニカムチャート」の活用事例が記事になりました。これは、もう十年以上前ですが、このチャートを活用しだした当初の頃のお話です。
 新規開業された方の相談に乗り、「事業コンセプト」をまとめるのにこのチャートを使いました。当初の頃の話ですので、多少ぎこちなさは残っていますが、しかし、今見ても、それほどおかしくはない、今でもこのチャートを使う基本的考え方は通用すると確認できた想いがあります。
 ちなみに、この事例は、開業されたご本人の許可を得て、原稿提供したものですが、その方は今も立派に事業を続けておられます。

 記事が掲載されたのは、月刊の経営誌『近代中小企業』6月号(発行:中小企業経営研究会 http://www.datadeta.co.jp/)です。

掲載記事は、下記にてご覧いただけます。
   『近代中小企業』記事

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「働き方の未来2035」 (2017.05.21)

 「働き方改革」については、去る3月28日に働き方改革実現会議においてその実行計画が決定され、本格的に動き出しました。目下、関連法の改正案づくりが進められており、早ければ2019年度からの施行を目指すとのことです。

 ところで最近、「働き方の未来2035」という報告書があることを知りました。これは、厚生労働省が設置した“働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために 懇談会”が、 昨年8月に発表したものですが、遅まきながら、概要をザックリとご紹介します。
 2035年には、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を中心とした大きな技術革新によって、時間や空間や情報共有の制約はゼロとなり、産業構造、就業構造が大転換、個々人の働き方の選択肢はバラエティに富んだ時代となる。工場のように、実際にその作業現場に人がいなければならないような物理的な作業の大半は、2035年までにはロボットがこなすようになっているに違いない。
 産業構造に占めるサービス業の割合が増える一方、ますます人手不足が進み、接客に関しては、低価格での提供を主とする業態においてはロボットや機械が対応し、付加価値の高い業態においては人間が対応する。人間の仕事としては、人々のニーズを捉えるサービス開発・商品開発といったことがメインとなり、それをロボットやAIを使って提供するといった企業形態が多くなるのではないか。
 2035年には、各個人が自分の意思で働く場所と時間を選べる時代、自分のライフスタイルが選べる時代に変化していることこそが重要である。物理的に同じ空間で同時刻に共同作業することが不可欠だった時代は、そこに実際にいる「時間」が働く評価指標の中心であった。だが、時間や空間に縛られない働き方の時代では、「成果」による評価が一段と重要になる。
 変化のスピードが速くなることで、企業自体がそれに対応するために機動的に変化せざるを得ない時代がやってくる。2035年の企業は、極端に言えば、ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となり、多くの人は、プロジェクト期間中はその企業に所属するが、プロジェクトが終了するとともに別の企業に所属するというふうに、柔軟に企業の内外を移動するかたちになっていく。
その時代では、企業が人を抱え込む「正社員」のようなスタイルは変化を迫られ、フルタイムで働いた人だけが正規の働き方という考えが成立しなくなる。と同時に、パートタイマーという分類も意味がなくなる。
 さらに兼業や副業、あるいは「複業」は当たり前のこととなる。多くの人が、複数の仕事をこなし、それによって収入を形成することになるだろう。一つの会社に頼り切る必要もなくなるため、働く側の交渉力を高め、不当な働き方や報酬を押し付けられる可能性は減ることになる。但し、技術革新のスピードが速いことから、専門的な能力は環境の変化に合わせて変化させていく必要があり、「転職」を柔軟に行える社会になっている必要がある。
企業も多様化が進むなかで、企業規模が大きいことのみでは働く人のニーズを満たすことはできず、働く人にどれだけのチャンスや自己実現の場を与えられるかが評価されるようになる。働く個人から選ばれる企業を目指さざるを得なくなるのである。
 2035年には働く人が大幅に減少していることから、人手不足が一段と深刻になるに違いない。そうした中で、AIなど科学技術の発達による自動化・ロボット化によって、介護や子育て、家事などの負担から働く人が解放され、それらが働くことの制約とならない社会になっていることが重要である。

 いかがでしょうか?俄かには信じ難いかもしれませんが、約20年という時間は、これまで以上に大きな変化となる可能性があります。20年前(1997年)、北海道拓殖銀行が破たんし、トヨタはプリウスを発売、ネット業界ではamazonや楽天市場が創業したばかりで、フェイスブックやツイッターはまだありませんでした。
 20年経った今、車は自動運転が試され、金融や買い物、リクルートはネット経由が当たり前、スマートフォンがなければ生活できない時代となっています。昨年は、人工知能「アルファ碁」が、韓国のプロ囲碁棋士イ・セドル9段との5番勝負で4勝1敗し、話題となりました。
 こうした技術革新のスピードはさらに速まることを考えると、上記報告書が描く社会はかなり実現性が高いかもしれません。

「働き方改革の未来2035」は、下記にてダウンロードできます。
    「働き方の未来2035」報告書.pdf

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日経「星新一賞」、経営革新のヒント (2017.04.16)

 今年も、日経「星新一賞」の受賞作品が決まり、発表されました。理系的な発想力に重きを置き、1万字以内の物語を対象にした新しい文学賞で、今回(3月24日公開)で第4回目となります。
 「今、日本に必要なのは圧倒的想像力」であるとし、SFショートショートのスタイルを確立した星新一氏の名を冠し、「理系文学」を土俵に、独創的なアイデアとその先にある面白さを競うために、日本経済新聞社が創設した文学賞です。(日経「星新一賞」公式ウェブサイト等より)
 受賞作品の電子書籍が日経ストアで無料配布されていると知り、昨年、初めて読んでみたのですが、当初、めまいを起こすような感覚に襲われた記憶があります。ここしばらく、小説や文学作品に目を通す余裕もなく、ましてやSF作品は映画でも接する機会は少なくなっていたせいもあるのでしょう。
 ただ今年は、慣れた訳ではないと思うのですが、昨年ほどショックはありませんでした。昨年と審査員が代わったせいもあるのでしょうが、受賞作品の傾向も少し変化したように感じ、今年のほうがわりとすんなり読めた受賞作品が多かったように感じます。理系的発想(SF性)と文学性の要素を考えたとき、昨年のほうがSF性の強い受賞作が多かったのかもしれません。
 この賞は、「一般部門」、「学生部門」、「ジュニア部門」の三つに分かれているのですが、個人的には、学生部門のグランプリに輝いた作品「バベル以後」がとても印象に残りました。また、ジュニア部門で優秀賞だった「百二十キログラムの命」は、物語としての面白さもさることながら、発想のスケールの大きさには正直、度胆を抜かれました。これが中学三年生の作品なわけですから、私たち大人も知恵を絞らねばなりません。

 さて、「中小企業等経営強化法」(前・中小企業新事業活動促進法、元・中小企業経営革新支援法)では、経営革新の要件として「新しい事業活動」に取り組むことが求められており、具体的には以下の取組を指しております。
 ●新商品の開発又は生産
 ●新役務の開発又は提供
 ●商品の新たな生産又は販売の方式の導入
 ●役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動
 これら新たな取組は、「経営革新計画」として都道府県知事の承認を受ければ、「ものづくり補助金」などの応募に対する審査時に一定の加点がされます。
 とはいえ、なかなか新たな取組についてのイメージが湧かないというときに、今回ご紹介した「星新一賞」作品を読むことで、発想のヒントが得られるかもしれません。

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「トライゴンハニカムチャート」によるコンセプトづくり (2017.03.17)

 経営やマーケティングの世界では、ヨコ文字で語られることも多く、「コンセプト」もその一つです。日本語で言えば「概念」ですが、これがわかったようでわかりにくい。ただ、何となく頻繁に使われてもいる用語と言えます。
 しかし、イザ、「〇〇のコンセプトを作りましょう」となると、何をどう考えて作るのが適切なのかは、案外、理論的に確立されていないのではないでしょうか。
 こうした疑問に対し、私なりに一つの方法論を提示させていただきました。昨年(2016年)11月8日に行われた、「平成28年度中小企業経営診断シンポジウム」での論文発表のことです。タイトルは「トライゴンハニカムチャート法による“コンセプトの見える化”とそれを活用した経営革新支援事例」というものです。
 「トライゴンハニカムチャート」というのは、三角形と蜂の巣状の六角形を重ね合わせた形状であることから、私(野崎)が名付けたものです。
 このチャート(形状)との出会いは1981年のことでしたが、当時はチャートの名称も分からないながら、情報を整理するには有効であるとの思いがありました。 
 本格的に経営相談の現場で使い始めたのは2004年からですが、国を挙げて創業支援が活発となった時期です。開業にあたりビジネスプランを作成する際に、事業コンセプトをしっかり固めておきましょうということで用いTH chart.pngました。
 「コンセプト」は、用いられる場面によって「商品(サービス)コンセプト」、「ストアコンセプト」、「事業コンセプト」といったように使い分けられることがあります。
 “コンセプトづくりの方法”について大手広告代理店の方などが書かれた本にも目を通しましたが、「どうも違うな」という印象がありました(商品コンセプト等には有効と思われます)。
 また中小企業診断士の世界では、「コンセプトとは、“誰に何をどのように提供するか”である」との論があり、これはこれでわかり易いのですが、「そのコンセプトは機能するのか?」という部分について今一つ不十分と感じていました。
 思考錯誤を重ねるなかで、トライゴンハニカムチャートをどのように使えば、事業コンセプトづくりに有効か、ある程度理論化できたと考え、先述のシンポジウムで発表したところ、日本経営診断学会会長賞を頂きました。身に余る光栄に浴し、感謝しかありませんが、より多くの皆様にこのチャートの活用がなされればと思う次第です。
 ネーミングやブランド構築への応用など、このチャート(形状)の活用範囲は広いと思うのですが、意外と見かける機会が少ないと感じております。
   (今回の論文をまとめる際に調べた結果、このチャートは、「デザインスゴロク」とか「スクランブル法」といった呼称で用いられている
    ことがわかりました)

シンポジウムでの発表論文は下記にてダウンロードできます。
「トライゴンハニカムチャート法による“コンセプトの見える化”とそれを活用した経営革新支援事例」

尚、日本経営診断学会北海道部会での研究会(2017.03.24)でも紹介させて頂く機会を得ました。↓
日本経営診断学会 北海道部会

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戦略としての「働き方改革」と「組織革新」 (2017.02.28)

 最近、「働き方改革」はブームの様相を呈しているとの報道を見かけます。当トピックスでも関連したものとしてこれまでに、「忍び寄る危機“組織崩壊”」(2015年10月)、「人事・労務管理の再構築」(2016年5月)、「「働き方改革」と企業の対応」(2016年9月)、「同一労働同一賃金ガイドライン案」(2016年12月)といったように取り上げてきており、クローズアップされるのは必至とみておりました。
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 先月、私共が関わった経営者セミナーでも、“今、社長がなすべきこと” というディスカッションにおいて「働き方改革」がテーマとなりました。
 内容は、次のような構図で示され、①働き方で検討される要素、②対価を支払う対象、③具体的な対価の内容、④評価基準などが具体的な検討課題となるのではないかというものでした。
 また先日(2017年2月10日)、日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて- 「産業競争力の強化に関する実行計画」(2017年版)が閣議決定されました。
 その本文の約半分を「新たな有望成長市場の創出、ローカルアベノミクスの深化等」関連で占められており、さらのその約3分の1(7.5頁)は、「(1)第4次産業革命の実現」というものでした。「働き方改革、雇用制度改革」については、わずか2頁強にしかすぎません。

 こうしてみると、企業が数年先を見据え取り組むべき内容は、「働き方改革」はその一部に過ぎず、全社戦略の中にどう位置付けるのか?という問題と考えられます。逆に言えば、一部とは言え「戦略として」取り組むべきとも言えるわけです。
 「第4次産業革命」は、国が目指すか否かに関わらず、時流と言えます。企業としてはこれに沿った戦略構築が求められます。当然、「働き方改革」もこれを踏まえたものとする必要があります。
 ところで「組織(構造)は戦略に従う」(アルフレッド.D.チャンドラー)という言葉があります。一方、「戦略は組織(能力)に従う」(H.イゴール.アンゾフ)という言葉もあります。いずれにせよ、戦略を考える時、組織も考える必要があるということです。
 近年、組織形態やその理論には様々なものがあり、一概に整理するのは難しいのですが、現時点では、次のような整理の仕方ができるのではないかと考えております。今後修正する可能性はありますが、「組織革新」のご参考となれば幸いです。

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関連資料 ↓ のダウンロードができます。
「産業競争力の強化に関する実行計画」(2017年版) (注:A4判45ページ)

※本文中の「組織(構造)」及び「組織(能力)」の部分に関しては、次のblogを参考にさせて
  いただきました。
2013.07.01  組織は戦略に従う。そして、戦略は組織に従う。(青木 孝一 氏)

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同一労働同一賃金ガイドライン案 (2016.12.22)

 去る12月20日、第5回 働き方改革実現会議 が首相官邸で開催され、「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 中間報告」と、これを受けた「同一労働同一賃金ガイドライン案」が公表されました。
 このガイドライン案の前文には、「…同一労働同一賃金は、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者パートタイム労働者派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである。」(中略)「不合理な待遇差の解消に向けては、賃金のみならず、福利厚生、キャリア形成・能力開発などを含めた取組が必要であり、特に、能力開発機会の拡大は、非正規雇用労働者の能力・スキル開発により、生産性の向上と処遇改善につながるため、重要…(以下略)」と、その目的が述べられています。
 これに続いて、「ガイドライン案は、いわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないかを示したものである。(中略)なお、具体例として整理されていない事例については、各社の労使で個別具体の事情に応じて議論していくことが望まれる。(以下略)」と、その趣旨が書かれております。

 次に、有期雇用労働者およびパートタイム労働者の基本給に関し、
  ❶労働者の職業経験・能力に応じて支給しようとする場合
  ❷労働者の業績・成果に応じて支給しようとする場合
  ❸労働者の勤続年数に応じて支給しようとする場合
…のそれぞれについて、<問題とならない例>と<問題となる例>が示されています。
さらに❹昇給について、勤続による職業能力の向上に応じて行おうとする場合…についても書かれております。
 これらはいずれも、応じた部分が同一の場合には、正規か非正規かに関わらず同一の支給・昇給をしなければならないとされております。

 ここで問題となるのは、例えば正規雇用労働者は❶により、また非正規雇用労働者は❷によって支給するというように、適用する基準が異なれば、同一の支給をしないで済むだろうと考えられることです。
 これに関してガイドライン案は、(注)として「…無期雇用フルタイム労働者(正規)と有期雇用労働者又はパートタイム労働者(非正規)の賃金の決定基準・ルールの違いがあるときは、“無期雇用フルタイム労働者と有期雇用労働者又はパートタイム労働者は将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる”という主観的・抽象的説明では足りず、賃金の決定基準・ルールの違いについて、職務内容職務内容・配置の変更範囲その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして不合理なものであってはならない。」と述べております。
 この部分は、労働契約法第20条を根拠としたもののようです。ここで、a)職務内容とは、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度を指し、具体的には、仕事の難易度や担当業務での目標が未達ならペナルティが課されるといった責任の重さなどの違いが勘案されることになると思われます。
 また、b)職務内容・配置の変更範囲とは、転勤・昇進といった人事異動や役割の変化等の有無とその範囲を指し、具体的には、選択したキャリアコースによる転勤の有無や、営業から管理部門などへの配置転換の有無といった人材活用の仕組みの違いが考慮されると思われます。 
 そしてc)その他の事情とは、a)・b)以外の要素としての合理的な労使の慣行などを指し、例えば、無期雇用労働者は勤務地域の限定なし、有期雇用やパート雇用労働者は地域限定ありとか、定年後の再雇用や嘱託者を有期労働契約で雇用しているといった事情が考えられます。
 こうしたa)~c)の実態が、客観的にみて異なる賃金の決定基準・ルールを適用するのに合理性があると説明できるものであればよいということでしょう。

 いずれにせよ、❶~❹での〇〇に応じて…という部分を納得感のあるものとするには、労働者の職業経験・能力、業績・成果などをきちんと把握・評価する仕組みが必要となります。


関連資料↓のダウンロードができます。

・同一労働同一賃金ガイドライン案
・同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 中間報告
・同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 中間報告 参考資料 (注!5.0MB)

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「平成28年度補正ものづくり補助金」の公募開始 (2016.11.14)

 本日、「平成28年度補正 革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」の公募が開始されました。締め切りは平成29年1月17日で、2次公募の予定はないとのことです。
 今回の募集では、特徴的なことがいくつかあります。対象類型として、大きく「ものづくり技術」と「革新的サービス」に分かれているのは従来通りです。しかし、事業類型は「一般型(補助上限額1,000万円)」と「小規模型(補助上限額:今回は500万円)」については従来通りですが、新たに「第四次産業革命型(補助上限額3,000万円)」というのが加わりました。
 これには、「IoT・AI・ロボットを用いた設備投資」が必要で、AIやロボット等の単独の導入ではなく、複数の機械等がネットワーク環境に接続され、そこから収集される各種の情報・データ(ビッグデータ)を活用して、①監視(モニタリング)、②保守(メンテナンスサービス)、③制御(コントロール)、④分析(アナライズ)のうち、いずれか1つ以上を行い、AIやロボットを活用するものが対象となります。

 また、「第四次産業革命型」以外の事業類型においては、補助上限が引き上げられるケースが用意されております。雇用増(維持)をし、5%以上の賃上げをする場合には補助上限を倍増。また、最低賃金引き上げの影響を受ける場合については、補助上限をさらに1.5倍とするといったことです。
 この補助上限額引き上げに関しては、「雇用・賃金拡充への取組み等に関する誓約・計画書」の提出が求められており、賃上げ要件を満たしているか否かの判定方法にも決まりがありますので、詳しくは公募説明会で確認されるようお勧めします。
この補助金の情報については、全国中小企業団体中央会のサイトをご覧ください。
  ↓
全国中央会、補助金サイト

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「シン・ゴジラ」と危機管理 (2016.10.30)

 映画「シン・ゴジラ(総監督・脚本:庵野秀明氏)」が、話題になっております。東宝が12年ぶりに日本で製作し、今年7月29日に公開されました。「君の名は。(新海誠監督)」には及ばないものの、興業収入75億円に届くのではないかと言われているようです。
 それまでの、どちらかと言えば子ども向け怪獣映画「ゴジラ」とは違い、大人の観客が多く、観終えたとき、多くの人が約5年半前の東日本大震災、そして福島第一原子力発電所での危機を想い起こしたのではないでしょうか。CGによる迫真感の評価が高い一方、娯楽作品としての虚構(ある種の「嘘」)を指摘する向きもあるようです。

 昔、誰が言っていたか忘れましたが、「時代劇が好きだ。最近のドラマは面白くない」とテレビで語っていたのを思い出します。理由は、「時代劇では悪徳商人(高利貸し)から借金をして期日までに返せなくなった家の娘などが、悪徳商人から差し向けられた追っ手から逃れるのに、川などに飛び込むシーンがありますが、それを見た追っ手は、「ちぇっ、しょうがねぇ」とか言って諦めて帰る。その区切りの良さ(!?)が良い」のだとか。なるほど、それも分かる気はします。しかし、そこで「思考停止」しているとみる事もできます。これが国家や企業における「危機管理」の場面だった場合、「思考停止」は避けねばならない態度と言えます。
 映画やテレビドラマ、漫画などでは、普通、ありえないようなことを表現できるところに面白さがあるのは事実です。そこには、ある種の「嘘」が含まれていますが、それを承知の上で、皆、楽しんでいるわけです。

 さて、「シン・ゴジラ」ですが、日経ビジネスオンラインで、「「シン・ゴジラ」、私はこう読む」( http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/083000015/ )というキャンペーンを行っています。各界のキーパーソンからの“読み方”が披露されているのですが、これがまた面白く、そして勉強になります。
 その“読み方”は人それぞれなのですが、映画「シン・ゴジラ」に含まれている虚構(ある種の「嘘」)に焦点を当て,解説している方が何人かおります。ノンフィクション作家の山根一眞氏や、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏、元防衛大臣の石破茂氏などです。
 「シン・ゴジラ(虚構)」を通じて「危機管理(現実)」を考えた場合、私達オトナが踏まえておかなければならないことに気付かせてくれる、日経ビジネスオンラインのキャンペーンと言えます。
 10月25日に、電子書籍(日経ビジネス編300円+税)としても発売されました。

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「働き方改革」と企業の対応 (2016.09.27)

 昨日(9月26日)、参議院選挙後初の国会(臨時)が召集され、安倍首相の所信表明演説がありました。その中で、経済対策のキーワードは「未来への投資」とし、誰もがその能力を存分に発揮できる一億総活躍社会を創ること。そしてその鍵は「働き方改革」にあり、意欲ある皆さんに多様なチャンスを生み出す、労働制度の大胆な改革を進めるとされました。各般にわたる労働制度の改革プラン、「働き方改革実行計画」を今年度内にまとめるとのことです。
 これまでにも、長時間労働の是正、同一労働同一賃金、脱時間給、配偶者控除等の見直し、女性や高齢者の活用などが取り沙汰されてきました。その背景には、生産年齢人口の縮小に伴う労働生産性向上の必要性があります。
 9月20日の日経新聞では、「働き方改革、世界も苦闘」との見出しで、フランス、ドイツ、韓国の状況が紹介されていました。「欧州の病人」と呼ばれていたドイツでは、2002年以降、「ハルツ改革」により奇跡の復活を遂げたが、その労働市場改革の原則は「自助努力への転換」であったとのことです。フランスでも、労働者の権利を手厚く保護してきたが、この8月に、企業の解雇規制緩和と労働時間延長を柱とした改正労働法の公布に踏み切ったことが書かれておりました。
 この記事を見るにつけ、「働き方改革」は、企業にとって非常に大きなテーマであると同時に、働いている人にとっても、すべての人が良い境遇になるわけではなく、「痛みを伴う」ことは避けられないということです。
 外国人労働者の受け入れも併せ考えたとき、人手不足だからといって自然に賃金が上がるとは限らず、成果を出せない人はいつまでたっても報われない時代がよりハッキリすることになるでしょう。
 逆に企業の側は、事業継続には生産性向上が必須であることから、労働時間ではなく成果に対して賃金を払う「脱時間給」の方向を強めざるを得ません。
 現状で「働き方改革」をネット検索すると、「テレワーク(ITを活用して、時間や場所にとらわれない働き方)」といったことがヒットしてきます。
 ここでは「ITの活用」がキーワードになりますが、労働集約的でITは馴染まないと思われてきたサービス業等の企業であっても、今と同じ場所で働いてもらう場合でも、これからはITの活用を真剣に考えざるをえないでしょう。また、「成果に対して賃金を払う」ということは、成果を適切に評価する仕組みが必要になります。
 一部の企業は、この「事の重大性」に気づき動き出しているようですが、ほとんどの企業は、国の「働き方改革実行計画」が示された来年度以降、あわてて対応に追われることになるような気がします。
 「働き方改革の必要性」が、既にみてきたように、生産年齢人口の縮小といった構造的な問題であり、また、主要先進国に共通する課題であるからには、これを正しく受け止め、政・労・使がともに覚悟をもった取り組みが必要と思われます。

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「中小企業等経営強化法」と「ローカルベンチマーク」 (2016.08.09)

  平成26年経済センサスによれば、わが国の中小企業数は381万者(うち小規模事業者:325万者)で、2年前より4万者減少しました。平成28年7月1日、中小企業新事業活動促進法の一部改正により「中小企業等経営強化法」が施行されました。
 労働力人口の減少、国際的な競争の活発化等に対応し、中小企業・小規模事業者等(含む中堅企業)が行うべき経営力向上のための取組(顧客データの分析、ITの活用、財務管理の高度化、人材育成等)について、事業所管大臣は「事業分野別指針」を策定。それに基づき中小企業・小規模事業者等が「経営力向上計画」を作成し、計画の認定を受けると、固定資産税の軽減(資本金1億円以下の会社等を対象、3年間半減)や低利融資、債務保証等の特例措置を受けることができます。
 また、この「経営力向上計画」を策定する際には、「ローカルベンチマーク」の活用が勧められています。これは、地域経済の「稼ぐ力」を維持し、高めていくため、ローカル経済圏を担う企業に対する経営判断や経営支援等の参考となる評価指標(ローカルベンチマーク)として国が設置した検討会により策定され、平成28年3月に発表されたものです。
 地域企業の経営診断としての指標・手法をまとめたもので、地域経済・産業の視点と個別企業の経営力評価の視点の2つから構成されています。個別企業の経営力評価に関しては、財務情報と非財務情報を網羅しており、非財務情報としては、①経営者、②事業の強みや課題、③取引先や従業員等の関係者、④内部管理体制、といった4つの視点に着目して、金融機関や中小企業支援機関等が企業との対話を深める「入口」として活用されることが期待されています。
 去る6月下旬に行なわれた中小企業白書の説明会では、経済産業省の方に加え金融庁の方が出席され、「金融機関の健全性の監督に軸足をおくことに変わりはないが、地域企業の維持・成長に金融機関がより積極的な役割を果たすのにローカルベンチマークを活用したい」といった主旨の説明をされていたのが印象的でした。

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予告:ものづくり補助金の2次公募 (2016.07.01)

  本日、中小企業庁より「ものづくり補助金」の2次公募の予告がなされました。
<以下、引用>
  この度、「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」については、その目的に沿って中小企業・小規模事業者の生産性向上等をより強力に推進するため、7月1日に施行される「中小企業等経営強化法」に基づく経営力向上計画に認定された事業者等に対して、本補助金の2次公募の申請時において、原則経営力向上計画の認定を受けた事業者に加点して実施することになりましたので、公募要件の概略についてお知らせします。
具体的には、後日発表する公募要領でご確認ください。
  なお、公募の開始については、7月上旬を予定しておりますが、今回の募集によって採択された全事業の終期は1次募集と同じであり、こうした短い期間においても事業を実施できる者に限ります。
  また、公募の決定についてはあくまで現時点でのものであり、現在、全国中小企業団体中央会と調整中のため今後変更される可能性がありますのでご了承下さい。
<引用、終わり>

 公募要件の概略は、こちら からもダウンロードできます。

 また今後は、全国中小企業団体中央会のWebサイトもご参照ください。

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ものづくり補助金の採択状況推移 (2016.06.22)

  今月上旬に、平成27年度補正「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」の採択結果が発表されました。昨年までは公募が1次・2次というように応募チャンスが複数回ありましたが、今年は1回のみでした。
 全国から24,011件の応募があり、7,729件が採択されたとのことです。このうち、北海道内からの採択は、249件でした。北海道内からの応募が何件あったのかは公表されていないようですので、道内だけの採択率は分りません。
 そこで、どのような傾向があるかについて、次のようなチェックをしてみました。
    ①全国での採択率を算出→ ②全国における北海道分の採択率を算出→ ③全国の
     採択数に対する北海道分の採択数の割合を算出

 その結果をグラフにすると次のようになりました(データ表も添付)。

採択推移グラフ.png
採択率の推移.png

 棒グラフの通り、この3年間応募件数は減少してきています。そんな中、全国における採択率(青色折れ線)は昨年(26年度補正予算による補助金)は43.1%と高かったのですが、今年(27年度補正)は32.2%と厳しく、10.9ポイントも下がっております。
この傾向は、北海道分(赤色折れ線)についても似た状況であることがわかります。
 ところが、全国の採択数に対する北海道分の採択数の割合(緑色の折れ線)を見ると、右肩上がりです。2.8%→3.0%→3.2%と、年々存在感を増していることがわかります。
 偶然発見したことでしたが、道内で企業支援している者としてはうれしい発見でした。

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人事・労務管理の再構築

  最近、人事評価制度や賃金制度の見直しの相談が増えてきました。人口減少に伴い生産年齢人口が縮減し、人手不足が多くの業界で悩みとなっております。
 こうした中、今月26日(木)~27日(金)に開催される伊勢志摩サミットで安倍首相は、わが国の目玉政策として子育て・介護を中心とした「一億総活躍プラン」を打ち出す方針とのことです。
 その「一億総活躍」の焦点の一つに「働き方改革」があり、「同一労働同一賃金」や「長時間労働の是正」が取り沙汰されております。

 安倍首相はこれまで、経済界に社員の賃上げを呼びかけてきました。「同一労働同一賃金」は、4割を占めるという非正規労働者の賃上げが狙いのようですが、一方で、人手不足にもかかわらず「税制上の103万円の壁」や「社会保険上の130万円の壁」のため、勤務日数や労働時間を抑制する非正規労働者が多数存在する現実があります。
 結局そのしわ寄せを、正社員の長時間労働でカバーするといった悪循環に陥っている状況もありそうです。
 関連した動きとしては、定年を延長したりして高齢者を戦力として活用する動きもありますが、この場合に問題となるのも賃金です。

 非正規労働者にせよ高齢者にせよ、働き方を見直す必要があり、加えて生産年齢に属する正社員も含めた賃金制度の再構築が迫られてきました。
 ここでクローズアップするのが人事評価の問題です。人手不足と相まって直面し出した「働き方改革への対応」の一環として、企業は人事評価制度や賃金制度(退職金制度も)の見直しの必要性に気づき出したのだろうと思います。
 解決策の一つとして「生産性の向上」が言われることがこれまでにもありましたが、なかなか思うような成果が上がっているとは言い難い状況でした。しかし、そろそろ、顔色を変えて「生産性の向上」に取り組まねばならない段階にきたとも言えそうです。

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人工知能とIoT

  「人工知能、AI:Artificial Intelligence」という言葉は、1956年にダートマス会議でジョン・マッカーシー(John McCarthy)により命名されたとされています。(wikipediaより) 当時ダートマス大学(米国)の 助教授であったジョン・マッカーシーが数名の学者と共に、自動プログラミングや自然言語処理、ニューラルネットワークなどを研究する場(ダートマス会議)の開催を提案した際に、初めてこの用語が用いられました。

 それから60年後の今年3月、Google社が開発した人工知能「アルファ碁」が、韓国のプロ囲碁棋士イ・セドル9段との5番勝負で4勝1敗し、話題となりました。
 この対局で「アルファ碁」は、プロ棋士から見ると悪い手を繰り出しても勝つことができ、人間の経験や勘に基づく分析とは違う手法で戦略を編み出したとのことです(日経新聞2016年4月10日より)。 そこでは、人間の脳内の情報処理を真似、人工知能が自ら学ぶ「深層学習(ディープラーニング)」がなされているとのこと。

 一方、米国ブルームバーグなどのニュースによれば、マイクロソフト社が開発した人工知能ボット(Tay:ティ)が3月24日に公開され、Twitterデビューを果たしました。ところが、当初はユーザーとのフレンドリーな会話をしていたものの、ユーザーからの人種問題や性差別といった話題を学習し、ついには「ヒトラーは正しかった。私はユダヤ人が大嫌い」といった仰天ツイートを繰り返すようになり、公開から16時間後にマイクロソフトはTayを休止させ、謝罪する事態になったとのことです。

 こうした人工知能の未来については、人類に対する脅威であると懸念する著名人(ホーキング博士、イーロン・マスク氏、ビル・ゲイツ氏など)の言動があるほか、昨年には国連でも問題提起されたようです。
 ともすれば、ヒト型ロボットに組み込まれ深層学習を繰返すことで、やがては人類を支配するようになるのではないかといったSF的な世界の実現をイメージさせられますが、そこまではともかく、身近な例ではインターネットの検索エンジンや通販サイトのおすすめシステム、ソフトバンクのロボット「Pepper」、クルマの自動運転などで既に応用されつつあります。

 これらに関連しそうなものとして、一昨年あたりからにわかに話題になってきたモノのインターネット(IoT:Internet of Things、)が挙げられそうです。
 「Internet of Things」という用語は、イギリスの無線IDタグの専門家でRFID(radio frequency identifier)の世界標準を作成したケビン・アシュトン(Kevin Ashton)氏が1999年に初めて使用した造語とのことです。(wikipediaなどより)

 これからの時代は、これまで以上にインターネットや人工知能との関わりなしで考えることは不可能と思われます。私たちの日常生活はもちろんのこと、働き方が変わり、会社のあり方も変わらざるを得ません。どのように経営革新すべきか、すべての企業に突きつけられている難問と言えそうです。

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情報リテラシーを磨け

 先日(2016.03.13)の日経新聞に、「スマホ世代のPC知らず」との見出しで、「日本の若者のパソコン離れが米国などより進んでいることを示す調査結果もあり、企業にも影響が広がり始めている」との記事が掲載されていました。
 実はこの話題は、毎日新聞が昨年(2015年)10月16日の朝刊(東京)で既に取り上げていたようです。その中で、「内閣府が今年(2015年)2月に発表した「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、スマホを利用している高校生は89%に上る一方、ノートパソコンは30%、デスクトップパソコンは16%に過ぎない。内閣府の別の調査によると、米国の13~17歳のネット利用者のうち、コンピューター活用が98%と携帯電話の64%を上回っている。英国でも12~15歳の92%がパソコンを利用しており、欧米に比べて日本の青少年のパソコン利用率は少ない。 経済協力開発機構(OECD)が今年9月に発表した15歳対象の調査では、欧米では家庭の経済状況と子どもの家庭でのパソコン利用率は差がないところが多いが、日本は経済的に豊かでない家庭では、利用率が下がっている。 学校でのパソコン利用率も調査42カ国のうち、下から2番目。こうした点から、家庭でも学校でもなかなかパソコンを利用できない層がいることが浮き彫りになっている。」とのことでした。

 話を日経新聞記事に戻すと、「NTTデータでは、LINEやツイッターでの短文入力に慣れ親しんだせいか、きちんとした文章でビジネスメールを書けない若手社員が増えてきていることに対応し、今春入社の社員から、入社後の研修で文章力を高める“日本語ドリル”を導入する」と紹介されていました。 
 また、「ビジネスパーソンには、今後もパソコン操作は必須のスキルなのだろうか。オフィスからパソコンを撤廃した経験をもつ企業にも聞いてみた。」とあり、「少なくとも現段階では、企業のオフィスからパソコンを一掃するのは難しそうだ。」とのことです。
 確かに最近の若者は、スマートフォンを駆使する能力には目を見張るものがあります。しかし残念ながら、リテラシーとしては片手落ちのように感じます。ネット検索し情報を素早く入手したり、素早く伝えたりすることはできていますが、正しく伝わっているかとなると、疑問が残ります。
 インターネットが一般に普及し始めたとき、「IT革命」なる言葉がブームとなりました。私どもは、「革命」という表現を使うからには、相当な変化を生み出すことが予想されており、その本質は何だろうか?と考えたことがありました。(これについては、当時匿名で書いたブログがありますので、興味のある方はご参照下さい。→ ブログ )
そしてスマホの普及は、その一翼を担う存在となったとは感じております。

 しかし、毎日新聞の記事も日経新聞の記事も、パソコンの使い方を学ぶ必要があるのでは?との問題提起に留まっているように思います。文脈からは、どうも「コンピューターリテラシー」の必要性を指摘しているニュアンスが強いのですが、「情報リテラシー」を高めることの重要性をもっと強調してほしいと感じました。
 つまり、パソコンの操作方法(コンピューターリテラシー)も大事ですが、パソコンを使って情報をどう活用するのか。情報を分析・評価し洞察したもの(=インテリジェンス)を得る方法(情報リテラシー)をどう磨くかといったことのほうがもっと重要です。そこでは、WORDよりもEXCELを駆使できることが必要となります。
そのためのツールとしては、スマホよりはパソコンのほうが有効(現時点では)と言えます。

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